二月十四日 二月十四日の夜。ふらりと訪ねた屋敷でテリオンは、思いがけず熱烈な歓待を受けていた。両手で力いっぱいにテリオンを抱き締めながら、サイラスは喜色満面に歓喜の声を上げる。
「ああ! 今日という日にキミが訪ねてきてくれるなんて、何て喜ばしい偶然だろう!」
聞けば今日は何とかという聖人の祝日で、家族や友人または恋人など親しい相手への感謝や愛情を、花や菓子に込めて贈り合う日なのだとか。サイラスも生徒を始め方々から親愛の証とやらを貰ったのだろう。部屋の隅に大きさも包装も様々なプレゼントが山と積まれているのが見える。
「それで、私もキミのために用意していた物があるのだが……ふふ、まさか買ったその日に開けることになるとはね」
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