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    金時推しのぐだおと綱の話。
    (金時絆礼装&金時バレンタインの内容を含みます)

     バーなどという小洒落た空間は、研究機関であるカルデアには元々無かった。
     立香のもとに集った英霊のうち、酒を好む者、豪奢な内装にこだわる者が、空きスペースにあれこれ手を加えた末の産物である。完成当初、立香は橙色の間接照明を見て(お、大人の社交場だ……!!)と尻込みしたが、『酒じゃなきゃいいんだろ?』のように丸め込まれ、ホットミルクやオレンジジュースを飲む機会がなんだかんだと重なった。今では気圧されるような心持ちもどこかへ行き、時には誘われずとも自ら顔を出すまでになっていた。

     そうして今日も、立香は何となくバーに立ち寄った。
    (あ、金時がいる。)
     広い背中を見付け、近付いて「隣いい?」と声をかけた。快諾に甘えて左隣に収まり、ジンジャーエールを注文した。
     それから金時に何かの話題を振ろうとして、やめた。元々金時はひとりでウイスキーを傾けていたし、たくさん話して盛り上がるという雰囲気ではないような気がした。隣に座りはしたが、『ただ居るだけ』でも金時はきっと文句を言わないし、怪訝にも思わないし、そのまま居させてくれるだろうと思った。
     ジンジャーエールをちびちび飲み、残り半分ほどになった頃、コトリと音がした。視線だけで音の方を見ると、そこには金時のサングラスが置かれていた。
    (……!?)
     バッと金時の顔を見上げた。
     金時の目元は普段どおりサングラスで隠されていた。
    (……????)
     数秒の混乱のあと、バレンタインに貰ったネックレスが頭にぽんと浮かんだ。
    「……サングラスも予備持ってたんだ!?!?」
    「おう、……な、なんか驚かせちまったか?」
    「あ!いや!ごめん大声出しちゃって!なんかあの……!なんか必要以上に驚いちゃった!うん!」
     金時はぽかんとしていたが、こちらの弁明に一応納得してくれた。
     それから金時は、ちょっと照れくさそうに口を尖らせ、人差し指で頬を掻いた。
     曰く、親愛の証として、サングラスも立香にくれるそうだ。
     諸手をあげて喜び、早速装備した。
    「似合う!?」
    「超似合ってんぜ!」
     さすがは大将、と金時は満面の笑みでサムズアップした。
     そこからは少し前までの静かなひとときが嘘のように会話が弾んだ。たくさん笑って体温が上がった。解散して自室に戻ったあとも、頬がぽかぽかと暖かかった。
     寝支度を済ませて照明を落とし、ベッドに入って目を閉じてから、
    (そういえば、金時の目、ついに見れると思ったけど、違ったなあ。)
     ということを思い出した。
    (……そっか。俺、金時の目が見てみたかったんだ。)


     ○

    『もしも、だ。
     助けが要るなら云ってくれ。』

     総身が震える感覚を、立香は今でも思い出せる。
     窮地と見るや、ためらいなく助けに入ってくれたこと。
     まだ名乗りもしていない立香と段蔵を庇い、彼の兄分である綱と対峙してくれたこと。
     あとシンプルに顔がよかったこと。
    (いやほんとバチクソかっこよかった……。)
     なんといってもあのタイミングで初めて碧眼を見たというのが大きい。ずっと見たかった色が目の前にあった。返す返すもバチクソにかっこよかった。一周回って憎らしい。これだから顔のいい男は。

     そんなこんなで平安京を駆け抜け、立香は無事にカルデアに戻った。その後、特異点での記録をもとに、当時の金時の装束を再現した霊衣を作ってもらった。
     カルデアの金時の目もここでようやく拝めたわけだが、金時は指摘されて初めてそのことに気付いて「マジか」と素で驚いていた。立香は思わず金時の剥き出しの脇腹を小突いた。小突いたが鎧のような筋肉に弾き返されてあやうく突き指になるところだった。

     同じ頃、立香は渡辺綱の召喚に成功した。立香と金時は召喚サークルの前で揃ってガッツポーズをしてハイタッチをしてピシガシグッグッした。
     新しいサーヴァントを迎えた時、立香は基本的に『立香の部屋』を実施している。自室に招いたサーヴァントとお茶をしつつ、好きな物や嫌いな物、既にカルデアに居る他の英霊への所感などを聞き、親睦を深める企画だ。
     慣例が無くとも、立香は綱にいろいろ質問をしたかった。綱は始めのうちこそかしこまっていたが、少しずつ打ち解けて、他愛ない会話ができるまでになった。

     そして今、立香と綱はバーに居る。
     立香は梅酒のソーダ割を頼んだ。綱は熱燗を頼んだ。
     グラスの中身があと少しになった頃、立香は口を開いた。
    「……俺さあ。綱さんのことが、ちょっと羨ましかったんだ。」
     照れたように笑う立香を見て、綱は「うん」と頷き、静かに先を促した。
    「……金時の兄貴分で、肩並べて戦って、……喧嘩の時も本気でぶつかり合って、……そういうの、いいなぁ~って思った。」
     聞き終えた綱は、素焼きの猪口のふちを指で撫でた。
    「……主は既に承知していることと思うが、……俺も、主のことが、少し羨ましかった。」
     立香はなお照れて「うん……」とうつむいた。
    「……特異点での記録を見た。貴方はまぎれもなく金時の相棒だった。カルデアでも、貴方と金時は固い絆を築いていた。」
     立香と綱は顔を見合わせた。
     立香は「へへ……」と笑い、綱もほほえんだ。
    「……綱さん。改めて、これからもよろしくね。同担として……一緒に金時を推していこうね……!」
    「……。……どう、たん?」
    「あっ!ごめん、同担っていうのはえ~~っと、あっ、あれ!『キャーエリチャーン!』のやつ!エリちゃんを推してる人たちがエリちゃんの「同担」ってことになって……」
    「ふむ。つまり、俺と主は『キャーキンチャーン』の同志……同担。ということか。」
    「ふふっ……うん、そう。ペンライトとか作ろっか?」
    「Tシャツも一興だな。」

    「……兄ィ、大将ォ、さっきから何の話してんだ……??」
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