鈍痛「あれ、零くん首元どうしたの?」
明るい髪色の相棒が、自分の首の付け根を指さして言う。それがワイシャツの襟からはみ出ているのに気付いた零は、慌てて襟元を隠した。
「猫にでも引っ掻かれた?」
「まぁ……そんなとこかの」
仰々しいくらいに貼られたガーゼ。目を凝らすとほんのり朱が見える。
「痛そう」
顔を顰める相棒を横目に、零はどうしたものかと首を傾げた。
それが付けられたのは昨夜のことだった。情事中、抱きしめていた愛し子がガブリと首筋に喰らいついた。突き刺さる牙の鋭い痛みに、思わず顔を歪めると、その子は顔色を一瞬で青くして、すぐさま口を離した。
「ご、ごめんっ…」
「大丈夫……」
自分の血の匂いが鼻をつく。思わずえづきそうになるが、何とかこらえて、よしよしと頭を撫でた。
777