ロスジェネの大晦日大晦日。アーネスト・ヘミングウェイは帝国図書館で過ごすことにした。図書館の文豪は三十二人しかいないがこれは帝国図書館が対侵蝕者の前線基地として動き出して転生が確認された文豪より少し少ないぐらいだそうだ。北原白秋曰く、よっぽどの緊急事態ではない限り対応は出来るのだよとのことだが。
「……真冬のキャンプ地で過ごしたかったのだが」
「そんな寂しいことってあるかよ! それにキャンプするとテントが燃えねえか?」
年越しそばをすする。吉川英治が作った蕎麦だ。ヘミングウェイの部屋ではフィッツジェラルドも蕎麦を食べている。ヘミングウェイとしては一人キャンプに出掛けて真冬のキャンプ地にテントを張ってのんびりとしたかったのだが、フィッツジェラルドが今度でもできるから図書館で過ごそうぜと言ってきた。
ヘミングウェイのベッドの上では白くて大きな猫、グーパオがくつろいで寝ている。
テントが燃えるについてはヘミングウェイが転生して少し経った頃、フィッツジェラルドと新美南吉とキャンプに行ったときに遭遇したことだ。
隣のテントが燃えて、中にいた男が大やけどを負った。
「燃やさないようにする。……日本の大晦日にも慣れてしまったな」
蕎麦は美味い。
「除夜の鐘を突きに行ってはつもーでにいったらギャツビーのところに行かねえとな。今からでもいいか」
「過保護だな」
「そうか?」
フィッツジェラルドとヘミングウェイだと外見だけで判断をすればヘミングウェイの方が上に見えるが、フィッツジェラルドの方が年上だ。
「お前ぐらいだからな。自身の著作に平和的に潜れるのは」
「なんかそうだしな」
コナン・ドイルの場合は作者の方が著作物がそう好きではないのだ。
「羽目を外しすぎるなよ」
「解ってるって。今年も世話になったよな。みんなに来年も世話になりそうだ」
「あまり手間を掛けさせすぎるな」
エビのてんぷらをヘミングウェイはフォークで突き刺して食べる。来年は箸の使い方でも覚えてみようかとなる。フィッツジェラルドもそうだがとしこしそばをかれらはフォークで食べていた。