休日の過ごし方帝国図書館が敷地内にある建物でブックカフェを始めて一年以上が経過したが幸いなことに人気があり黒字でいけている。
「こういうの。人気あるよね」
「好きな人は好きだね」
今日は帝国図書館の休館日だ。里見弴は兄である有島武郎と中の掃除をしていた。休館日ということはブックカフェも休みなのである。
有島と弴は掃除さえ終われば後は自由と言われていた。一日丸ごとオフではないのだが、ありしまも弴も構わないようだ。
人数が増えた帝国図書館は比較的休みらしきものが増えている。
掃除を終えて、道具を片付けてから、弴が手に取っていたのは大正時代を髣髴とさせるアンティークのステンドグラスだ。
「川端さんが買っておいて置いたものを飾ることにしたけど」
「あの人もそうだけど、十二分な広さがあったらいつまでもいつまでも物を買ってしまうってのは」
「そういうの。夢じゃない? 自分の好きなものにいっぱい囲まれるの」
「そうなんだけど。整頓がね」
「今だとレトロっていうみたい」
大正時代のガラスを組み込んで再生した長方形の、百合の花が中心にはめこまれたガラスは川端康成が購入したものだ。
レトロ。
古風という意味だろうが。
「僕にとっては今みたいなところはあるね」
「武郎兄だとね。そうなっちゃう」
有島は大正時代に生きていた。昭和に切り替わる前に自らの命を絶ったが、レトロと言われても、彼の生きていた時代はトレンドだったのだ。
川端は購入をして倉庫に入れておいたのだが……手続きをすればレンタルスペースは借りられる限度はあるが……整頓をしないと、と徳田秋声に言われていくつか飾ったりすることにした。
「ブックカフェの雰囲気も、レトロにしているみたいだけれども」
「人気があるんだって。こういうの、一周回ってかっこいい! ってなるんだって」
ブームが巡るということだろうかとなる。
それはある。
ステンドグラスを磨いてから置いて、有島と弴はブックカフェのから出て、しっかりと扉を施錠した。
外は初夏の日差しに照らされている。
「これからどうしようか」
「出かけようよ!」
「行きたいところは」
「貴君たち!! 志賀と太宰が卓球対決をするんだが見に来ないか!」
出かけようかと有島兄弟が相談をしていると声をかけてくるものがいた。内田百閒だ。
有島と弴はしばらく動かず、
「卓球?」
「なんで?」
「二人が言い争いをしていて太宰が対決を持ち込み、じゃ、カレー対決するか作る方と志賀が言ったので太宰が拒否してなぜか卓球に」
「志賀さん。カレーを持ち込もうとして」
「止められちゃうよ」
志賀と太宰は仲が悪い。というより、太宰が一方的に絡んでくるところはある。言い争いになって勝負になったらカレーを持ってくる
小説の神様は有島としてもどうかとは感じるが志賀はカレーが大好きである。作るほうがだ。
「文学で対決しないのが謎だが」
「レギュレーションが困るからかもしれない」
「確かに」
有島は真顔だった。卓球は一定のルールがあるが文学対決となるとまずルールを作ることから始まるし、太宰が文句を言いそうだ。
「みにいくかい?」
「見てみようかな」
「面白くなりそうだろう。観客は増やしたほうがいいと誘いをかけているのさ!」
賑やかなのがいいとしたらしい。有島は百閒から対決場所を聞いた。
「見に行ってから、出かけよう」
「面白そうだし、いいよ」
休日だろうが、帝国図書館は騒がしい。
彼等はまず卓球対決を見に行くことにした。