横顔(悠七)虎杖の記憶の中の七海は、横顔が多い。
前を向き話している七海の横で、虎杖は七海の方へ向きながらその話を聞くのだ。
彼の話は何時だって、自分を生き残らせるために必要な事だった。
呪術の事、社会の事、人間関係の事、生活の事…。
きっと、彼は限られた時間の中で精いっぱい虎杖に少しでもその生が続くようにと、自分の持てる生きる為に必要な知識・技術を伝えようとしてくれた。
そしてそれらは確かに自分の中に根付き、今日まで何とか生き延びている。
けれど、何よりも…。
限られた時間で、前を向いて進まなければならない時でさえも、途切れることなく与えられた知識や技術ではなく、今でも虎杖が生きて、生き延びて、生きながらえようとさせるのは。
ふと、まっすぐ前に向けられていた視線が、虎杖に向けられたとき。
まっすぐ彼を見つめる自分の視線と、自分を見る彼の視線が交わった時。
ほんの少し。
ほんの少しだけ、ふっと優しく緩められる表情が。
その表情が。
自分は、生きていても良いのだと。
生きていることを望まれているのだと。
彼からの、愛が。
今でも。
虎杖の足を止めさせないでいてくれるのだ----。