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    もつ煮のアンチョビ

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    簡単に言うと片想いを拗らせた🎈が🌟似の女の子が出てくるゲームに手を出すアホみてぇな類司🎈🌟の序章です

    僕がとち狂った話 最近出会ったその子は運命の人、だったんだと思う。小説や漫画で見るような雷に打たれるような衝撃や取り乱してしまうような特別な魅力は感じなかったけれど、今思えばあれは確かに初恋と言っていいだろう。だってあんなに強く欲しいと思ったのだから。目の前で光る研磨されかけの宝石のような星に確かに心を奪われたのだから。彼がどう思っているかは知らないけれど僕の中では運命の人と言うに相応しかった。
    天馬司、天馬くん、司くん。司。可愛い可愛い隣のクラスの学級委員。僕たちの座長。僕の演出に全力で応えてくれた初めての人。僕だけの一等星。金にピンクのグラデーションの髪の毛にシトリンのような輝く瞳、明るく僕を照らしてくれる全力の笑顔、自由に動いて僕の要望に応えてくれる長い手足に健康的な白い肌。誰もを魅了してしまう優しい性格に時には厳しくしてくれる母のような温かさ。彼を構成する全てがあまりにも眩しくて、愛おしくて、可愛くて、遠かった。……そう、遠い、のだ。僕は彼が確かに好きだったし運命だと思ったし相棒としていつでも傍に控えている。友人としても、距離はかなり近いだろう。それでも、遠かった。彼に触れたかった。触れて欲しかった。その温かさを僕に分けるように手を握って、強く強く抱き合って誰にも見つからないように密に溶け合いたかった。詰まるところ、僕は司くんと今以上の関係になりたかった。今の親友以上恋人未満な関係性でもいい。でもそれ以上を、僕は求めていた。だってそんなの中途半端じゃないか。親友以上なのに恋人未満なんて。だから、僕はこの関係にハッキリとした名前が欲しいのだ。そして、この醜い恋心を枯れさせるか開花させるかしたかったのだ。そう考えたら、僕のこの考えは随分と歪んではいないか?もし、ただの友達になってしまったら?そんなの考えられない。つまり僕には恋人になるという選択肢しかなかったわけだ。まあその“もし”が来たとして、僕が諦めきれるかと言ったら全然そんなことはなかった。むしろ諦められない。否定されたらされたでそんなの悲しいじゃないか。許容してくれるまで詰めるだけだ。……我ながら、随分と我儘な。まあこうしたのも司くんだし、許してくれるよね?
     と、まあ僕の思いを吐き出したわけだけれど。こうなってしまったのもちゃんと理由がある。理由というのも、単純なものだが。
    僕は少し調べたいことがあってその日はパソコンを使っていた。そこで見つけてしまった、ある、所謂アダルトサイト。広告で見ただけであったがもう高校を卒業して二十歳を超えた身として興味くらいはあった。どんな風に人を惹きつけるのだろうか、どんな風な内容でどんな演出が?そんなところだ。それで、その、カチッとクリックしてしまったわけで。興味本位だしインストールする気はなかった。幸いにも詐欺広告ではなかったので安心したが。いつもならば危ないのでそんなことはしないが狂っていたのだ。多分。三徹明けで僕だって多少狂いもする。そこからは簡単だ。

    「ふぅん」

    サイトを見て、金髪ショートカットで豊満な女の子を見つけた。その子はどことなく司くんに似ていて。まあ、可愛いんじゃないかい?彼にはもちろん劣るけど。エッチなシーンからグロテスクなシーン、結婚ルートからヤンデレルートまで豊富に取り揃えてあり多種多様なニーズに対応しているらしい。聞くところによると全年齢の彼女たちのゲームもあると。僕たちも多様なニーズに合わせたショーをやっていきたいものだけれどここでそれを思うのは今思うとちょっとありえないかなと思う。
    で、今に至るわけだけれど。同じ学部でたまたま同じ授業をとっていたたまたま話したことのあった陰山くん。確か、彼はそういう話に強かった気がする。授業の前に友人と思わしき人とそういう、所謂オタクトーク?と言うやつをやっていた気がする。その子に相談してみようと思う。

    「ごめんね、陰山くん?」
    「……!? はぃ……そうですけど」
    「ひとつ聞きたいことがあってね」
    うん、上手く声をかけられた。陰山くんは……なんだか緊張しているけれど。対人があまり得意ではない────外面だけは立派だが────僕にしては上出来だろう。僕の中の司くんもそうだな類と肯定してくれている。

    「このゲームについてなんだけれどね、少々教えて欲しいところがあって」
    「か、神代、くんはゲームとかするんだな」
    「……少し、情報収集というか?」
    「ああショーをやってるんだっけ」
    「そう、ショーの参考にしようと、思って……」

    我ながら苦しい。出したゲーム画面は全年齢のものだが苦しい言い分だ。確かにショーには沢山の要素が必要になってくるけれどゲームがその中に入ってくるかと言われればどうなんだろうという感じだしいやでもゲーム独特の空気感をショーに取り入れることで新しい風が吹くかもしれない。学園モノではあるけれど将来学園モノをしないとは限らないだろう。そう、これは単なる勉強で……。

    「何を僕は言い訳をしているんだ……」
    「?」
    「いいや?なんでも」
    「そ、そう……神代くんのことだからサイトは見たんだろう?ざっくり言うとこれは恋愛シミュレーションゲームだよ。えっと交流をして女の子と絆を上げていって最終的に結婚できればグッドエンドかな」
    「この子が気になっているのだけれど、この子はどんな子なんだい?恥ずかしながら僕は恋愛経験がなくて。身の回りの女性も母とショー仲間と幼馴染くらいでね。」

    照れたように笑ってみせると陰山くんは驚いたように目を見開き、神代くんはそういうの慣れているのかと思った、と言った。慣れていたらどれだけ良かったか。慣れていたら多分司くんへのこの爛れた感情にもすぐに気づけたと思うし想いをどう伝えればいいか演出家然と考えられていたと思う。司くん似の女の子が出るゲームなんてインストールしなかったはずだ。それだけ僕の中の感情は拗れていた。

    「えっ、と、その子は天ちゃんって言って快活でいい子だよ。司馬天って言うんだ。攻略難易度は、高いかな。優しいんだけどね、とても鈍感な上にそういうことに疎くて。」

    なんということだろう、司くんじゃないか。僕がどれだけアピールしても気づかない司くん。女の子からラブレターを貰ってもファンレターだと思ってかっこいいポーズをキメ始める司くん。これに関しては好都合ではあるけれど。とっても可愛くて酷いほどに優しくて、そういう下心には鈍感な司くん。いや司馬天は天馬司ではないのだけれど。あくまでそういう感じがするね、というだけだ。彼女を僕の司くんとしてみるつもりは無いけれどどうしても似てる性格の、ほぼ四捨五入すれば司くんの人間を見たらその子を通して司くんを見てしまう。我ながらあまりにも人として最悪だ。陰山くんも僕のこの気持ちを知ったら引いてしまうだろうし、司くんも自分の演出家がこんな不健全な気持ちで女の子と向き合っていると知ったらどうしようもない気持ちになるだろう。司くんは健全な気持ちで向き合うことを望むだろう。それがリアルじゃなく空想上でも、だ。じゃあ逆に健全な気持ちって何?どういう気持ちでいれば僕は司くんに許されるのか。司くんに褒められた頭で考えても答えは出ないままだ。

    「……ありがとう、ごめんねいきなり話しかけてしまって」

    もやもやとした思考をそのままに、陰山くんに笑いかける。どうやら陰山くんは僕の異変には気づいていないようだ。そりゃあそうだ。今までいち早く気づいてくれていた寧々や瑞希とは僕といる年数が違う。そう思うと短期間でショーを通して僕の悩みや心に気づいてくれた司くんは贔屓目抜きに特別なのかもしれない。人を笑顔にするために生まれてきたのかもしれない。人を笑顔にする、天才。人のもやもやに気づいて、それを払うために、司くんは天馬司として生まれたのかも。

    「いやっいいよ、話せて嬉しかった。じゃあショー頑張ってね。」

    そう言うと陰山君はそそくさとその場を離れてしまった。……やはり悪いことをしてしまっただろうか。普段の陰山君はとてもお世辞にもあまり仲の良くない人間と話すことが得意そうな人間ではない。今でこそ取り繕ってはいたけれど内心はドキドキだろう。まして、僕みたいな大学内でもあまり意味ではなくちょっとした有名人の僕に話しかけられるなんて。
    うーん、やはりこの話をしだすと気分は下がるな。高校と場所も人も変わったとはいえ、司くんやえむくんのように僕を手放しで受け入れてくれる人は少ない。陰山くんも、まあ他の人とは変わりなくそうなのだろう。
    丁度講義が終わった直後に話しかけたのでもう人はまばらだ。僕もこの後の講義はないし今日は練習もないし、貴重な話も聞けたので家に帰って実践しようではないか。
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