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    LD_ZAB

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    初対面のはなし、イグアス編をサルベージ。

    #AC6
    #イグ6
    Iguazu/621
    ##えし6

    ファースト・コンタクト[イグアスの事例] 最悪だ。いや、生きてる以上、最悪ではないんだろうが。ミシガンのクソから反射的に脱出レバーを引くことを叩き込まれていなきゃ今頃ヴォルタと同じとこに辿り着いていた。
     アーキバスと合同でアイスワームをぶっ殺す作戦はまあいい。だが何故土着のRaDとかいうイカれた技術者集団が一枚噛んでいやがる。そのお陰かあの野良犬までアサインされやがった。野良犬――レイヴンは今、このルビコンでその名を轟かす独立傭兵だ。
     結果はどうだ。俺は真っ先に離脱し、最後まで戦場に残ったのはRaDの玩具と野良犬だけだ。企業の面目なんざどうだっていいが、正直アーキバスの野郎も潰れてくれて助かった。クズ共に舐められる機会が少し減る。五花海には「ああ、君は一番ヘイト買いそうですから」なんて笑われた。ふざけるなよ。
     思わずため息を付いた。
     むしゃくしゃする。せめてここがベイラムの格納庫じゃなきゃ、周囲のクソどもに薄笑いを浮かべられずに済んだのに。デブリーフィング前に妙な空き時間があるのも最悪だ。気分が悪い。心なしか耳鳴りがする。何もなければとっくに自室に引き上げるというのに。
     所属の拠点にも関わらず居心地が悪くなり、休憩スペースに移動する。どうやらここはアーキバスからの人間が陣取っているのか、うちの連中はいなかった。こっちのほうがまだマシだ。

    「イグアス!なんか飲むか?」
    「あー……、水」

     俺を呼び止めた奴こそが今回の作戦で狙撃を全命中させた男、V.Ⅳラスティ。アーキバス所属のACパイロットである。了解、と軽く答え自販機で水を買って渡してきた。
     いかにも良い奴ですという顔をした、ムカつく野郎だが腕は確かだった。俺がクソ虫の近くにいたせいか余計に、こいつのとんでもねえ狙撃能力には驚くしかなかった。側にいても読み切れない兵器の動きを、遠距離からドンピシャで撃ち抜いて見せたのだ。

    「お疲れさん」
    「てめぇこそ、一番の大役じゃねえか」
    「私は出撃していないからな。命の危険がないだけ気楽なものだ」

     ラスティは爽やかに笑った。俺は水を口に含んで誤魔化す。立ち去るのをためらい、なんとなくその場に立ち尽くしてしまう。ラスティとは以前に会ったことがあるが、それ以外の人間はほとんど知らない。部屋の隅で腕を組んで座っている眼鏡の男──あれが散々コケにしてきたスネイルであろうことだけは分かるが。
     それにしても、こいつの後ろのベンチに座っているのは誰だ? 肩までの黒髪、白い肌に浮かぶぼんやりとした目が印象的だった。手にはうちで一番人気のない、とんでもなく甘いホットココアを持ち、口をつける様子はなく手持ち無沙汰な様子でモッズコートの袖で缶を包んでいる。

    「……甘いだろ、それ。飲めないんじゃねぇの」

     頷く。俺はどうかしちまったらしい。溜息をついてそいつの手からぬるくなった劇物を奪い、一息で飲み干す。

    「コーヒーか水にしとけ。水でいいか」

     またもや首を縦に振る。ラスティがそうだったのか、と謝ってるのを見るに彼のセレクトだったらしい。
     それにしたってさっきのココアは死ぬほど甘かった。この砂糖水を作ったやつは頭がおかしいに違いない。底の方で泥のようになっていた。口直しに自分のものをがぶ飲みしながら自販機のボタンを押す。よく冷えた水のボトルを持ってようやく、ラスティがココアを選んだ意味を察した。

    「……寒いのに悪いな」
    「あ……がと」

     かすれた声で申し訳なさそうにそう言った。心なしか微笑んでいるようにも見える。胸がきゅっとなる。何なんださっきから。変な感覚だ。
     押し黙った俺にラスティはあいつ声出ないらしいと耳打ちした。たしかに首にはよくわからない機器が取り付けられていた。気が付かなかったが、なんのフォローだ。
     別に返事がないことに苛立ったわけでも、俺がわざわざ気を使ったわけではない。

    「うちの補給担当がアホなだけだ」
    「いいのか?うちアーキバスの前で自社ベイラムをこき下ろして」
    「渉外は俺の担当じゃねぇ」

     ラスティから顔を背けて黒髪のやつを盗み見る。水をちびちびと傾けている様子は、同じくらい背の低いオールバニーの仕草なんかとはかけ離れていた。観察していると目が合う。流石に不自然すぎるだろ。観念して名乗るしかないらしい。自然と背筋が伸びた。

    「……俺はイグアス。レッドガン所属だ」
    「……れい、ヴ……」
    ん?
    「イグアス先輩!……G13もいたのか」
     部屋に入ってきたレッドがいつものように声を張る。G、13?つられて視線の先を追ってしまった。追ってしまったんだ。
    「イグアス、固まってどうした?ああ、もしかして、知らなかったのか」
    「そろそろ行きますよ。デブリーフィングの時間です」
    スネイルが顎をしゃくって出口を指す。視線にはもちろん、独立傭兵レイヴンも含んでいた。
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