眠れないのはいつもの事だが 流石に三徹目はキツくなってきた
これはもう大将に頼るしかなさそうだ
シーザーはああ見えて宵っ張りだから まだ起きているだろう
コンコン
「開いてるぜ」
「すまない大将 手ェ空いてるか」
俺とシーザーにだけ通じる合図だ
「何日目だよ 徹夜」
「今回は3日 ちゃんと倒れる前に来ただろ」
「ほら 隣り来いよ」
「…いつも悪いな」
「チャンピオンの身体の方が大事だからな
外した方がいいか?」
「あったかいほうがいい」
ソファーの右端に寄ったシーザーが
真ん中に座った俺に左手を差し出す
大将の左手
パイセンが着けるはずだった左手
あのひとと同じ左手
「パイセン…」
手の甲に口づけて 掌に頬をすり寄せている間に
いつの間にか眠りに落ちる
「やっと寝たか」
「シーザー書類のチェックは…ってまたですの」
「悪いなルーシー 今動けねえ」
「戻ってこない男にいつまでもウジウジと 結構女々しいんですのね」
「そう言ってやるなよ 俺様は役得だと思ってるんだぜ」
ライトを膝枕して 髪を撫でるシーザーは
教会で見た聖母のようだなんて
わたくしも焼きが回ったものですわ
胸がちくりと痛むのは気のせい、そうよ気のせいに決まってる