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    samey_k

    主に韓国作品でぽろぽろ書いた物の置き場。左右と関係性はゆるめ。
    @samey_kが本アカ。韓国作品についての独り言は@sameinthenight

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    samey_k

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    「DP」。上官組ジソプボムグ。S2のどこか。ただなんとなくお互いがひっかかってる同士。

    主導権 廊下。しかも閉じた扉の前で長く立ち尽くしたくはない。イム・ジソプは腕組みをした指先をいらいらと動かした。
     こちらは上官で相手は部下だ。ただし、昨夜醜態を晒した後。だがだからこそきつく口止めしておかなければなはない。そして、口止めよりむしろ礼を言わななければならない。
     問題は晒した醜態の中身を覚えていないことだ。正確には記憶はあるが、思い出したくない。酒宴が終わり上官達を送り出し、パク・ボムグと2人夜道に取り残された後。
     不愉快な記憶を辿りそうになり慌ててイム・ジソプは顔を上げた。立ったままの廊下の奥から人の気配にままよとドアノブに手を伸ばす。
     乱暴に開け放たれたドアに、在室中の2人から同時に視線が飛んでくる。2人分の視線を浴び、ジソプはかろうじて横柄な上官の仮面を繕った。
    「忠誠」と立ちかけたホ・ギヨンを片手で遮り着席させる。用があるのは視線を投げかけたきり動きもしない正面に座る男の方だ。
     ただならぬ空気で登場したジソプにボムグは臆する気配などない。この肝の据わった男なら当然だが、後ろ暗いところのあるジソプにはその態度が煩わしい。
    「何か?」
    「いや……」
    「報告書なら先ほど提出しましたが」
    「受け取りました」
    「……不備でも?」
     使いを担ったホ・ギヨンが背中を強張らせるのが視界の端に見えた。一日の短くはない時間をこの部屋で過ごしている男だ。冴えない風情だが出来の良さは知っている。そんな男の前で迂闊なことは言いたくないが人払いをするのも癪だった。だが。
    「その件ではなく」
     咳払いに失敗した喉からはくぐもった変な音が出た。取り繕った仮面はもはやないも同じだった。ボムグの何事もなかったかのような態度にここにきたのは失策だったかと冷や汗が出そうだった。そのジソプを見やったボムグがふう、と息を吐く。
    「ギヨン。煙草買って来い」
    「はい」
     ボムグの指示にギヨンはするりと立ち上がった。すれ違いざまに意味ありげな視線を感じたが、意地で振り向かない。何も知らないはずだがギヨンが心得顔なのがますます癪に障る。
     優秀な部下は言われずともジソプが開け放したドアを丁寧に閉めて行った。慣れている。
    「それで?」
     部下がいなくなり2人になるとボムグの態度は少し雑になる。背もたれにゆったりともたれ、引き出しから出した新しい煙草のパッケージを慣れた手付きで開いた。
    「昨夜の」
    「ああ、」
     すぐに思い至ったのだろう。ハッと笑ってトントンとパッケージを叩いた。指先で一本摘み出す様子は少し警戒を解いたように見える。ジソプが持ち込んだ話が厄介ごとではないと理解したのだろう。
    「その、」
    「気にしてませんよ」
     ろくにこちらを見もせずに火をつけて深く吸った。
    「酒宴で上官の世話を焼くのはこっちの仕事の一つです」
     口調こそ丁寧だが、盛大に紫煙を吐きながら上官に言う台詞ではない。2人だけになってからのどこか横柄な態度もジソプへの優越感の現れに思える。なかったことにしてあげますよ、大尉殿。
    「大尉のかわいらしいところが見れたので、昨夜は役得でしたね。今日もこうしてお見えになるとは」
    「……僕はあなたの意外な姿に驚きました」
     かつて都合の悪いことを暴露されないよう下士官にも気を遣えと脅した男だ。嫌味のつもりで言ったであろう台詞に返されたジソプの言葉にボムグは素で驚いたようだ。何かを言いかけて口を開け、閉じて、また開いて閉じた。そりゃ酔っ払い相手に、などと口ごもる。ジソプの言動に動揺するボムグは珍しい。実はうっかり本心を口を滑らせ、ボムグ以上に動揺していたジソプだが、巡ってきたチャンスに何か報いたかった。
    「優しいんですね」
    「おれをヒョンとでも呼びたいんですか? 相手を間違えてますよ」
     嫌味に聞こえたらよかったのに、自分の声は持ち主の意図を裏切ってただ素直な言葉になった。
    既に体制を立て直したらしいボムグは「用が済んだらお引き取りください」とそしらぬ顔で煙草を揉み消す。ジソプの追撃は意味を成さずあっけなく迎撃されたが、点けたばかりの煙草を消すなんて多少動揺してるのかもしれない。負け惜しみではないと言い聞かせて今日は撤退することにする。
     だが、踵を返したジソプには見えないところでボムグが笑みを浮かべているのを感じる。嘲笑ではなく柔らかな。あいつら、と愛情を込めてDP達に悪態をつく時と同じ。
     自分にも「あいつら」と同じ情があると誤解するじゃないか。昨夜だって、あんた。おれに、あんな。
    「くそっ…」
     これだから、タチが悪い。
     天敵のままでいたほうが余程気持ちが安らいだのに。
    憎まれ口の一つでも叩いてやればよかった。退室したジソプは悪態を誤魔化すためにまた下手な咳払いをひとつした。
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    samey_k

    PAST「秘密の森」。シモクとヨジン。S2終了後3か月くらい経った話。ごはん食べてるだけ。別所より転載。
    食事をしましょう「ソウルに来るなら連絡しろと言っていたので連絡しました」
     そろそろ頃合いに煮立ってきた鍋をじっとみつめながらファン・シモクは言った。
     そっけない物言いももはや馴染みの物なので怒りも動揺もない。言葉の裏にあるのが社交辞令なのかそれともさらに一歩踏み込んだ「一緒に飯でも食いましょう」なのか。大抵の人間はそこを検討したうえで相手に連絡を取るが、この検事にはそういう機微はない。だが、顔も見たくない相手に連絡を取るようなタイプでもないこともそれなりに長くなった付き合いで知っている。ハン・ヨジンはただシンプルに「そうですね」と返事をした。
    「こちらにはいつ以来ですか?」
    「先月も来たんですが」
     黙ったのは、ヨジンが鍋に肉を入れ始めたからだ。一瞬じっと見つめあうがヨジンはそのままぽんぽんとリズミカルに肉を鍋に投入した。まだ早いと言いたげだったが、ヨジンの判断ではGOだ。箸と肉の皿を持っているのはヨジンなので決定権はヨジンにある。ちなみに具材を選定したのもヨジンなので、すべてにおいて圧倒的に自分に指揮権があると確信している。
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