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    seyakatehirai

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    seyakatehirai

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    ウツハン♀
    愛弟子サイドのお見合いネタだよ!!!!!

    実に不公平な恋の進め方カムラに平穏が訪れて間もなく。暫く閉塞的だった里には外来客が増え、他の里との交流も増えていった。しかし、今里では新たな問題に頭を悩まされていた。

    「何だ、これは…?」
    「全て我が里のハンターへの見合い希望の写真ですわ里長…こら、目をそむけない」
    卓上に積まれた見合い写真の山。それをヒノエが次から次へと里長の前へ運んでいく。
    「これら全て今まで交流のあった里関連の方々からの見合い希望です」
    実に、実に嫌そうな目をその写真の山々に向ける里長。つい先程ゴコクからも同じような顔をされたミノトが慣れた手付きでさらに写真の山を増やしていく。
    「どぉせあれだろぅ?我が里にも強きハンターを迎え入れたいやら何やらだろぅ?断ってしまえそんなもの…」
    「残念なことにそう簡単な事ではございません。夜行の問題から解放された今、カムラの里は外交にも力を入れていく必要があります。その為にせめて顔合わせだけでも」
    ペッペッとホコリでも払うように写真を扱う里長の頭にはミノトの説得はかけらも頭に残っていない。
    「せめて、この中から数人選んでお会いするというのは」
    「ダメだダメだ。却下。我が里の気高い焔にそんな事をさせてなるものか」
    里長は写真の山をごっそり持ち上げると、そのまま家の竈門にくべてしまう。「あっ」という姉妹の声も一切気にかけず、なんら躊躇いもなく放り込まれた写真は早々に灰となった。
    「「あ〜あ…」」
    「この話は終いだ。写真がなければ見せる男もいないからな」
    パンパンと手についた炭を払い、里長は足早にたたら場前に戻っていく。黙って見送る竜人族の姉妹は困り顔で互いの顔を見合う。
    「困りましたね、ヒノエ姉様」
    「困りましたわねぇミノト」
    ヒノエの背後には、出しそびれた写真が数枚。
    「仕方ありません。こうなったらハンターさんに直接お願い致しましょう…なるべく里長には知られない様に」
    本人さえ同意が得られれば、たとえ里長であろうがそこまでごねはしないだろう。それにあの方なら色々とこちらの事情も察してくれる。会うくらいなら快く受けてくれる筈。そう鑑みて姉妹は足早にハンターの家へと向かっていった。

    「おみあい…ですか?」
    丁度家に戻ったばかりのハンターは突然の話に呆けている。それもそうだろう。彼女は今まで人生のほとんどを狩猟に費やしてきた。そんな自分にその様な役割が回ってくるとは思ってもみなかった事だ。
    「まぁ、お見合いと言っても、ちょっと顔合わせして、お話するだけです。もし貴方様がお気に召したら交際へと発展させてもよろしいですし、特に興味がなければそのまま放っておいても構いませんわ」
    「そこまで深く考えずに。他の里の男性と食事会をするだけという認識で構いません。…すいません、里同士の交流もありますので、どうしても貴方様のお力をお借りしなければならないのです」
    「は、はぁ…そうですか」
    姉妹が差し出す写真に、ハンターが戸惑いながらも手を伸ばす。のだが、写真はひょいと誰かに取り上げられる。ハンターと姉妹が何事かと見上げれば、いつのまにか室内にジンオウガの仮面を被った男が忍び込んでいた。
    仮面の男は姉妹が捕まえようとする手からすり抜け、脱兎の如くハンターの家から飛び出す。
    「ウツシ!!パス!!」
    「里長!!どうぞ!!」
    放り投げられた写真は里長の右手に収まり、「気炎万丈!!」の掛け声と共にたたら場の燃えカスとなった。
    「ああっ!!もう!!」
    地団駄を踏むミノトに対して「ヘーイ」「ヘーイ」とハイタッチで互いを讃えるウツシと里長。スポーツでもやっているのだろうかと思われるくらいの軽いノリである。
    「あの…私はどうすれば…」
    「先程ので見合い写真は全部燃やされましたので。私達からはどうする事も出来ません」
    ヒノエの整った顔が苦虫を噛み潰しているかの様に歪んでいる。これだからこの里の男どもは、と言わんばかりに。
    「仕方ありませんね…『今回は』引き下がりましょう…」
    ハンターに一礼をし、互いのギルドの仕事へと戻っていく姉妹達。無論このまま引き下がってばかりではいられない。
    (ハンターさんには恋愛くらい自由にさせてあげたいものです。彼女には多くの選択肢を用意させてあげないと)
    (お見合いだってその選択肢の一種。里から出したくない男達の我儘には構ってられません)
    (次は強気にいきますわよミノト)
    (わかりましたヒノエお姉様)
    彼女達の小声での作戦会議。そんな事もつゆ知らず里長とウツシは呑気に肩を組んで「我らの焔を守ったぞー!」「うおー!」などと盛り上がっているのだった。


    そして後日。
    「というわけでお見合い希望の男性に直接来てもらいました」
    「えっ」
    ゴコクには寝耳に水どころか炭酸水の一言がぶつけられる。あわあわとテツカブラの幼体の上でバランスを崩している姿に構わずミノトは言葉を続けた。
    「前日に里の宿に泊まって頂いているので、今日ハンターさんがクエストから帰ったら直接ここの茶屋でお話をしてもらいましょう」
    「ちょ、待つでゲコ!?そんな事ワシ一言も聞いとらんでゲコ!?」
    「そりゃそうですよ言ってないですもの」
    さらりと述べるミノトのポーカーフェイス。対してゴコクは動揺を隠しきれない。と、言うよりかむしろ隠そうともしていないのだろう。
    「彼女の事ですので、今日のクエストもあと数時間あれば帰って来るでしょう。殿方達もハンターの生業について理解があるので、そのままでも構わない。むしろその話を聞きたいと賛同の声を頂戴しております」
    「そ、そうでゲコか〜…ちょっとワシ、用事思い出したから外へ出かけていくでゲコ〜」
    「どうぞ、ご自由に」
    慌てて出て行くゴコク。テラスの方ではいつのまにかウツシの姿も消えている。どうせ里長とウツシと話し合いでもするのだろう。しかし、彼も立場のある人間。里に来た客人をわざわざ追い返す無粋極まる事など出来るはずもない。ミノトは淡々とギルドの仕事へと戻っていった。

    「困った事になったでゲコ〜」
    いつもの里のたたら場の前にて。いつもなら里のクエスト受付をしているヒノエはいない。どうやら客人を宿でもてなしている。そして、里長、ゴコク、ウツシの三人が集まり座り込んでの緊急会議の真っ最中である。
    「羽振りのいい客が多いなと思ったらそういう事か…してやられたな…どうする?今から追い出すか?」
    「流石にそんな粗暴な事をしたら不味いでゲコね。客人として一度出迎えてしまったからには難しいでゲコ〜」
    「どうしますか?何か不幸な事故にでも遭ってもらいますか?」
    「ええい物騒な手段を持ってくるでないウツシ」
    「事故と言ってもあれです突然衣服がバラバラになって全裸になるくらいの唐突な事故です」
    「そんな器用な事が出来るゲコか、翔蟲の技術の無駄遣いでゲコね〜しかし下手人がすぐ割れる様な事はやめておくでゲコ」
    「そうですか…」
    ひそひそと話し込んでいるつもりなのだろうが、里長とウツシという大音量に定評がある二人がいる故にそこそこ声が聞こえてしまっている。先程からコミツがなんだろうと覗き込んでいる。
    「ハンターが来る前に集会所に男共が集まってくるはずだ。その間に美人局でも酒に酔わせるでも何かしら手段を取れればいいのだが」
    「じゃあ俺女装してテキーラ持っていきます」
    「そんなデカい女がいるかで一掃されるでゲコ。ウツシ、お前は一般人とかけ離れた体をしていると自覚した方がいいでゲコよ」
    あーだこーだと話し合うものの、一向に妙案は出てこない。カゲロウが面白半分に聞き耳を立てている。
    「ワシら三人で泣きながら土下座したらハンターなら情に流されてくれるでゲコ」
    「ヒノエとミノトの問屋が降りんぞ」
    「一体なんの話してるんですかこんな所で?」
    「やぁ愛弟子ちょうどいい所に、今君をどうやってお見合い相手が待つ集会所から遠ざけようか考えてる所でね」
    「えっ来てるんですか今日」
    「困った事にヒノエミノトがワシらに黙って連れてきておってだな」
    「作戦会議中でゲコ〜…」

    「「「ん???」」」

    ふと三人が重たい頭を上げる。座り込んでの会議にいつのまにかハンター本人が混ざっている。どうやらあまりに白熱し過ぎて彼女が三人の様子が気になり近付いていたのにまるで気が付かなかったようだ。

    「なんかクエストがあっさり終わってしまって、予定より大分早く帰ってしまったんですが…」
    「は、はは、そ、そうか。流石我が里の猛き炎よ」
    「そ、そうでゲコか、偉いでゲコな」
    「ところでお見合い」
    「あー!!愛弟子!!空を見たまえ!!ヤサカラスが飛んでいるよ!!」
    「えっ何処ですか!!今からでも増える報酬があるんですか!!」
    パッと彼女の視界が上に偏る。その隙にウツシは彼女を翔蟲でぐるぐる巻きに。「えっえっ」と戸惑う彼女を自分の背に縛り付けた。ふう、と気合の入った深呼吸を一度。ゴコクと里長が彼を見守る。
    「やむなしだがこれしか手はあるまい」
    「こうするしかなかったんでゲコ。許しておくれハンターよ」
    「えっちょっと待ってください一体何が」
    「なぁに愛弟子は気にする必要はないよ!!ちょっと逃亡するだけ!!」
    「ちょっと逃亡するだけ」
    何故に、逃亡?彼女が疑念を聞こうにもウツシの手から翔蟲がピュンと飛び出す。刹那、視界が一気に青と白に。早疾けで空へとウツシが飛び出して、そのまま何処かへと飛び去る。ゴコクと里長は敬礼しながら見送り、騒ぎを聞きつけ集会所から出てきたミノトは「しまった!」と先手を取られた事に後悔をしていた。

    「うわわわわわわわわ」
    ピュン、ピュン、と虫から虫へ、飛び移る。縛られて体の自由が効かないハンターにはどうする事も出来ず、轟々を吹き付ける風を顔に浴びて面食らう。
    「愛弟子!!大丈夫かい!?」
    「大丈夫じゃないですよ降ろして下さい!!」
    「あぁ、もうちょっと待ってくれ。もうすぐ着くから!!」
    次第にウツシは高度を下げ、どこかの森を突き進む。とん、と彼が足を下ろした場所は、今ではほとんど使わなくなった、百竜夜行の本拠地だ。
    「久々に来ましたね、ここ」
    「流石にこんな所にまで来てるとは思わないでしょ」
    ピッとウツシが手を伸ばすとハンターに絡みついていた糸が解ける。久々に解放された手足をうん、と伸ばすと今まで縛られて強ばった筋肉がぐっと解されていった。
    拠点に残っていた椅子に二人が座る。机には地図とバリスタや大砲の図面が残されており、ここでハモンやアヤメが話し込んでいた様子が朧げだが記憶に残っていた。
    「…それにしても、私のお見合いでここまでする必要があるんですか?」
    「そりゃあるとも!君はこの里の誇りだよ!そんな君に見合いを出してくるなんていくらなんでも不躾が過ぎる!ハンターは貴重な存在だとしても、見合いで引き抜こうなんて考え実に烏滸がましい!!」
    「でも、ヒノエさんは一種の里の交流みたいなものだって言っていたし」
    「見合いで里同士の交流だなんて、それこそ君を外交に使うみたいな扱いじゃないか」
    「別に私は会うだけですし。それが里の役に立つんならやりますけど」
    「…君が会うだけだと言っても、向こうが同じ考えだとも限らないし、それに、それにだよ!」
    「…それに?」
    「それに、もし、万が一、億が一だ、君が…その、見合い相手を気に入ってしまったら」
    それ以上が怖くて口に出せない。先程までの熱弁が消え、顔を伏せか細い声になるウツシ。ハンターは彼の顔を覗き込む。
    「気に入ったら、ですか…」
    「里長も、ゴコク様も、君を家族の様なものだと思っているからね。幸せになってほしいとは思っている。当然だよ。でもね、君がこの里から居なくなると考えると…」
    里長とゴコク、二人の名をわざわざ出してくる。しかしながら、一番に苦しんでいるのは目前の男だろう。長年一緒に居た分彼女には色々と感じ取れてしまう。
    「大丈夫ですよ。どうせお見合いの相手も私の事写真とハンターランクくらいしか知らなさそうですし。きっと本物見たら幻滅しますって」
    「どうだろうね」
    「うさ団子は毎回一口で食べるし、野原で普通に寝っ転がりますし、椅子に座る時大股開きますし、虫は素手で平然と掴んで投げつけますし、それに、言い出せばキリがないくらい女の子とは程遠いですからね、私」
    「それはハンターだから仕方ないよ。…まあ団子と足癖は君個人の問題だけど」
    「そこは否定しないんですね。まぁ分かってましたけど!」
    「あと、君が相手を気に入る可能性だって」
    「あはは、無いですね。だって好きな人いますし、私」
    「あっそうなの………えっ待ってそっちの方がびっくりしたんだけど!?誰!?教えてよ愛弟子!!」
    「ミノトさんにもヒノエさんにも里長にもゴコク様にも教えてますけど教官にだけは絶対教えません」
    「急に心の距離を離してくるね愛弟子よ!!教官傷つくよ!!」

    二人が会話で盛り上がる中、ふと誰かの声が遠くから聞こえてくる。恐らくはヒノエだ。「ハンターさーん、どちらにいらっしゃいますかー」と遠くから、次第に近づいてくる。
    「愛弟子!隠れるよ!」
    「えっどこにですか」
    今では使用されていない道具箱。そこを開けると二人分くらいは入るスペースが…正直あるとは言い切れないくらい。しかし、ウツシはハンターをそこに放り投げ、自身も無理矢理入り込んだ。蓋が出来ずに若干隙間が開いてしまっている。
    『教官、やっぱ無理ありますよこれ!!』
    『大丈夫愛弟子は細いから入れてるって!!』
    『教官が色々大きすぎるんです!!』
    ぎゅうぎゅうとおしくらまんじゅうすし詰め状態。そんな道具箱の前をミノトが通り過ぎる。
    「一応と思ったのですが、ここにも居ませんでしたか。困りましたねぇ…もう彼らの帰る時間になりますのに」
    彼女はそのまま回れ右して拠点から出て行った。足音が遠ざかるのを確認して、ゆっくりと蓋を開ける。
    「よし、なんとかなったね」
    「し、死ぬかと思った…」
    「ははは、君にしては大袈裟に言うねぇ」
    道具箱からひょっこりと顔を出す師弟。辺りにはもう誰の気配もない。そろそろ日も落ちてくる頃だろうか。よっこいしょとウツシが先に箱から出てきて、潰れかけのハンターを外へ引っ張り出した。
    「うん、このままもう少し待っていれば奴らも帰ってくれるかな」
    「後でヒノエさんとミノトさんに怒られませんかね、これ」
    「なぁに、君は気にする事はないよ。怒られるの俺とゴコク様と里長だし」
    「怒られるの前提でやってたんですか…こんな事…」
    「まぁね!!」
    師の開き直った笑顔に引き攣った笑みしか返せない弟子。ヒノエとミノトの苦労をなんとなく察してしまう。
    「それで、愛弟子の好きな人って」
    「いやーそれにしても久々にかくれんぼしましたねーちょっと子供の頃思い出しちゃいましたよーあれは確か修練場で見つかったら里10周とかめちゃくちゃなノルマ課されたかくれんぼでしたねー懐かしいなー」
    「ちょっと愛弟子はぐらかさないで」
    「そうそう、鬼ごっことかもやりましたねー教官がずっと鬼でジンオウガの仮面つけたまま一日中走らされた記憶ありますよーあれもキツかったなー」
    「そんなに俺に言いにくい事かい?凹むんだけど?」
    「そりゃそうですよ小さい頃と違って今は言いにくいんですから」
    「そうか言いにくいか…ん?小さい頃?」
    「あっ今のなしで」
    「ちょっと待ってくれ愛弟子、君は昔、俺に『お嫁さんになるー』とか言ってなかったっけ…?」
    ウツシが確かめる様にハンターの方を見る。のだが、彼女はいつの間にかそこにはいない。青い翔蟲の糸だけが残っている。彼は黙って、ぐっぐっと先程箱に詰まっていて固まった足の筋肉を軽く伸ばして、彼女の痕跡を辿り翔蟲を飛ばした。

    「…いくらなんでも本気で追っかけてくる事は無いと思います」

    ものの数分で捕らえられたハンター。実に早かった。夜行の戦場を飛び回り逃げていたら目前に青い糸のネットが出来ており、あっという間に拘束状態である。
    「ごめん、つい」
    口元は隠れているのだが恐らくはニヤけている。実に大人の余裕ぶった表情。腹が立つくらいに。
    「それで、捕まえてどうするんですか?」
    「いや、確かめたかっただけ。君がさっき言ってた事を」
    「昔と今は環境が違いますんで。師弟になったんだからそれなりに弁えてます。感情に蓋する事はもう慣れました」
    「はぐらかすね」
    「…教官の思った通りですよ。そういう事です」
    「うん、そっかそっか!」
    ひょいと捕まえたままのハンターを持ち上げる。「どこに行くんですか?」との問いに「里に戻ろう」とウツシは答えた。
    「ヒノエさんとミノトさんには俺から伝えておくよ。見合い必要無くなったって」
    くるくる巻きになった彼女にはもう何も言い返すこともなかった。ただ、これはとんでもない人に捕まったんだろうなという事は理解は出来た。目の前で実にニコニコ幸せそうに笑う男に。心臓は馬鹿みたいにばくばくと鼓動を打ち、顔の赤みは取れないまま。どちらも惚れた弱みってのはあるはずなのに随分と一方的ではないだろうか。

    折角ずっと隠してたのに。迷惑だからと思って押しつぶしてたのに。翔蟲で逃げても逃げてもあっという間に捕まって。彼女は糸に絡め取られ、くるくると巻きつけられながら、ウツシに口を吸われ続けられた。初めての接吻は舌の触感で、でろでろと口の中をごちゃ混ぜにされて味なんて感じる暇も無かった。涙目になって潤んだ視界に見えたのは、蜜色の瞳と、ニヤリと笑う口。その顔は今まで見てきた彼の顔のどれとも違う、男の顔だった。

    「そうだ、愛弟子はどっちの家に住みたい?」
    「教官、順序と段階って知ってます?全てすっ飛ばしてくるのやめません?」
    「じゃあ逆に聞くけど俺が君手放す人間だと思う?」
    「思いませんね!捕まった私が馬鹿でした!!私の家がいいです!!」

    そんなこんなで里へと帰ると、案の定姉妹の出迎えが。既に先に座らされているゴコクと里長。その隣で行われる教官の土下座に刮目しつつ、事の流れを説明すれば姉妹は「今更すぎます!!」と教官の頭上に手刀を叩き込む。いたたと頭をさする教官が反省の弁を述べた後に、実に幸せそうな顔してそのまま普通に愛弟子の家に入り込んでいった。

    「フゲン、あれはあれでよかったでゲコかね…?」
    「娘はやらんって言いに行った方がいいか?」
    「なんでちょっと楽しそうでゲコか」
    「一回言ってみたかった」
    「わかる」
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