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    seyakatehirai

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    seyakatehirai

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    師弟丼の猛き炎兄妹二人のエルガド話だよ〜〜全年齢ネタ話かつカップリングのない話だけど一応ネタバレ注意ですわよ〜〜〜〜
    師弟丼って何って方は聞かなかったことにしてそっとここから出ていくんだよ〜〜〜

    まさか自分まで覚えられていなかったなんて思っていなかった女騎士がかわいそうな小話カムラの里の『猛き炎』と呼ばれる英雄の兄妹、アサヒ(旭火)とカレン(火煉)がエルガドへと招集され数週間が経った。狩猟の更なる高みへと駆け上りながら拠点で巻き起こる問題を解決し、もういくらか周囲の人間とも溶け込んで来たであろう頃合い。丁度一隻の船が付き、クエストを終えた英雄の兄の方が拠点へと舞い戻って来た所である。

    「おっ、いいところに帰ってきたな!ちょっといいか?」

    雑貨屋へと向かう兄を引き止めたのはエルガドの地の教官であるアルローだった。猛き炎は呼びかけに答え教官とついでにおそらく組手の練習をしていたのであろう赤髪の騎士の元へと向かえば、例の依頼の件だと厳つい男は彼に話しかけた。

    「お前さんは仕事が早くて助かる。バゼルギウスの捕獲、早速ギルドに報告が上がってたぜ」
    「凄いですね!あの暴れ回っていたバゼルギウスを捕獲ですか!」
    「バゼルなら向こうでも相手してたんで」
    「お前さんも軽く言うよなぁ。相手はマスターランクでの依頼がかかってる程の危険個体だってのによぉ」

    褒め称える若い騎士に対して無愛想に答える英雄。恐らくその淡々とした言動が憧れの提督のイメージを被さるものがあるのだろう。かっこいいなぁ!俺もそんな感じになりたいなぁ!と羨ましがるジェイにエルガドの教官は呆れた笑いを溢す。おそらく青年が提督ほどどっしりとしたものになるにはどれほどかかるのか、考えるだけで気が遠くなりそうな話であった。

    「依頼の報酬はギルドから後ほど渡すんだとよ。気長に待っててくれ」
    「わかりました。また何かあったら教えて下さい」
    「もうすっかりアサヒさんもエルガドに馴染みましたね!マスターランクのクエストも卒なくこなしますし!カムラの里の英雄『猛き炎』には欠点無しっすね!」
    「欠点無し、ねぇ…」

    ずらりと並べられたジェイからの言葉にアルローは顎をなぞる。彼は、英雄の目を窺いながら、一つの問いかけを投げつけた。

    「ところで猛き炎さんよ、俺の名前、覚えてるか?」
    「………えっ」
    「何言ってるんですかア
    「ちょっとお前は黙ってろ。今こいつに聞いてんだよ」

    速攻で回答を漏らしそうになる青年の口を乱雑に防ぎ、エルガドの教官は英雄を試す。教官という立場のある人間の名、これくらい拠点に来て数日程度で覚えておかなければならない事なのだが、肝心の英雄はというと口をつぐんだまま。視線は誰かに助けを求めるかの様に右往左往上下しているのである。

    「残念だったな、頼りの妹さんはお前さんと入れ違いで今しがたクエストに出かけたばっかだ」
    「ぐっ」
    「それでぇ?俺の名前はぁ?なんてったっけなぁ〜?」
    「ゔぅ…!」

     完全に英雄の思考は読まれており、探し求めていたものを言い当てられてしまい猛き炎の動揺はさらにひどくなっていく。実の所、クエストは下位の頃喧嘩を起こして以降救援を受けたことがなく、基本カムラの里の人々としか交流をしてこなかった男。それ故に人の名前を覚えるのがてんで苦手になってしまったのであった。新たなモンスターの名前は覚えられるのにどうにも人名は頭の中に記憶されず、エルガドでのやりとりも基本妹から名前を耳元で囁いてもらってなんとかやっていけていたのであったのだった。
     赤髪の騎士の口を塞いだまま、ずいずいと意地悪そうに寄っていくエルガドの教官。本来ならここでもう一隻助け舟を出してくれる実家の教官(カムラの教官)はといえば里長にお使いを頼まれて王都の方へと出かけたまま未だ帰って来ず。そんなこんなで完全なるアウェーの中、ニタニタと笑う色黒の男の前に割って入ってきたのは、騎士の手袋。口を押さえてられている青年とは違い、どことなくほっそりとした指先だった。


    「アルロー教官、あまり虐めてやらないでほしい。彼は今までカムラの里で暮らしていたんだ。いきなり慣れない土地の多くの人数の名を覚える方が酷だろう」
    「いや、虐めた訳じゃねぇんだよ、ちょっとからかってやっただけでだな」
    「それならそこまでしつこく尋ねる事もあるまい。さ、この話を終いだな。アサヒ、提督が貴殿の活躍を耳にして渡したいものがあるそうだが、今から来てもらえるね?」

    ツンツンと外バネしたショートカットの女騎士は颯爽と現れ、猛き炎の手を取る。あまりにさわやかな立ち振る舞いに通りすがりのウナバラと団子屋のアズキは彼女の背景に薔薇が見えたらしく目を何度かゴシゴシと擦っていた。そんなあまりに優雅にやってきた助け舟に、心底安心した顔で猛き炎は言うのであった。

    「助かりました、ロンディーネさん」

    がく、と膝が半分崩れる女騎士に、エルガドの教官から「そりゃフィオレーネの妹さんの名前だよ」と虚しくツッコミが入っていった。



    「なんでフィオレーネさんあんなにテンション駄々下がりなんですか?」
    「……聞いてやるな」

    それから暫くして猛き炎の妹がクエストから帰ってきた頃には何故か普段の5割ほど爽やかさと髪ハネ具合が無くなった女騎士。そんな彼女について妹はアルローに尋ねたところ実に渋い表情の返事が返ってきたので、あっこれは深掘りしない方がいいやつだな、と早々に察してこれ以上の詮索はしなかった。
    そして、彼女はウツシがいなくて暇そうにしていた学者を肩におぶって騎士団指揮所の方へと消えていった。それから数分後して、アイルー達が乗るトロッコの中にやたらと髭を蓄えた見覚えのある頭巾を被ったアイルーが混じっていたと黒鬼からの証言であった。
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