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    だいふく

    煉宇、宇煉、宇煉宇。大人向けあります。

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    POIPOI 19

    だいふく

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    その内うれんうになる二人💎🔥💎
    リクエスト頂いたものです、有難うございます!
    お題
    呼吸、踏み切り、感情

    ベテルギウスSaturday

    朝煉獄が目を覚ますと、そこは宇髄の家のリビングで、大きなソファの上だった。
    昨日は量を沢山飲んだのは間違いなく、テーブルの上に置かれている飲み終わった缶と空のワインのボトルで二人で大分飲んだのだとゆっくり身体を起こしながら寝乱れている髪を軽く掻き上げる。
    「……よし、片付けるか」
    まずは薄暗いリビングに光を入れるようにカーテンを開けると日が昇り始めていて、一気に明るくなる室内に煉獄は瞳を細めた。リビングの時計を見るとまだ七時、煉獄にしたらのんびりな朝ではあるが土日の宇髄はまだゆっくり寝るはずだった。
    毎週のように来ている宇髄の家は何処に何があるかは大体分かっており、キッチンの方へと向かうと半透明のゴミ袋を二枚取り出してプラスチックと瓶缶を分別し、なるべく音を立てないようにそっと入れて行く。既にからからに乾いてしまったチータラは申し訳ないがゴミ箱行きとし、大体片付け終わるとローテーブルを拭いて片付けは完了。
    ゴミはベランダへと一旦避難させておき、空を仰ぐと綺麗な青空が広がっており、朝の少し冷たい空気を煉獄は肺に送り込んで心地好い深呼吸をした。
    リビングへと戻ると寝室から何も音がしない為にまだ眠っているのだろうと閉められたままの引き戸を見遣り、その瞬間煉獄の腹が空腹を訴えて音を立てる。
    合鍵の在処も知っている。コンビニに行って買い物でもしてくるかとぽん、と腹を叩いて煉獄は立ち上がり、音を立てないようにポケットに財布とスマホを押し込んで宇髄の家を出た。

    ────────────────

    side U

    毎週一緒につるんではいた。仕事が終わった後に声をかけあって、何食うだの飲むだの話して大体俺ん家。
    俺ん家の方が学園から近いから。
    珍しく煉獄が結構なペースで飲んでて、何度か止めはしたけどペースは全然落ちなかった。ほんとに珍しい。
    「煉獄、結構飲んでねえ?」
    「そうか?」
    特に顔も赤くは無いが、どうにもいつもと様子が違う。
    新しい缶を取りに行こうと立ち上がった所で軽く傾いた煉獄の身体に驚いて咄嗟に手を出すと、そのまま俺の方へと煉獄は身体を寄せて楽しそうに笑い声を上げた。
    「っはは!すまん、少しよろけた」
    「酔ってんの」
    「酔ってないぞ」
    相変わらず笑って言いながら煉獄は身体を起こそうとして不意に俺の方を見上げてくる。
    でかい瞳と視線がぶつかった。
    「宇髄」
    「どした、具合悪い?」
    「いや」
    「じゃあ何、水?」
    「いや、キスが良い」
    「は?」
    多分相当素っ頓狂な声を上げただろうと思う。煉獄がそんなふうに絡んで来ることなんて無かったし、そんなのは嫌いなんじゃないかと思っていた。
    ニコニコ笑いながら煉獄の手が俺の方へと伸びてくる。
    何だ、もしかしてこいつ酔っ払うとキス魔になんの?
    「待て待て待て待て」
    手首を捉えると煉獄は首を振る。そんなに熱くは無いが酔ってるのは間違いない。と言うか熱くないとか血の気引いてるって事か、具合悪くねえのか。
    「宇髄、俺とはキス出来ないと?」
    「いやお前酔い過ぎだろどうした」
    「どうしたもこうしたも無いな、そもそも酔っていない」
    「だからそれ酔っ払いの常套句」
    酔ってないを繰り返す煉獄に笑ってしまうが、気分は悪くないように見える事で少し安心する。それでも引かない煉獄はとうとう身体を起こしてソファに寄りかかっている俺の肩をしっかりと掴んだ。
    こいつ力めっちゃ強い、いや分かってたけど。
    「煉獄、ちょっと水飲も」
    「飲まない」
    「こら、煉獄」
    呼吸さえ間近に感じられる距離、別にキスくらい減るもんじゃ無いし罰ゲームでする事もあるようなもので、するのは構わない。が、そのただのキスをもしこいつが覚えていたら、とんでもない罪悪感とかそう言うのに苛まれて悩むんじゃねえかと一瞬考える。
    真面目一辺倒の煉獄が酔っ払って俺にキスをしたとなったら。
    それで気まずくなんのも面倒だし、何となく毎週の時間が無くなるのは嫌だなと漠然と感じる。
    キスして、何か変わったらどうすんだろう。
    俺と煉獄の関係がなにか変わってしまうとしたら。そんな風に思考が揺れて俺は咄嗟に、本当にギリギリで煉獄の唇に自分の掌を押し当てた。
    「む、……宇髄」
    「駄目ですー」
    「駄目なのか」
    「覚えてたらお前多分落ち込むぞ?」
    「覚えているさ、そして落ち込まない」
    「どっから来るのその自信」
    「手を退けてくれ」
    「駄目」
    まだ文句を言いそうな煉獄をどうにか宥めて肩を押し遣る。今度は簡単に動いた。
    もう時間も時間だと半ば無理矢理ソファに寝かせて毛布をかける。ベッドで寝て良いといつも言うが煉獄は変に遠慮してそれは拒否をするからだ。
    リビングの天気を消しておやすみと声をかけるとおやすみと返ってくる声を確認し、俺は片付けもそこそこにベッドへ潜り込んだ。
    無理矢理飲みを終わらせた自覚はあった、先程煉獄の唇に、呼吸に触れた掌がまだ熱を持っているようで、柔らかかった煉獄の唇の感触が残っているようできゅっと手を握り込んだ。
    寝よう。朝起きたら元通り、のはずだろ。
    キスしたら、どうなっていたんだろう、なんて。そんなことを考えた自分に驚いて俺は毛布の中に顔を埋めた。

    ────────────────

    side R

    毎週恒例行事の宇髄家での宅飲み。
    毎度思うが、酒の入った宇髄はどこか色っぽいと感じる。
    元より美しい男だとは思っていた、そしてどこか繊細で危ういとも。
    毎日学園で言葉を交わし、毎週こうして酒を飲む。
    傍で眺めている内に胸の中に湧いた感情に、何と名前を付けて良いのか。
    恋と呼ぶには歪なように思うし欲までも到達しないような、不思議な揺れ。
    もし、触れたいと願ったら、君はどんな顔をするのだろうか。
    例えば、キスしたいと言ったら?
    好奇心に似た感情が腹の奥底で首を擡げる。見てみたい、その顔を。
    乾杯、といつものように缶をぶつけてチータラを食べつつ買い込んできた酒を喉奥へと流し込む。
    食べ物もしっかり減らし、速いペースで缶を空ける。いつもより飲んでいるのは自分でも分かっているし宇髄も分かっているからかセーブするようにと声をかけられる。
    結構飲んでいると指摘された所で、さて頃合いかと宇髄の座る場所を確認してから俺は立ち上がった。
    少しだけ重心を後ろに落として片手をテーブルに付けると、後ろからだとよろけるように見える身体を宇髄が抱き留めるように手を伸ばしてくれる。
    君は優しいからそうやって助けてくれる事を、知ってる。
    「キスが良い」と唇を強請ったが、宇髄はなかなか首を縦に振らない。
    驚いたような顔も美しいなと眺めてはそっと手を伸ばすが触れる事が適わず捕まってしまう。
    キスの一つや二つ、と言いそうなものだが案外そうでも無いらしい。酔っ払いの戯言は世間的には本気に取られることは少ないようだ。
    そしてもう一つ君の優しいところ、俺が落ち込むかもと気にしてくれる。
    明日の朝俺が起きた時に何か後悔しないように、と。
    宇髄、俺は何度も君に言ったが、本当に酔っていない。
    君が少し戸惑ったのも、咄嗟に俺の口を押さえたのも、誤魔化すように俺をソファに転がしたのも、全て覚えているんだ。
    「おやすみ」
    そう言った後、君はなにか悩んだのだろうか。何を思ったのだろうか。
    広いソファの上で俺は一つ欠伸を落とす。明日は早めに起きて片付けをしなくては。
    この気持ちに名前をつけるなら何になるのか、一歩強く踏み切ってしまえば、これはきっと恋になる。それは分かっていた。
    君はどこに向かって踏み切るのか、それを見届けたくなる。
    さて寝よう。朝起きたら君はどんな顔をしてくれる?

    ────────────────────

    Saturday

    宇髄が目を覚ますとリビングの方から何やら音がするのに気がついた。時計を見るともう9時を回っていて大分寝てしまったとゆっくりと体を起こす。頭は痛くないし気分も悪くない、酒は残って居ないようで、さて煉獄はあれだけ飲んでいて大丈夫なのか、きっと忘れているのだろうとベッドから降りてリビングへのドアを開けた。
    明るい日差しに眩しそうに目を細め、そこに居た煉獄の明るい髪色を見留めると口を開く。
    「おはよ」
    「おはよう!ゆっくり眠れたか?」
    「んー?ん、寝た寝た。お前は具合悪くねえの」
    「全く問題無いな」
    「あっそぉ、それなら良いけど」
    宇髄がソファに腰を下ろすとテーブルの上にコンビニの袋が置いてあり、冷蔵庫からお茶のペットボトルを持ってきた煉獄が冷えたボトルを差し出す。
    「んあ?ああ、買ってきてくれたの?起こせば良いのに」
    「いや、流石に忍びないと思ってな。合鍵を借りた」
    「了解ー」
    「米とパンがある」
    「カテゴリーかよ。パン」
    髪を手櫛で軽く整えながら宇髄が笑うと煉獄は袋から惣菜パンを取り出して手渡す。煉獄はラグに座ったまま朝から食べられるのかと思う大きさのカツ丼を取り出した。
    「お前結構飲んでたろ、食えんのそれ」
    「大丈夫だな!」
    煉獄は自分の分のお茶を取るためにカツ丼を置いてもう一度立ち上がり、冷蔵庫の扉を開けて冷たい茶を取り出す。パタンと音がして宇髄を振り返り煉獄はにこりと人懐っこい笑みを浮かべた。
    「言ったろう?酔っていない、と」
    「言ってたけど、……て、え?お前覚えてんの?」
    「覚えているも何も酔っていない」
    「……マジで?」
    「マジだな」
    「キス魔じゃねえの?」
    「誰がだ」
    「お前」
    惣菜パンで指さされ、煉獄は思わず肩を揺らして笑った。キッチンの辺りに立ったままペットボトルをキャップを捻って開ける。
    「っははは!まさか!」
    「だってキスしようとしたじゃん!」
    「したな!」
    「なんで!」
    「なんで、と言われると、そうだな……したかったから、だろうか」
    「なんだよそれ!」
    惣菜パンに歯型を刻み付けながら宇髄が声を上げ、煉獄は茶で喉を湿らせてから笑う。
    「なあ、宇髄」
    「あー?」
    「踏み切ってしまえばすぐそこなんだ」
    「何が」
    「宇髄」
    「だからなんだよ」
    「キス、させてくれ」
    ぽかんと口を開いた宇髄がパンを投げようとして思い留まり、ペットボトルを投げてくるまで、あと五秒。

    さあ、一歩踏み切って、飛び込んで来い。
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