風の国、モンド。自由なその国を護る西風騎士団の騎兵隊隊長、ガイア・アルベリヒには三つの秘密がある。
ひとつは祖国、カーンルイアのこと。ひとつはアカツキワイナリー、ひいては元義兄のディルック・ラグヴィンドに対する感情のこと。そしてもうひとつは――身体が、宝石へと変貌しつつあること。
事の始まりは一週間か、二週間ほど前。左胸――ちょうど心臓の真上の位置に、親指の爪ほどの大きさの宝石が現れたことだ。何の前触れもなく突然現れたそれはどうやら肉体に同化しているらしく、無理やり取ろうとして、失敗した。
触れるだけならいい。眺める分にも何も起こらない。けれど、明確にそれを取り出そうと意図して触れると、全身をずたずたに引き裂かれるような、内臓のすべてが狂ってしまったかのような、何もかも投げ出して今すぐ叫んで助けを求めたくなるような。凄まじい痛みと恐怖に襲われた。そして同時に体の一部が宝石へと変化した。
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