待ち人「おかえり。まってたよ」
そう言って笑ったおまえの顔や手には血がところどころついていた。
どうも、一暴れした後らしい。サタンの部屋の中に入ると、ただでさえ本が散乱して足の踏み場がない部屋が、雪崩を起こした本で更に床が見えなくなっていた。
ホコリが舞う中に、鉄の匂いが混じっている。暗い部屋の中でよくよく目を凝らすと、至るところに血が飛び散っている事に気がついた。
「……今度は、どうしたっていうんだ」
溜息をつきながらそう問いかけると、サタンは笑顔のまま言葉を発する。
「さあな。いつもならば抑えられるはずの感情が、今日は抑えられなかった、というだけだ」
そうぶっきらぼうに言いながら、サタンは本を踏んでしまうことを気にすることなく近づいてきて、手を取った。……いや、強引に腕を掴んだ。
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