魅惑のアップルパイ「おい、サタン」
俺に背を向けてしゃがみこんでいる金髪の悪魔に声をかけると、そいつはビクリと肩を震わせた。恐る恐る後ろを振り返るそいつは、キッチンの冷蔵庫を開けたままこちらをじっと見る。
「や、やあ。どうしたんだ、急に。君もお腹が空いたのか?」
そう言いながら、サタンは後ろに何かを隠したのを見逃さなかった。俺は何も言わずにサタンの肩に手を置く。そのまま軽く後ろ方向へ力を入れてやると、悪魔だというのに人間の力でも簡単に後ろへひっくり返った。
それと同時に表れたのは、平皿に乗ったレッド×レッドアップルパイ。後ろにひっくり返りながらも何とか皿をひっくり返さないように死守したそれは、一口分だけ欠けていた。
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