被験体Sはかく語りき きっかけは確か、真っ当な仕事の依頼だったと思う。
マスターの指示で向かった先は、その頃まだワクチンを打つ時くらいしか来たことの無かった場所、の更に奥のフロア。そこで俺は、奇妙な白い仮面で顔を隠した男性に出会った。
背は高いけど痩せっぽちで、首からガラスのフラスコをぶら下げていた。ひどい猫背なのは、きっとその重そうなフラスコのせいだろうと思ったのを覚えている。
彼はゆらりと俺を見上げて、
「VRC所長のヨモツザカだ」
と言った。意外にハッキリとした強い響きに、俺は無意識に背筋を伸ばしていた。
「ハ、退治人ギルドから来ました、サテツといいます。今日は、その、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく。…………」
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