『お菓子をくれなきゃ……』 王宮の正門から大通りへと続く階段に、目当ての銀髪を見つけて近付いた。一番上の段差に腰掛けていた彼が、接近者の気配に振り返る。しろがね色の瞳に、いつもとは違う装束の自分が映った。
お互いに無言のまま、彼の隣に座る。するといつの間に準備していたのだろう。片手で隠せるほどの小さな小さな布袋を膝の上に落とされた。
「まだ何も言っていないが」
布袋をつまんでまじまじと見つめる。触ってみると丸くて硬い手応えがあった。飴玉だろうか。
「ザンヒコは悪戯なんてしないでしょう?」
薄く笑った顔でそう言われる。冗談なのか大真面目なのか分からない。だが。
自分は同じような揶揄で切り返す代わりに、用意しておいた小さな小さな包みを相手の膝に落とした。中身は焼き菓子である。
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