ナシュ黒プロバスケットボール選手の場合 二時
かたん、と音がして振り向くと、シャツと下着だけを纏った恋人がまるで幽霊の様に立っていた。
『……おい、起きるにはまだ早いぞ』
『はい。ですが、あなたはなぜ起きているんですか? 眠れないんですか?』
そう言って黒子はふらふらと覚束ない足取りでナッシュの隣に座った。時刻は四時を回ろうとしていて、普段黒子が起きる時間より、だいぶ早い時間だった。
『目が覚めちまっただけだ。なんでもない。それより、お前は寝なくて良いのか』
『今寝てしまったら、あなたの見送りに行けませんから。フライトは十時でしたよね』
『別に、見送りに来なくていい。それより、そんなゴーストみたいな顔で来られる方が迷惑だ』
1948