嫌悪と本能 最悪だ。
路地裏に座り込みながら、ヒヨシは頭を抱える。ぼんやりとした思考では、ここがどこなのかも分からない。マントに泥がついて不快だったが、身じろぎするほどの体力も残っていなかった。
吸血鬼の退治をしてほしい、と自治体から依頼があったのが今から数時間前。ヒヨシが現場に向かうと、ラフレシアのような巨大な花が大通りを塞ぐように咲いていた。道路のコンクリ―トを突き破って生えた花は、中央のくぼみをのぞき込むとビッシリと尖った牙が生えている。植物が何らかの要因で吸血鬼化し、急成長したらしい。
念のためVRCの到着を待ち、調査をしてもらおうとした矢先。花が大きく蠢動し、赤い霧のようなものを吐き出した。霧はたまたま側に立っていたヒヨシに降りかかり、ヒヨシは大きく咽た。「毒かもしれない」と慌てる研究員をよそに、所長のヨモツザカは淡々と吸引機で霧を採取し、分析器にかける。グラフの印刷された長い紙が吐き出され、ヨモツザカは顎に手を当てた。
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