遊びで済まない「キスだけは絶っっっっっっっ対しない」
ミスタは確かに、最初にそう言った。
「ハァ、あうっ♡も、ムリぃ……♡何も出ない……♡」
少なくとも今より締まった顔で。
胎に埋めたものが、白濁を吐きながら硬度を失っていくのが分かる。
事に及ぶ前のミスタは、下品な誘い文句や、露骨なスキンシップに乗り気だった。しかしいざ押し倒して、口付けようとすると、「タンマ」とだけ言って一度渋い顔を見せる。その時にはもうお互い、触れる場所すべてが熱くて仕方ないというのに。お気に入りのコロンだけじゃなく、汗の匂いまで届くほど近くにいたのに。ミスタは何か一線を越えまいとして、踏ん張っている。ただこの先への期待はあるようで、視線は泳がせながらも、拒む素振りは見せなかった。あと一歩を踏み出させるように、できるだけ優しく、低く、ミスタの耳元で囁く。
1989