さみしい光の底prologue
――寂しそうな人だな。
彼の内面に僅かながら触れるようになって抱いた感想はまずそれだった。
大人らしく落ち着いて、年少の魔法使いたちに接している彼はいつも飄々としていて捉えどころがなかった。
そんな彼が冷たい夜風に身を晒して月を見上げていたあの夜。
彼が小さく溢した「一人で石になりたくない」という言葉がずっと晶の心の奥に棘のように突き刺さって。
いつも穏やかな表情を浮かべる中で、ふとした瞬間に覗かせる何処か達観したような、どこか遠くを見るような視線の寂しさに気づいたら、もう気づかなかったフリはできなかった。
もっと彼のことを知りたくて、抱えている孤独の一端に触れたくて。
土足で踏み込んで暴きたいわけではない。
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