過去ログ20街が病んでいることなど誰が見ても明白だろう。ふらりと足を運んだ異邦人でも一目で分かるほど街の荒廃は一目瞭然だ。整然と並んだ石畳に染み込んだ血の色は消えず、壁に張り付いた肉片はは乾いている。何よりこの臭いだ。腐った肉の臭いや濡れた獣の毛皮の匂いが付き纏い、眉間が疼くようだった。住み慣れている筈の街だが、徐々に増す生臭い死臭に不快感は増すばかりだ。
粘つく唾液を吐きながら一匹の犬が飛びかかる。シモンの頸動脈を狙ったのだろう。身を屈めて襲撃を避ければ着地に失敗して犬が転ぶ。その四肢は腐って肉が崩れて始めていた。皮がずる剥けて繊維状の筋肉が剥き出しになった足から酷い匂いが漂っているようだ。
甲高く吠えたてる腐った肉を纏う犬の脇腹を蹴って弓で射る。誰かの飼い犬だったのかも分からぬほど原型を留めぬ其れを射殺せば、その隙にこちらに掴みかかろうと迫る男がいた。一切躊躇わずに首を刃で跳ねれば饐えた血の匂いがした。
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