【クリ想】降りてくる 知人の海女からと言って古論クリスが保冷バッグの中の牡蠣を見せると、北村想楽は呆れ混じりの笑みを浮かべた。
「クリスさん、海女の知り合いまでいるんだねー」
「はい! 彼女は私と同い年で、十年以上も海女漁をしています」
言いながらクリスは殻付きの牡蠣を見下ろす。生でも食べられる牡蠣に備えて、今日のクリスはレモンやタバスコも持ち込んでいた。保冷バッグいっぱいの牡蠣はどれも大振りで、見ているだけで海の恵みへの喜びが湧く。
「十年かー」
「牡蠣を頂くようになってからは三年ほどですが、年々大きい牡蠣を頂けるようになっています。牡蠣の降りてくる場所が分かるようになってきたのだそうです」
「降りるってどういうことー?」
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