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    湯沢紫苑@真桐大好き

    @Hasan_The_First

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    POIPOI 28

    「真島の兄貴は嘘吐く男じゃねえ!」から勝手に妄想した話、一応🎥真桐

    邪魔者には地獄への片道切符 血相を変えた兄弟が自室へ飛び込んできた時、桐生は耳を疑った。「幼馴染である由美が攫われた」、その一言で桐生は錦山と共に夜の神室町へ飛び出していく。下手人の正体は分からず、手掛かりもないまま闇雲に探し回る二人。薄汚れた路地裏を駆け回っても、疑わしき人間の足跡一つ見つけられなかった。父と慕う風間ならば何か知っているかもしれないが、堂島組に身を置く桐生がおいそれと頼る訳にもいかない。途中で別れた錦山と合流するべきかとポケベル片手に公衆電話を探していると、軽い金属音を立てながら近付いてくる足音が聞こえて来た。音のする方向へ振り返れば、そこにいたのは金属バットを肩に担いだ組違いの兄貴分・真島吾朗だ

    「桐生ちゃん、め~っけ。 何しとんの?」
    「お疲れ様です、真島の兄さん。 今は人探ししてまして、喧嘩はまた今度に……」
    「え~、何でそない事言うん? 桐生ちゃんのいけずぅ」

     言うが早いか、脳天目掛けて振り下ろされる金属バット。素早く避けた桐生を見て不気味な光を灯す隻眼、眼帯を付けている死角へ避けた筈なのに、真島は的確に桐生を狙ってバットを振り回す。喧嘩に付き合っている場合ではないと毒吐いたところで何の解決にもならず、桐生は喧嘩狂いの兄貴分を倒さなければならなくなってしまった。逃げたところで何処までも追ってくるし、完膚なきまでに倒さなければ逃れる術はない……桐生一馬の強さを気に入っている真島吾朗とは、そういう男である
     本気で相手しなければ殺される、短い付き合いではあるが桐生は真島の性質を理解していた。少なくとも、喧嘩の部分に関しては。振り下ろされるバットを避けつつ、拳を叩き込む桐生。殴られた真島は金属バットを手放すと腰に差したドスを引き抜き、一直線に突き出す。掠めた刃で皮膚一枚を切り裂かれながらも、側頭部目掛けて蹴りを繰り出すもあっさりと避けられてしまう。確実に切り裂こうとするドス捌きを何とか回避しながらも、桐生はすれ違い様に真島へ痛打を見舞うが、左目を血走らせる彼を止めるには至らなかった

    「何やってんだよ、桐生!」
    「錦!」
    「なぁにもう、ええところなんやから邪魔せんといてぇ?」

     折角楽しんでいた喧嘩に横槍を入れられ、真島の機嫌が急降下していく。殺気に当てられて呼吸が詰まる錦山だが、持ち前の精神力で持ち堪えると桐生の腕を掴んで全速力でその場を離れていく。もっと楽しみたかった真島だが、そういえば桐生が「人探しをしている」と言っていた様な気がしたので、今回だけは大人しく見逃してやることにした。当然ながら次に相見えた時には、逃がすつもりは全くない
     命からがら逃げ出した錦山と桐生は路地裏へ入り、肩で息しながら背後を振り返った。幸運な事に真島は追い掛けて来なかった様で、周囲に不穏な気配はない。とりあえず助かったと桐生が礼を述べると、錦山はとんでもない狂犬に付け狙われる兄弟へ素直に同情した。何とか息が整った錦山が桐生へ伝えたのは、由美を連れ去る集団の目撃情報。奴らの所属までは分からなかったが、簡単な特徴だけは分かったようだ。一切の手掛かりもないよりはマシだが、広い神室町で見つけられるかは不安だった。だが一刻も早く見つけなければ、どんな目に遭わされるか分かったものではない

    「由美を連れ去った奴は顔にデカい刀傷がある、出来れば代紋も分かれば良かったんだが……」
    「それだけ分かっただけでも十分だぜ、錦。 急ごう、このままじゃ由美が危ない!」

     時間と場所を打ち合わせ、再び聞き込みを始める二人。その姿を遠くから見つめていた影は桐生が雑踏の中に紛れるのを確認すると、踵を返して去っていった

     吉田バッティングセンター、真島吾朗の縄張りにして憩いの場所。思った様な喧嘩が出来ず、その不満を白球へぶつける。どんなに気持ち良くかっ飛ばしてもイライラは晴れず、真島を見守る部下達は冷や汗をかきながら親である真島を見守っていた

    「顔に刀傷ある奴ぅ、知っとる人居ったら教えてやぁ。 はい、そこの君」
    「えっ!? あ、えっと、恐らく永田組の橘だと思います!」
    「橘は最近金に困ってるらしく、内縁の女に金を無心してるみたいです」
    「ふぅん」

     自分で聞いておいて興味なさそうにしているが、バットを握り締める手の力は強まっている。部下達は素早く察知した、真島はかなり怒っている……それも確実に。それはそうだ、楽しみにしていた喧嘩を邪魔された挙句、最初は応じないと言われた原因を作ったのは橘なのだ。何を言い出すのかと戦々恐々している部下達には目もくれず、淡々と白球をかっ飛ばした真島は小さく呟く

    「橘の阿呆ぉ探せ、今すぐにや」
    「「「へ、へいっ!」」」

     これ以上に怒らせたら恐ろしい目に遭うと理解している部下達は蜘蛛の子を散らす様に慌てて飛び出し、不機嫌にさせた下手人を見つけ出すべく神室町を走り抜ける。一人残された真島はしばらく打ち続けていたが、飽きてしまったのかバッターボックスから出てきた。そして「暇やのう」と呟きながら、喧嘩相手を求めて神室町へ繰り出していく。桐生以上に楽しめる相手はいないが、その辺の雑魚でも殴り飛ばさねば気が済まない
     だが、真島が橘へ手を下すのは筋違いなのは本人も理解している。真島が思う存分喧嘩出来なかったのは橘の所為だが、桐生が人探ししている原因も橘なのだ。桐生にはさっさと用事を片付けて、自分との喧嘩に集中してもらわなければならない。その為ならば手段を選ばないのが、真島吾朗という男だ

     聞き込みの為に再び錦山と別れた桐生は、手当たり次第に声を掛けていた。知らないと立ち去る人間がほとんどだったが、中にはヤンチャな輩が手を出してきて、桐生の手を煩わせる。早く見つけないとと気持ちばかりが焦る中、背中に突き刺さる殺気に素早く振り返った。人波を蹴散らしながら歩いてくるのは、先ほど逃れた筈の真島だ

    「今日はよう会うなぁ、桐生ちゃん?」
    「真島の兄さん、今は喧嘩してる場合じゃないんです。 この次は必ずしますから」
    「見逃してくれ〜って? アマアマやなぁ桐生ちゃん、アマアマやで」

     やはり口で説明して如何にかなる相手ではないかと、拳を握って身構える桐生。普段ならばここで嬉しそうに嗤う真島だが、今回は様子が違う。少しだけ不満げに眉をしかめながら、ぽつりと呟く

    「芝浦埠頭の第三倉庫、奴さんが使うとる場所や」
    「芝浦埠頭の第三倉庫?」
    「行く行かんは勝手や、好きにしぃ。 ほなまたな、桐生ちゃん」

     金属バットを担ぎ直し、背を向けて手を振りながら去る真島。どうやら喧嘩する気はない様だが、桐生は一瞬だけ彼の言葉が理解出来なかった。そしてやっと脳が言葉を反芻し終わると、弾かれた様に神室町を飛び出していく。途中の公衆電話で錦山へメッセージを送り、合流して彼の車へ乗り込む。理由はさっぱり分からないが、真島が由美を攫った連中の根城を教えてくれたのは間違いない筈だ

    「その情報、本当に間違いないんだろうな!?」
    「あの喧嘩好きな真島の兄貴が喧嘩せずに言い残したんだ、裏は取れてる筈だ!」

     錦山は一抹の不安を覚えたが、あの真島がそこまでするならば間違いないかと信じる事にした。そして真島の言葉通り、第三倉庫前に黒塗りの車が止まっているのが見える。確実にあの中に由美がいる、確信した二人はそのまま倉庫内へ突撃し、若衆とは思えない程の大立ち回りを繰り広げてようやく由美を助け出す事が出来た

     今日も退屈だと気怠げに街を練り歩く真島の前に、一人の男が立ち塞がる。虚空を見つめていた瞳に炎が灯り、ギラギラと輝きを増していく。ニタリと不気味に笑う真島に怯む事なく、立ち塞がる男は構えた

    「約束通り喧嘩しにきましたよ、兄さん」
    「探し物は見つかったんか? 桐生ちゃん」
    「ええ、兄さんのお陰です」
    「そっかぁ、じゃあ思い切り喧嘩しよなぁ」

     ドスを抜き放つ真島と、拳を構えて挑み掛かる桐生。下手を打てば命を落としかねない喧嘩に興じる二人は、今日も血潮を滾らせながら眼前の相手だけに全神経を集中させる。世界の誰よりも楽しい喧嘩が出来る相手は、互いに目の前の男しかないという自信があった。この男を倒せるのは自分しかいないという自負も。数年後に待ち受ける事件、そして収監される事実も知らぬまま、男達は命のやり取りを繰り広げた
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