空でもどこでも もし自分の誕生日より特別な日があるとすれば、それは愛する人の誕生日しかないだろう。だってその人がこの世界に生まれてこなければ、付き合い始めた記念日も、プロポーズした日も、結婚記念日だって存在し得ない。記念日の悦びは、祝福する相手がいてこそ成り立つものだ。
マーヴの誕生日は二人で海外で過ごすと決めていた。旅行なんて久々で、計画する時から楽しみは膨らむばかりだった。西海岸より暖かい島に降り立てば、ゆったりと二人だけの時間を過ごし、完璧な休暇と呼べそうな幸せな日々だった。だけど一つだけ、この休暇で思い通りにいかないことが残っている。
「ブラッドリー、僕は君さえいればどこで誕生日を迎えたって幸せだよ」
そう慰めるように言って、マーヴはアームレストにのせた俺の左手に自身の右手を重ねた。
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