ナナシは家計簿を前に渋い顔をしていた。
赤字だ。
どこからどう見ても赤字だ。
R255G0B0ぐらいの、完膚なきまでの赤字だ。
『コーラル おさいふ まっかなの?』
「みたいだなァ……」
まあ、考えてみれば当たり前な話だ。いくら高給取りとはいえ、資産家でもない一般人がHANOI三人を一気に養うなんて、無理がある。しかもコーラルは本社を退職し、例の本を出版したばかりで、印税が入るまではまだ時間がかかる——つまり、収入はほぼゼロに等しかった。
コーラルはどうにかその現状を三人に悟らせまいと努めていたようだが、家計簿を慌てて隠すのをナナシは見逃さなかった。そして家主が寝静まった後、ナナシはそっと起き出し、ついでに夜眠れなくてついてきたクレヨンと一緒に家計簿を見ていたわけである。
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