決まってない(花の名前かな) ───曰く。恋をする乙女ほど、脆く儚いものはないという。
ある日、花を吐いた。
比喩ではない。本当に、口からこぼれ落ちるように花弁を吐いたのだ。
(…………なんで?)
突然の出来事に混乱する。
今まで長い間旅をしてきた。いろんな場所に行って、いろんな人に出会った。それでも、花を吐く人なんて見たことがない。
しかし。熱が出ているだとか身体がだるいと言った症状はない。これなら依頼は受けれるだろう。
早く行かなきゃ、と思いながら身を起こした。
(ダメだ……口からの異物感が……)
剣を振るい、ヒルチャールを薙ぎ払う。時々口を押さえて、溢れ出ていないかを確認する。それでも、呼吸がしづらく頭が痛い。
「……」
瞬間、遠くにいた青い瞳と眼が合った気がした。
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