タイトル未定 誰かに恋愛感情を抱くこと自体、自分には一生――とまではいかなくても、少なくともこの仕事をしているうちは、そこそこ年を重ねるまで――縁のないことだと思っていた。事務所から恋愛禁止と言われているわけではないけれど、自分や自分の仲間が思うアイドル像と恋愛のそれは、真逆といっていいくらい遠く離れていたから。
自分の性格だって、恋愛がしたいと望むタイプではない。いわゆる適齢期を迎えてもひとりなら自分の時間を楽しめばいいし、そういうご縁に恵まれたのであれば、そのときの自分が思う誠実な道を選べばいいだろう。だいいち、人生において恋愛は必修ではないのだから。
だから、まさかこんなに早く、しかもほぼ毎日顔を合わせている相手に〝そういう感情〟を抱いているのを自覚したときは驚いた。一緒にいる時間が多過ぎて自分の脳が誤解している可能性を考えたし、彼のふとした表情にときめくたび、甘い色で塗りたくられた感情を追い払おうと躍起になったものだ。
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