にしむく サムライ本日最後の講義が終わり、廊下へ出ると鮮やかな夕映えが一帯を染め上げていた。
その色の濃さに、すっかり深まった秋を感じる。
窓から差し込む光の強さに目を細めていると、後ろから名を呼ばれた。
振りむけば、夕焼けよりも赤いハチマキをたなびかせた男が立っている。
「今日の講義は終わったのか?」
「うん」
「どうした、ぼーっとして。腹が空いたのか」
「ひどいな。確かにお腹は減ってるけど……」
苦笑しながら、再び窓を見る。正確には、窓の向こうの西日を。
「お前はもうじき、この夕焼けの方、西の果てに行くんだなあと思ってさ」
「西の果てとは……地学の講義も受けた方がいいぞ」
「だって、かの国の人たちは日本を極東の地って呼ぶじゃないか」
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