酔っ払いコウジとキスしちゃったヒロ様の話(コウ←ヒロ)※彼女への言及、名前出てきます。
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「口移しで飲ませて」
ホテルの備え付けの冷蔵庫から冷えたボトルを出し、差し出すととんでもないことを言われた。
「はあ!?あのなコウジ冗談言ってないで……っ」
突然、腕を引かれた
酔っぱらいの遠慮のなさで引き寄せられた俺は、逆らうことも出来ずにベッドに不時着する。
…さっきまでまともに歩くことも出来なかったくせに信じられないくらいの力だ。
「おい!コウジ危ないから……」
「ん……」
再び伸びてきた腕に抱きつかれ、キスされる。
(こ、こいついい加減に〜〜〜〜っっっ)
「……いとちゃん」
(は?)
(こいつ、今、人のファーストキス奪っておいて彼女の名前呼んだ?はあ?)
(ふざけるなよふざけるなよふざけるなよふざけるなよふざけるなよふざけるなよふざけるなよふざけるなよ!!!!!!!!)
ガバッ
先程の握力が嘘みたいに、ふにゃふにゃと力の入ってないコウジの体を投げるようにひっくり返す
ギシリと派手に軋むベッドなどお構い無しに飛び乗るようにその上に跨った。
「ん、ふふ、やだぁ重いよ」
「ちっ……お前が悪いんだよコウジ」
(人の気も知らないで)
力の抜けきったコウジの体をシーツに縫い止めるように押し倒す、勢いに任せないとやり切れなくて噛み付くように唇を重ねた。
コウジの唇は酔いで上がった体温のせいか、酒のせいかかさついていて……さらにはこちらまで悪酔いしそうな程のアルコールの香りがした。
(最悪だ……)
脳裏に蘇るのは、偶然見ることになってしまった彼と彼女の初めてのキス
シチュエーションも二人の関係も泣きそうな程に美しかった。
……それとくらべたら今してるキスは、なんてロマンスもドラマもない無味乾燥で虚しいものなのだろう…
憧れなんて程遠い、酒臭いキス。
それでも俺にとっては長年待ち焦がれたそれだった……
(コウジのバカ……)
唇を離す頃にはコウジはすっかり眠り込んでいて安らかな寝息をたてていた
眠るコウジの口の端に赤いものを発見し、嫌な予感がして自分の唇に触れると切れたのか血が滲んでいる。
(痛い)
どうやらコウジの乾燥した唇で傷ついてしまったらしい、まるで触れたことを罰されたようで笑うしか無かった。
(痛いよ……お前とのキス)
ずっと焦がれたコウジの唇はかさついて痛いし、大嫌いなアルコールの味までして本当に最低最悪だった
ファーストキスなんて夢に見るもんじゃない。
「コウジなんて大嫌いだ」
心にもない文句でも口にしていないと、今にも全てが決壊してしまいそうだった。
END
後日カヅキさんに懺悔とも愚痴とも付かない暴露をするヒロ様がいます
コウジが悪いよ。