血まみれ昼下がり「ここなに?」
「知るか!俺に聞くんじゃねぇよ。」
殴り合いの喧嘩をして、その疲れと相手への不満で食事もとらずに眠った夜。ふと目を覚ましたエッドとトードは自分達の寝そべっていた二つのベッド以外には扉しか見当たらない真っ白な部屋にいた。仲違い中の相手と二人きりで理解しがたい状況に放り出され、お互い不機嫌にやりとりをしていると急に頭の上に何かが落ちてきて始まりかけの言い合いが止まる。
「っんだよこれ!」
「なんだこれ……は?『お互いの嫌いな所を言わないと出られない部屋』?こんなのすぐ出られるだろ。まずエッドは短気ですぐ手が出るし、自分の事しか考えてねぇし、俺にベーコン分けてくれねぇし意味わかんねぇイタズラばっっかするしほんとクソ野郎で嫌い。」
「はぁ?!それ言ったら僕だって、トードすぐ銃撃って僕の事殺そうとしてくるし女にモテるクセにえり好みするしその割に女子更衣室入ろうするし勝手なことばっかしてるから嫌いだよ!」
おおよそ自ずから一緒に暮らしている相手とは思えないほどすらすらと罵倒の言葉が飛び出すトードに怒りを抑える気の無い表情で言い返すエッド。彼が口をつぐんだ瞬間に扉の鍵がこれ見よがしに大きな音を立てて開いたが、そんな事はもう既にどうでもよくなっていた二人は寝具から立ち上がって掴みあっていた。
「ふっざけんじゃねぇぞ、お前俺の事そんな目でみてたのかよ?!ちょっと殴らせろ!」
「こっちのセリフだわクソ野郎!もう二度と女が寄りつかない顔にしてやるよ!」
その言葉を皮切りに二人は言葉での交戦をやめ、拳で内情を語り合う。手に込められた感情はどこまでも相手への不満が込められており、部屋から出る頃には太陽はすっかり天の中心に浮かび上がっていた。