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    osashimiol85

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    osashimiol85

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    泳ぎが下手な仔かっぱの一郎くんと面倒見が良い美人魚の左馬刻さんの少し嚙み合わないキャッキャウフフなおねショタスイミングスクール

    イチサマーメイド無配「まじかよ。最悪。鱗剥げたじゃねぇか」
    「わ!めっちゃ痛そう……」
    黒髪の少年は、美しい銀色の鱗に覆われたヒレをそっとのぞき込む。
    鱗がはげたのは一枚だけのようだが、はげたところの地肌?が剝き出しになってとても痛そうである。
    「そんな痛かねぇわ。海の中だとすぐ再生すんだけど、ここ川だしな。塩分が足りねえのかも」
    「この薬塗る?カッパの塗り薬。俺は試したことないけど、隣ん家の坂本のじいちゃんは若い頃人間に鎌で腕切られたときこの薬塗ったら切られた腕くっついたって。とれた鱗もくっつくかも」
    少年は肩にかけたポシェットをガサゴソ言わせながら軟膏を取り出した。
    「ヒトデみてぇな爺さんだなそいつ」
    「ヒトデ?」
    「あいつらは薬塗らなくても勝手に再生するけどな。なぁこれ変な匂いするけど本当に大丈夫か?」
    「大丈夫、大丈夫。俺、よく怪我するけどこれ塗ったら次の日にはよくなってるから」
    「ふーん」
    「取れた鱗くっつけとく?」
    「いや、いいわ」

    ヒレを持つ美しい青年は薬を塗った自分のケガの状態を確認すると、同じく岩に腰かけていた黒髪の少年の顔をちらっと見やった。
    少年はしょんぼりしている。なんせ、自分の不注意で青年に怪我をさせてしまったのだ。青年的には鱗の1枚2枚剥げたって別に死ぬわけじゃないから大して気にしていない。まぁ強いて言うなら鱗は昨日手入れしたばかりだったので思わずヒレの鱗が剥がれた時は悪態をついてしまったのだが……

    青年はしょんぼりしている少年の顔に立派なヒレで水をかけた。
    「わぶっ。なに??」
    少年が頭を振って水を飛ばしていると、目の前に先ほどの剥げてしまった鱗が差し出された。
    「おら、これやるよ」
    「え!いいの?」
    「おー」
    手渡された鱗は、太陽の光に当てるときらきらと虹色に輝き、金平糖の包み紙みたいだと一郎は思った。

     
    「で?水搔きついてるってことは、お前人間じゃないんだろ」
    一郎が貰った鱗を日の光にあててうっとりと眺めていると、ヒレの青年はしびれを切らし質問する。
    そうだった、俺としたことが命の恩人にまだ名前も名乗っていなかった。
    「俺は一郎!カッパの一郎」
    「はっぱ?」
    「葉っぱじゃない!カッパ!」
    「はっぱだが、菜っ葉だか知らねぇがなんで水掻きついてる生き物が溺れてんだよ。その水掻きは飾りか?まだうまく泳げねえんなら、こんな人気のない河口で泳ぐんじゃねえわ」
     

    そう。一郎は溺れていたのである。河童なのに。河のわらべと書いて河童なのに。

    一郎は同世代の河童の子供たちと比べて泳ぎが下手であった。
    また、泳ぎの上手さに関係するのかは分からないが他の河童たちに当たり前にくっついている頭の上のお皿も一郎にはない。
    正確にはお皿を一郎も持っているのだが、頭にくっついていないので普段は家にしまい込んでいる。くっつかない皿を頭に乗せて割ったり落としたりしては大変だ。だって一応、それ河童の急所だし。そのため、彼の頭は全て艶々とした黒髪で覆われている。
    何だかとても河童みが薄い一郎ではあったが、相撲は誰よりも強かった。
    相撲が強いということは、泳ぎの得手不得手や頭の上に皿があるかどうかよりも河童たちにとってはよっぽど大切なことなのだ。
    なので、一郎は特に他の河童から不遇な扱いを受けることもなくのびのびとこの山で暮らすことができた。
     
    しかし、やはり腐っても河童。「かっぱの川流れ」ということわざがあるくらい“普通は”泳ぎが上手いものである。一郎のように川で流されることはない。
    だから、一郎は時々こうして誰も来ない河口まで下りてきてこっそり泳ぎの練習をしていた。
    そして今日は溺れた。
    溺れているところを青年に助けて貰っている最中に一郎があまりにも激しく手足をバタつかせていたのでうっかり青年のヒレをひっかいてしまったようだ。

     そういえばこの青年はどこから来たのだろう?初めてみる風貌をしている。
    身体は人間のようだが、下半身には足ではなく立派なヒレがついている。寺の池に住んでいる人面魚を思い出す。でもあれはどちらかというと魚が本体で人間の顔がついている。だからこの青年とは、ちょっと、いやだいぶ違う気がする。


    「まあこの辺は川と海の水が混じってるところがあるからな。大方深く潜りすぎて、海水の層に行っちまったんだろ。川の連中は、海水に身体が慣れてねえから体がびっくりしちまったんじゃねえの」

    ヒレの青年に言い返すことなく考え事をしていると、一郎がまだ落ち込んでいるのだと勘違いした青年が気まずそうにヒレで水面をパチャパチャさせながら言う。

    そういえば、と一郎は思い出す。
    確かに、少し深く潜ったあたりで急に体が苦しくなった。川で泳いでいたと思ったのにいつの間にか海水の部分があったなんで不思議だ。

    「あんた色々知っててもの知りなんだな」
    一郎が感心した顔でヒレの青年を見上げると、青年の整った顔が得意げになった。
    「あんたじゃなくて、左馬刻さんな」
    「サマトキサン・・・左馬刻さんは、なんの妖怪なの?この辺の川にはいないよね?」
    「妖怪・・・?俺様は人魚だ」
    「きんぎょ?」

    一郎は、村の祭りの屋台を思い出した。
    村の子供たちにまぎれてこっそりみた屋台の中には「金魚すくい」という店があった。なるほど、確かに左馬刻のこの煌びやかな鱗や絹のようなヒレは確かに金魚のもののようだ。
    「ふーん、左馬刻さんは金魚の妖怪なんだ。ヒレすごく綺麗だもんな」

    左馬刻のキラキラヒラヒラしたヒレを、一郎は目で追いながら良いことを思いつく。
    「なあ、左馬刻さん。俺に泳ぎを教えてくれないか?」
    「はあ?面倒だわ。なんで俺様が」
    「河童の塗り薬の作り方を教えるからお願い!左馬刻さんは、ヒトデ?じゃないからもし今後腕切られちゃったら再生しないだろ?作り方覚えておいても損はしないと思うぜ」

    なあなあと、お願いする河童の子を見ながら左馬刻は考える。薬の作り方を教えてもらったとて材料は山の中のものだろう。左馬刻は陸に上がれない。材料すら集められないのだから、あまり実用的ではない気がする。それよりも左馬刻は水搔きを持っているにもかかわらず愚鈍に溺れるこの少年のほうが気になり始めた。

    「教えてやるとしてもよう。俺様は尾ヒレ。お前は足だろ?俺様に泳ぎを習って意味あんのか?」
    「なんか俺、かっぱの泳ぎ方あわないのかも」
    一郎は自分の水搔きのついた足をつまんでみせる。
    「みんなに教わったやり方で泳ぐと俺水の中に沈んじゃうんだよ。ちょっと見ててね」
    一郎は、腰かけていた岩から水中にポチャンと降りると綺麗なフォームで平泳ぎを始めた。
     
    ひと搔き、ふた搔き、み搔き・・・・
    おー、なんだ全然綺麗に泳げてんじゃねえか、と左馬刻は眺めながらふと違和感をもつ。確かに綺麗なフォームなのだが、一郎は全く前に進んでいない。ひと搔きごとに、ちょっとずつ水中に沈んでいっているではないか。
    ・・・そして、一郎は完全に水の中に沈んでいった。
    「おいおいおいおいおい!!!!」
    左馬刻は慌てて水中に潜るとヒレの一蹴りで、水底に沈んでしまった一郎に追いつきそのまま彼を掴んで水面に上がった。
    「ぷはっ!な?俺の泳ぎ方なんか変だろ?」
    「ドヤ顔すんじゃねえわ。泳ぐどころか沈んでんじゃねえか!」
    左馬刻はなぜか誇らしげな顔になった一郎の頭をヒレではたく。
    「水の中でも息はもつけど、水中で息ができるわけじゃないからしばらくすると普通に苦しい」
    「俺様、水の中でも息できるからその苦しさはよくわかんねえけどよ」

    一郎の腕をひっぱり岩辺に手をつかせると、左馬刻は彼の後ろに回り込んだ。
    「足に水掻きがついてるってことは、蹴りだしたときにこの水搔きが抵抗になって前に進むんだろ?」
    左馬刻は一郎の足首を掴んで水平に押し出し引き付けのサポートをしてやる。
    「わっwひゃwひゃwww左馬刻さん、足くすぐったいwwwww」
    くすぐったさに身を捩って逃げようとする一郎の足首を左馬刻はしばらく掴んでは押し出していたが、全然練習にならないので最後の方は普通に足裏をくすぐってやった。
     
    「もッッもう左馬刻さんっっ!!!」
    顔を真っ赤にして息を切らしている一郎を見やりながらそういえばと左馬刻が質問する。
    「お前こんなに泳ぎ下手で仲間連中と一緒に暮らせんのかよ」
    「みんなと泳ぐときは、こうやって泳いでる」
    一郎は岩についていた手を離すと、手を使ってばしゃばしゃと水を搔き始めた。
    いわゆる犬掻きである。そしてとても速い。モーターボートぐらい水しぶきもうるさいが。
    「もう、お前その泳ぎ方で良いじゃねえか。十分早いし」
    ばしゃばしゃかかってくる水に顔をしかめながら左馬刻が感想を述べる。
    「やだやだ。俺もみんなみたいに静かに泳ぎたい!左馬刻さんみたいに優雅に水の中を泳ぎたい!」

    やだやだと駄々を捏ねる一郎に、こんなに喧しく泳いだんじゃ魚も逃げてしまい毎日の食事に不便しているかもしれないと左馬刻は一郎が不憫に思えてきた。泳ぎが下手ということは、もしかしたら親がいなくて教えてもらえていないのかもしれない。自分で食い扶持をもってこれない生き物を行く先は飢えによる死である。一郎の鈍くささに、左馬刻のお世話欲がむくむくと刺激されてきた。
    ちなみに、一郎は他の河童たちよりも力が強かったので仲間が水面まで追い立てた魚を上からバシバシ手で叩いて狩っていた。なので、食事に不便したことはあまりないし村の河童と協力したピースフルな日常を送っている。
    もちろん、左馬刻はそんなことを知る由もないのだが。

    「しょうがないでちゅねえ。どんくせえカッパの一郎くんに、この俺様が泳ぎを教えて立派なカッパの雄にしてやんよ」
    左馬刻は自分の尾びれで一郎の頬をペチペチと叩きながら高らかに宣言した。
     
    こうして、泳ぎが下手な仔河童と面倒見が良い人魚の少し嚙み合わないキャッキャウフフなスイミングスクールが開幕したのである。

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