7月のお題 海 県境の長いトンネルを抜けると、視界いっぱいに海が広がった。照りつける太陽は南国を思わせる強さだが、空調の効いた車内は快適だ。
「うわぁ、眩しい」
「運転気いつけや」
赤信号で停車した所で、ヴァッシュは車のサンシェードを下ろし強い日差しを遮る。刺す様な太陽の光は幾分和らいだ。
海岸沿いの道をしばらく走り続けると、今の時期には予約も取れないほど人気のホテルに到着した。
車がホテルのエントランス前に到着するやいなや、すぐにバレーサービスのスタッフがやってくる。
「お車はこちらでお預かりいたしますので、必要なお荷物だけお取り下さいませ」
丁寧な口調でそう言うと、スタッフは鍵を受け取りヴァッシュ達の車を預かり駐車場へと運んだ。ふたりともこんなサービスを受けるのは初めてで、荷物を手にしたまま思わず顔を見合わせる。
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