事の始まりは声をかけられたことだった。
「あの、私こういうものでして」
何かの勧誘かと思い適当に済ませようとしたが、渡された名刺を見て目を見開く。
「プロレス?」
プロレスラーの勧誘だったのだ。
「はい! 是非一度リングの上で闘ってみませんか!」
そんなわけで俺はプロレスの世界に飛び込んだ。・・・いや嘘です。普通に働きたくなかった。圧が強すぎて断れませんでした。俺が所属している団体はそこそこ歴史のある中堅どころだ。規模もそれなりに大きく、トップレスラーになるとテレビにも映るくらい有名になるらしい。だがそんなことはどうでもよかった。練習はきつかったけどなんとか付いていけたし、何より先輩たちが優しかった。
「お前よく頑張ってんな」
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