ハートの行方(どうしよう……)
月島の手の中には、きれいにラッピングされた小箱がある。
どう見ても手作りの、明らかに本命のそれは、大した重さはないはずなのに月島にはとても重く感じられた。
鯉登と帰る途中、忘れ物を取りに戻った放課後の教室。
同じクラスの女子が鯉登の机にチョコを入れているのを、月島は偶然見てしまった。
女子が足早に去っていった後、教室に入った月島は真っ直ぐに鯉登の机に向かった。
そして鯉登が誰かのモノになって欲しくないと、衝動的に机から小箱を抜き取ってしまったのだ。
ゴミ箱に捨てる訳にはいかず、かといってぺたんこの学生カバンには収まりそうにもない。
元に戻すのが一番いいと分かってはいるものの、月島の体は石になったように動かなかった。
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