お稲荷さん 部屋から漏れてくる元気な泣き声を認め、慎寿郎と杏寿郎は襖を開けた。
部屋の中央に敷かれた布団の上、横たわる瑠火が二人の姿を認めて微笑を浮かべる。
その胸元では金色の髪の赤子が元気に泣いていた。母子共に大事ない様子に、慎寿郎はほっと胸を撫で下ろす。
「おめでとうございます。男の子ですよ。」
ねずみ頭の産婆が言う。言われなくても、それは赤子を見ればすぐ分かった。この金色の髪は稲荷神の男児のみが持つものだ。成長すれば慎寿郎と同じく毛先に朱が混じるようになる。
稲荷神は人間の女との間に子を設ける。産まれてくるのはほとんど男児で、女児が生まれてくる事は稀だった。そして、男児は全て父神に似た稲荷神となり、女児は全て母と同じ人間として産まれてくる。女児の容姿に父を感じる事はあるが、金と朱の髪だけは女児に現れる事はなかった。
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