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    TANA_Wgashi

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    TANA_Wgashi

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    千寿郎君の守護霊は煉獄さんの生霊だったら良いな。
    形にしたいけどまとまらないメモ1
    気持ちは杏千

    守護霊兄上「貴方の守護霊はお兄さんね。とても強い霊だわ。」
     告げる占い師は、ぬばたまの黒髪に漆黒の羽をあしらった衣装を身にまとい、さながら鴉。
     紫のサテンで装飾を施されたブース。
     目の前に置かれた大きな水晶玉。
     全身漆黒の出立ちで静かに占いの結果を告げる様は、それを人に信じさせる風格があった。
     背後で一緒に占いの結果を聞く友人達ががっかりした顔をするなか、占いの当事者である千寿郎の顔は強張っていた。顔は青白く、唇も小さく震えている。
    「貴方の将来だけど…ちょっと、大丈夫?」
     占い師の問いかけに、上の空で「大丈夫です。」と答える。ならばと続けられた占い結果は全く頭に入ってこない。
     先程告げられた言葉がぐるぐると千寿郎の頭を支配していた。
     自分の守護霊は兄。守護霊。霊とは死者の魂である。
    (兄上…。)
     脳裏に兄、杏寿郎の顔が浮かんでは消え、浮かんでは消え、何も考えることが出来なかった。


     千寿郎の兄は、杏寿郎という。
     千寿郎の通うキメツ学園は中高一貫校で、杏寿郎は高等部の教師だった。
     杏寿郎は、常に明るく優しい上に顔立ちも整っているとあってキメツ学園の人気教師だ。その人気は、担当外の中等部にまで及んでいた。
     そんな杏寿郎は弟の千寿郎をそれはそれは可愛がってくれるので、千寿郎も兄のことが大好きだった。中学生にして「兄上が大好き」と公言して憚らない、超が付くレベルのブラコンである。
     そんな千寿郎は、昨日から修学旅行に来ていた。日程は2泊3日、行き先は定番の奈良・京都である。今回の旅行は班ごとに分かれての自由散策で、生徒達は2ヶ月ほど前から班ごとに散策計画を練ってきた。
     なお、占いは女子の希望だ。2日目の日程に捩じ込まれた。

     修学旅行出発日の早朝4時、空がまだ藍色に染まり肌寒さすら感じる頃に、千寿郎は兄の運転する車で集合場所のキメツ学園に来た。杏寿郎の出勤時間よりかなり早いが、兄は嫌な顔1つせず、むしろ率先して千寿郎を車で学校まで送ってくれた。
    「行ってきます、兄上!」
    「うむ!!楽しんできなさい!!くれぐれも気を付けてな!!」
    「はい!」
     そう言って太陽の様な眩しい笑顔を浮かべる兄に見送られ、千寿郎が観光バスに乗り込んだのがつい昨日の話。
     杏寿郎はバスが辻を曲がって見えなくなるまで見送り、千寿郎もまた兄の姿が見えなくなるまで窓から大きく手を振った。「ドラマとかでこういうの見たことある。」とは友人の言だ。

     占い師の言う通り、確かに千寿郎には兄がいる。
     そして、その元気過ぎる姿を多くのクラスメイトが目にしていた。

     さらにいえば、千寿郎は昨晩、宿で杏寿郎と電話もしている。
     奈良で鹿煎餅を買い、鹿に囲まれた事を話すと「鹿に噛まれていないか?ツノで怪我は?」と酷く心配された。鹿に噛まれて流血していると思い込んでいる兄が可笑しくて、声を聞けたことが嬉しくて、ずいぶん長電話してしまった。見回りの教師にスマホ使用がバレるといけないので、押入れに籠って電話したのだ。
     同室の者達は、押入れから漏れ聞こえる甘えた声に「それ、彼女とかとやる事じゃね?」と思ったものの、言及はしなかった。触らぬ神に祟りなしである。

     とにかく、つい昨晩まで杏寿郎は存命していた。故に千寿郎の占い結果を聞くクラスメイトの心の声を代弁するならば「なんだ、この占い師ニセモノかよ。」といったところなのだ。
     守護霊のイメージといえば、先祖の霊、又は数年前に亡くなった家族の霊が悪いものから護ってくれる…といったところ。
     昨日満面の笑みと早朝の校庭に轟く声量で弟を見送っていた人がこの1日程度で急死し、弟の守護霊として背後にいるなどとても信じられない。占いを偽物と判断するのも当然だった。





    「あーあ、占いじゃなくて抹茶パフェとかにすればよかったー。」
     気がつくと、千寿郎は占いの場を離れて班メンバーと共に路地を歩いていた。頭はぼんやりと霞かかってしまい、占いから今に至るまでの経緯が全く思い出せない。
    「…あいつが行きたいって行ったのになぁ。」
    「ちょっと、聞こえてるんですけどー!」
     班のメンバーは偽物占い師に落胆し、女子と男子の間できゃいきゃいと小競り合いが起きている。皆、占いというものを心の底から信じていたわけではないが、「本当かもしれない」というワクワク感が台無しになったがっかり感はひとしおである。
     そんな中、ぼんやしとした千寿郎の頭を占めるのは兄の事ばかり。
     他の子と同じように「兄?死んでないよ?この人偽物じゃん。」と占いの結果を受け流すことができない。「杏寿郎が死んだ」という妄想に押し潰されてしまいそうだった。正直、泣きたいほど苦しい。
     ふらふらと後をついてくる千寿郎を心配して班メンバーが声を掛けてくるが、膜の向こうで話しかけられているような感覚だった。
    (兄上…。)
     千寿郎が送ったLINEに未だ既読の付かないことも、不安を増長させる。
     送ったメッセージは今朝のもの。杏寿郎がいくら仕事とはいえ、昼は過ぎているのだから既読くらい付くだろう。
    (屋上でよろけて下に落ちたのかも。出勤中の交通事故で大怪我をしたとか。階段を踏み外して首の骨が折れたのかも…。)
     事故はともかく、屋上など基本的に人の出入りはないし、運動神経が抜群に良い杏寿郎が階段を踏み外すなど考えにくい。
     クラスメイトが聞いたら失笑ものの妄想だが、千寿郎は真剣だった。なにせ、棺に納まる杏寿郎の姿までリアルに想像できる。
     白装束と、それに合う青白い顔、包帯に覆われた左目は潰れてしまっている。装束で見えないはずの腹には、大きな傷があるのだ。死因は腹の傷。何か刺さったことによるものか。爆発事故に巻き込まれ、パイプか何かが刺さったのかもしれない…。

     妄想がそこに至ると、千寿郎は取り憑かれたようにスマホを操作しはじめた。爆発事故ならば、報道なり投稿なりがされているはずだ。しかし、地元でのニュースは全く見当たらなかった。両親からの着信もない。
     それに安堵した千寿郎だが、すぐに「戻れない自分を気遣って、連絡をしないようにしているのでは?」という考えに至り、また激しい不安に襲われる。
     千寿郎に残る僅かな理性が家族への電話確認を思いとどまらせていた。「千寿郎、実は…。」と、本当に兄の訃報を聞くことになる可能性が恐ろしいというのも、ある。
    「おい煉獄…。スマホ没収されるぞ?」
     友人の言葉も、くいくいと引っ張られる感覚も、自分のことではない様に感じる。

     今回の修学旅行は班別行動のため、個人で携帯電話を持つ許可が出ていた。散策中は基本的に使わない、就寝時間を過ぎたらスマホで遊ばない。これを守らない場合、教師が目撃した時点で問答無用で没収の条件付きだ。とはいえ子供を狙う犯罪が多い昨今、散策時に携帯電話を取り上げることはせず、宿に戻ったら没収されることになるだろうとは杏寿郎の見解だった。
     人気スポットや主要駅などに教師が巡回し、安全確保のために生徒の姿を確認することになっており、逆に言えば、駅や観光スポットさえ注意すれば遊んでいてもバレはしない。しかしキメツ学園の生徒は真面目で、言いつけを守る生徒がほとんどであった。
     いくら千寿郎が検索しても、地元の事件事故のニュースや投稿は出てこない。安心したいのに「まだ起きたばかりで投稿されてないのかも。」とか「誰も気付かないところで倒れているのかも。」という妄想が不安を煽るばかり。思考の深みにハマった千寿郎は、必死に自分を呼ぶ声に気付けなかった。

     煉獄!煉獄君!煉獄ってば。
    「煉獄。」
     どこか遠くから聞こえる班メンバーの声。そこへ急に成人男性の声が加わり、更にがしっと肩を掴まれたことで千寿郎は我に返る。
     皆が気まずそうに千寿郎を見ている。千寿郎が左肩に乗る手を辿ると、吸い込まれそうな深い色合いの瞳と視線が絡んだ。
    「と…富岡先生…。」
     体育教師、冨岡義勇。昨今の風潮など知らぬと、竹刀を振りまわして生徒指導を行う、保護者の苦情も教育委員会の存在も気にしないちょっとマズいスパルタ教師である。
     修学旅行の付き添いである今は流石に竹刀を持っていないが、生徒から「鬼」と恐れられる静かな威圧感は学校の時と変わらない。
     凪いだ目で見下ろされる圧力はなかなかのものがあった。
    「スマートフォンの利用について、知っているな?」
    「はい…。」
    「知っているなら、何故使った。」
     さすがに「兄が事故に巻き込まれたかもしれないので。」と、妄想からくる理由を話すことはできない。千寿郎は「ゲームがイベント中で、気になって見てしまいました。すいません。」と適当な理由を述べて平謝りした。冨岡の眉がピクリと跳ね上がり、千寿郎の感じる威圧感が増す。
    「理由は。」
    「…ゲームです。」
    「何故だ。」
    「…ごめんなさい。」
     品行方正な千寿郎の、スマホゲーム発言に納得できないらしい。千寿郎は下を向いて冨岡の圧を避ける。頭頂部に刺さるような圧を感じたが、何とか耐えた。
    「…スマホは即刻没収だ。班員からはぐれないようにしろ。」
    「はい…。」
     ぬっと出された手に、千寿郎はスマホを乗せる。
     厳しい冨岡に「散策中は勘弁しておこう」という選択肢は存在しない。杏寿郎と撮った写真データもたくさん入っているスマホを渡すことは、兄との繋がりを奪われているような気持ちになる。
     胸の内にじわじわと絶望感が広がり、徐々にぼやけてしまう視界を千寿郎はなんとか押し留めた。そんな千寿郎に冨岡がギョッとする。
    「旅行が終われば返す。煉獄に言ったりしないから安心しろ。」
     どこか慌てたように冨岡が言う今の「煉獄」は千寿郎でなく、兄の杏寿郎の事だ。千寿郎が規則違反を兄に知られると悲観しているのだと誤解する冨岡を訂正する気力もなく、千寿郎は力なく頷いた。
     冨岡が立ち去ったのち、慰めてくれるクラスメイト達に千寿郎は上の空で答える。
    (兄上に会いたい…。) 
     杏寿郎に会って安心したい。名前を呼んで抱きしめて欲しい。
     もし本当に、本当に亡くなってしまったのなら尚更早く会いたい。葬儀までわずかな時間しか残されていないのだ。少しでも長く一緒にいたい。
     周囲が聞いたら思い込みの激しさを笑い飛ばしてくれそうなものだが、あいにくと千寿郎は内向型寄りの子供だった。
     そして今回の場合では悪いことに、千寿郎は行動力がある子供だった。
    (帰らなきゃ。兄上に会いに行かなきゃ。)
     千寿郎は脳内で急ぎ帰宅計画を練り上げた。




     生徒はとうに下校し、教師も半数以上帰宅した職員室にガサゴソバタン!と物音が響く。
     音の主は杏寿郎だった。いつも元気に溢れて暑苦しいくせに意外と落ち着いている彼が、焦った様に帰宅の荷造りをしている。
    「どうした煉獄。何か慌ててやがるんだァ?」
     通勤バッグにポイポイと荷物を放り込む杏寿郎に不死川が話しかけた。
     そこらじゅうに体をぶつけ、卓上のファイルをバサバサと落とし、ロッカーにネクタイを挟んでいる杏寿郎は異様である。
    「うむ!今日は携帯を家に忘れてな!そろそろ千寿郎から電話が来てしまう!」
    「だから早く帰らねば!」と言う杏寿郎に生真面目な不死川は呆れた。
    「宿はスマホ禁止だろォが。教師が決まり事破らせてんじゃねェぞ。」
    「勿論だ!短時間で済ませている!」
    「そういう問題じゃねェよ!」
    「仕方ないだろう!声くらい聞きたいんだ!」
    「仕方なくねェ!こういう時くらい弟離れしやがれ!」
    「無理だな!第一君にだけは言われたくない!」
    「あンだとぉ?!」
     地声が大きい杏寿郎に釣られ、不死川の声も大きくなる。ぎゃいぎゃいとやかましい2人の間に、職員室に残っていた宇髄、悲鳴嶼、胡蝶が入った。身長2m級の2人に強制的に視界を遮られ、2人の口論が一瞬途切れる。その気を逃さず「やかましいんだよブラコン共。」と宇髄が言い放った。
    「てめっ…!」
    「不死川君たら、そんなに大きな声出さないの〜。」
    「……チッ。」
     女子供には優しい不死川。ブラコン呼ばわりした宇髄に食ってかかろうとして、胡蝶の手前、反論を飲み込む。
     不死川に言わせれば「品行方正な千寿郎を構う煉獄は正真正銘ブラコンだが、危なっかしい玄弥が気に掛かるのは仕方ない」のだ。
     不死川は自覚のないブラコンだった。

     ちょうど双方黙った時を見計らったかの様に、卓上の電話が鳴る。電話機の近くにいた杏寿郎が応対すした。
    「はい!キメツ学園です!うむ、冨岡か!」
     時間は夜8時を回った頃。こんな時間に来る電話などロクなものではない。杏寿郎もやけに真剣に耳を傾けている。修学旅行先で生徒が怪我でもしたのかと適当な見当をつけ、一同聞き耳を立てる。
    「………うむ!そうか!千寿郎がな!行方不明か!」
     そう叫ぶや否や、杏寿郎は受話器を持ったまま崩れ落ちた。
    「………煉獄?!」
    「おい?!しっかりしろ!!」
     とっさに悲鳴嶼が抱きとめたため、杏寿郎に怪我はない。しかし、顔色が明らかに白かった。呼吸も弱い。普段元気に満ち溢れた姿ばかり目にしているせいか、相当具合が悪そうに見える。
     杏寿郎は貧血を起こすタマではない。急ぎ救急車を呼ぼうとした不死川を、胡蝶がやんわりと留めた。
    「大丈夫よ不死川君。…煉獄君は弟さんの所に行ったのねぇ。」
     うふふと笑いながらのんびりと胡蝶が言う。同僚が顔面蒼白で失神したというのに、心配する様子はない。不気味である。
    (おいおいどうした胡蝶、大丈夫かよ…?)
     困惑も顕な2人の視線を受け、胡蝶は続ける。
    「千寿郎君にはね、煉獄君の生霊が憑いてるのよ!」
    『…いきりょう?』
     胡蝶の言葉に、宇髄と不死川の声が重なる。
    「そう。生きている人の霊というか、強い思いみたいなモノね。」
    『……はぁ。』
     宇髄と不死川は何とも言えない表情で、間抜けな返事をする。どう反応したものか分からない。確かに、胡蝶カナエに霊能力的な力があるという噂は聞いている。しかし噂は学生の間のものだし、幽鬼の類を目にしたこともない。そんな2人の内心を知ってか知らずか、胡蝶は解説を続けた。

     曰く、生霊とは生者の生命エネルギーの塊で、ある程度意志を持ったものである。千寿郎には兄の生霊が取り憑いて弟を護っている。帯刀して詰襟様の服を着た姿で、本人より幾分凛々しく見えるらしい。
     生霊は本体から離れるほど力が弱まる。今回は、遠く離れた京都で千寿郎に行方不明の危機が起きてしまった。よって生霊の方を強化するために生気の比重を傾け過ぎ、本体が倒れたと考えられる。生霊と杏寿郎の距離、つまり千寿郎が無事戻って来れば、自然と本体に生気が戻って目を覚ますだろう…とのことだった。

    「千寿郎君は心配ないわね。煉獄君が一緒にいるのと変わらないもの。」
    「……よく分からねぇんだけどよ…。」
    「安心しろ、俺もだ。」
     自信満々に語る胡蝶に聞こえぬよう、宇髄と不死川はコソコソ言葉を交わす。
     突然の荒唐無稽な解説に、色々と整理がつかない。「急に霊とか言われてもさぁ…。」という心境である。
     一方悲鳴嶼はすんなりと胡蝶の解説を受け入れた様子だった。「生命に問題がないなら、煉獄はソファに寝かせておこう…。」と職員室の応接ソファに、見るからに大丈夫ではない煉獄を抱えていく。胡蝶には悪いが、悲鳴嶼が受け入れると「そういうものか。」と思える安心感があった。しかし、それでも煉獄の顔色の悪さは気にかかる。
    「なぁ胡蝶、煉獄は救急車くらい呼んだほうがいいんじゃないか?派手に顔色悪いぜ。」
    「普通なら亡くなってるくらい生命力が抜け出てるもの。煉獄君でなきゃとっくに亡くなってるわ。」
    「とりあえず、不死川は冨岡に詳細を聞いてまとめてくれるか。宇髄は学長への報告を頼んだ。」
    「私は家族に連絡とりますね。」
     恐ろしいことをなんでもないことのようにサラッと流された上に仕事を割り振られ、宇髄と不死川はすごすごと仕事にあたる。
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