Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    OH_msc

    @OH_msc

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 2

    OH_msc

    ☆quiet follow

    5.4メインクエ後のヒカセンとリセのこばなし
    ゼノ光だけどゼノスは出てこない

    #ff14
    #ゼノ光
    xenophotaxis

    何もかも、すっかり燃えてしまった。空中庭園に足を踏み入れた冒険者は、改めてその事実を再認した。
    「リセ。下で話し合いするってさ」
    「え? ああ――ごめん、すぐ行くね」
     すぐ行く、と口にしながらも、リセは冒険者に背を向けたまま動かない。きっと焼け焦げて乾いた土の一画を見つめているのだろうと、冒険者は思った。そしてその目に映るのは死した土壌ではなく、つい先ほど前までそこに広がっていた、一面の花々なのだろうとも。
    「あんなに綺麗な花畑だったのに――ゼノスも、ファダニエルも、なんとも思わないのかな」
     リセが自分を見ていないことに冒険者はひどく安堵した。どうしてだか今ばかりは、あのまっすぐな視線を受け止められそうになかったのだ。
    「花だけじゃない。人の命を、世界を、全部めちゃくちゃにしたいだなんて、そんなのおかしいよ」
     リセは冒険者の沈黙を同意として受け止めたらしかった。切り立った渓谷の上に建てられたここアラミゴ王宮からは、ギラバニア湖畔地帯が遙々見渡せる。夜闇の中まばらに広がる灯は、そこにある人々の営み一つ一つを思わせた。
     冒険者は多くを見た。うつくしいものも、奇妙なものも、ときには汚濁と呼ばれるものさえもが彼女のこころを震わせた。同時に、多くを見れば見る程に、未だ全てを見てはいないのだと、この世界にある未知の限りないことに驚かされる。それをこの手で、足で、五感の全てで既知なるものへと塗り替えたいとも。だからこそ既知のすべて、未知のすべて、世界のすべてには価値があるのだと、今なら胸を張って言うことができる。
     けれど同時に、そのすべてを忘却する瞬間を知っている。手が、足が、五感の全てがただ一つの生命を食い破るためだけに収斂していく感覚を知っている。それはひとつひとつ大切な持ち物を捨てながら走るようなもので、だから最後に残ったひとつが自分の、世界のすべてになってしまうのだ。まあ、まだそれだけならよかったのだが。悪いことに――本当に悪いことに、交えた干戈から伝わる熱がまるで同じものだから、何よりもその熱こそが自分という存在なのだとどうしてだか確信してしまうのだった。
     記憶をいくら辿れども、あのとき、あの場にあったはずの花々が何色だったか、どれほどのものだったか、冒険者は思い出せない。目に入ってすらいなかったのだから当然だ。あの熱に耽る内切り捨てた全ての中にそれはある。踏み躙ったかどうかこそ記憶にないが、その実際が何の意味を持つものか。
     価値の否定。価値の忘却。果たしてその二つに違いはあるのか、冒険者にはわからなかった。
    「また、花を植えようと思うんだ」
     リセは語る。
    「エオルゼア――ううん、東方のみんなにも協力してもらってたくさんの種を集めるんだ。また綺麗な庭園になったら民間にも開放して、みんなが楽しめる場所にする」
     振り向いた彼女はいつも通り、力強く笑んでいた。その瞳はやはりまっすぐに冒険者を射貫いたが、それだけだった。海の温もりを思わせる深い青。それは柔らかに包み込むだけで、決して人のこころを曝くことも、晒すこともしない。
    「リセ。何か、忘れてるんじゃないか」
    「え?」
    「ここに、世界を股にかける冒険者がいるんだけど」
     リセはぽかんと口を開けて、それからまたけたけたと笑った。
    「お願い。世界中の種を集めて、ここに持ってきて。全部、無価値なんかじゃないって、私に証明させて!」
    「任せて。誰も見たことがないようなのを持ってくるから」
    「人喰い花とかは、やめてね」
     さてどうしようかと、冒険者は沈黙を返すのだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    🙏💖🙏❤❤❤❤❤💙
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    OH_msc

    SPOILER5.4メインクエ後のヒカセンとリセのこばなし
    ゼノ光だけどゼノスは出てこない
    何もかも、すっかり燃えてしまった。空中庭園に足を踏み入れた冒険者は、改めてその事実を再認した。
    「リセ。下で話し合いするってさ」
    「え? ああ――ごめん、すぐ行くね」
     すぐ行く、と口にしながらも、リセは冒険者に背を向けたまま動かない。きっと焼け焦げて乾いた土の一画を見つめているのだろうと、冒険者は思った。そしてその目に映るのは死した土壌ではなく、つい先ほど前までそこに広がっていた、一面の花々なのだろうとも。
    「あんなに綺麗な花畑だったのに――ゼノスも、ファダニエルも、なんとも思わないのかな」
     リセが自分を見ていないことに冒険者はひどく安堵した。どうしてだか今ばかりは、あのまっすぐな視線を受け止められそうになかったのだ。
    「花だけじゃない。人の命を、世界を、全部めちゃくちゃにしたいだなんて、そんなのおかしいよ」
     リセは冒険者の沈黙を同意として受け止めたらしかった。切り立った渓谷の上に建てられたここアラミゴ王宮からは、ギラバニア湖畔地帯が遙々見渡せる。夜闇の中まばらに広がる灯は、そこにある人々の営み一つ一つを思わせた。
     冒険者は多くを見た。うつくしいものも、奇妙なものも、ときには汚 1486

    related works

    recommended works