Oa1n08re1A0hjSp☆quiet followDONEファウスト先生が呪屋の仕事をするお話。モブがいっぱい出てくるし胸糞の悪い話なのでご注意。私だって先生がお仕事してる姿を書いてみたかったんです。 『真夏の夜の夢』 あれから、どのくらいの間彷徨い続けて来たかわからない。 ただ昔馴染みから「嵐の谷に行くといい。あそこには腕のいい呪屋がいるから」と声を掛けられたのだけを覚えている。 男はその言葉だけを頼りに自我を保っていた。その一筋の希望がなければ、とっくの昔に彼は憎しみに我を忘れ。怪物にでも成り果てて居ただろう。 呪屋が住むと言うその場所は。 その名に反してひどく穏やかで、暖かかった。「とにかく何か口にしなさい」 全身黒ずくめの呪屋は、まるで客が来るのがわかって居たかのようだった。 待ち兼ねるように小屋の扉の前で自分を迎え、招かれるまま椅子に付くと。爽やかな琥珀色の飲み物をすすめられた。机の上にはオートミールのクッキーまで置いてある。 久しく嗅いでいなかった日常の匂いに、少しばかり心が凪いでいく。「そういえば暫く何も口にして居ませんでした」「魔法使いとはいえ絶食は良くないな。粥でも拵えてやろうか?」「…、いえ。結構です」 クッキーを口に含み水分で唇を潤すと、ようやっと自分が何をしにここにやって来たのか分かってきた。 そうだった、自分は誰かを呪いたくてここまでやってきたのだった。「貴方がファウスト先生ですか?」「いかにも僕がファウストだけど、先生と呼ばれる筋合いはないよ」 凛とした物腰はどちらかと言うと医者か教師めいた雰囲気がある。もしかしたら、自分はあの昔馴染みに騙されたのかもしれない。「俺はこのまま生きている位なら、このまま死霊にでもなって人間たちに復讐をしたいと思っているんです俺には何の治療も必要ありません」「君は何を勘違いしてるのか知らないが、ここで死なれると妖精達が騒いで困るから他所でやってくれ」 パチンと黒尽くめの男が指を鳴らすと、机の上に並べられて居たクッキーや飲み物は消え。代わりに如何にも怪しげな水晶やら、藁人形やら。書物やらが出現した。「安心するといい。僕は確かに呪屋だ。君の依頼を聞こうじゃないか」 かつて依頼人には一人の友人がいた。 まだ100年も生きてない頃に出会って、それからずっと一緒に過ごしてきた。魔法使いだから肉親から疎まれて居た彼にとって、その友人は家族以上に大切な存在だった。「でも友人は人間が好きでした。なんでも、まだ子供だった頃。祖父にたいそう可愛がられて居たそうで」 人間たちからどんなに酷い仕打ちを受けようと、口汚く罵られようと。友人は祖父の事を思い出すとどうしても人間たちを憎むことができなかった。「人間はすぐに死んでしまう。あの人はいつもそう言って悲しそうに笑って居ました。俺はそんな友人がとても好きだったんです。とても優しい人だった」 あの琥珀色の飲み物に何か仕込んであったのだろうか。友人のことを語って口の端が緩むだなんて。とても信じられない。 じっと呪屋の方を見つめる。彼の表情は硬く、その瞳の色はサングラスに阻まれて見えない。 それでもどこか、彼は友人によく似ているような気がした。「俺が人間のことでクサクサしている時は慰めてくれましたよ。祖父もそうやってくれたからって。いつだって自分より誰かのことばかり心配している奴なんです。あんまりにも人がいいものだから俺はちょっと心配だったな。あんなんじゃいつか痛い目を見るんじゃないかって……」 ぐにゃり、と。視界が歪む。ここが何処だか分からなくなる。 自分は何をして居たんだっけ、そうだ。友人と酒場で飲んでいたんだ。そうしたら道端で人間が倒れて居て。放っておけって言ったのにあいつ、家まで送ってやろうなんて言うものだから一緒に付き合ってやって。それで、それで。「あいつら友人を殺したんです!騙されたんですよ!!あの野郎俺たちが魔法使いだって知ってて、マナ石を採るためにハメたんです!部屋の中には魔力を抑える細工が施されてました。友人は、あいつは、俺だけは逃がそうとしてくれて。俺は、俺は…」「落ち着きなさい。君は何も悪くない、悪いのはその人間たちだ」 気がつくと手を握られて居た。その手は少し冷たくて、暖かかった。 そうだ、自分は人間たちを殺しに来たんだ。復讐をしに来たんだ。「………。あいつは、一人で逃げることだってできたんだ。俺の方が魔力が弱いからそうしなかった…。あいつは、人間が好きだった。どんなことをされても許して来たのに」 泣きたいのに涙が出てこない。胸が焼きただれて、地獄底のように冷え切ってしまってるから。「人間たちは、笑ってたんです。あいつを滅多刺しにしながら。それが友人を見た最後の姿でした」 その日の嵐の谷は風ばかりが荒れ狂って。妖精たちはじっと大人しくしていた。暫くは、ファウストの小屋には近づけない。 呪屋のお仕事だ。不吉な風は妖精たちにも体の毒だ。けれどもきっと。 あの優しい彼が仕事をせねばならぬのなら、それは運命みたいに。どうしようもないことなんだ。 せめて沈黙の歌を歌おう、静寂のステップを踏もう。 魔法使いとて、いつか死すべき定めが来ることに。変わりはないのだから。 砂浜に吹く風は生温く、湿っていて。体に絡みつくようで不愉快だった。 小波だけが耳に爽やかだった。あの嵐の日からもう三ヶ月は経とうと言う頃だ。「僕の呪いは因果に作用するものだ。人間たちは近いうちに破滅する。それがどのような結果になるかは、僕にも分からない」 呪屋はそう言って静かに自分の手を握り続けてくれた。 それでも良い。この人になら、想いを託すことができる。あの時は心の底からそう思って感謝していた。 人間たちは順々にその報いを受けて行った。あるものは仲間に裏切られ、恋人に去られ、妻を亡くし、病に倒れ、何人かは命を落とした。 因果の糸を頼りに全て見届けた今、自分の中にはただ虚しさばかりが残されている。 今の自分を見て、あの。人間好きの優しい友人は。なんて言葉をかけるだろう。 足音は浜辺に流れ着いた立木に腰掛けた、一人の少女の方に向かっていた。「こんばんはお嬢さん。こんな夜更けに危ないよ」 くるりと振り返る目は無垢そのものだった。「私お家に居ない方がいいの」 なんでもないように子供は言う。まだ、外の世界にはとんでもない邪悪が潜んでいることなんて。まるで知らないみたいに。「そうなの?お父さんとお母さんは心配してないかな」「私のお家ね、突然お金がなくなっちゃったの。だからママもいなくなっちゃった。パパは毎日お酒を飲んでてね。私が邪魔なのだって」 ぼんやりと海を眺めて彼女は言う。「きっと私もママと一緒で何処かに行った方がいいのね。パパは昔は優しかったのにな。どうしてこんなことになっちゃったんだろう」 不思議と喜びは生まれなかった、けれども悲しくもなかった。後悔もできなかった。 掌の中には二つのマナ石がある。あれから何とかこれだけ手にすることができた。数少ない、誰よりも愛した友人の居た証。 まだ支払いができていない呪詛の代金に、そう考えていたのだけれど。「君にいいものをあげるよ」 その一つを少女の手の中に包んであげる。「幸運のお守りだよ。俺はもう一個同じのを持ってるからさ。君にこれからいいことがありますように」「………。きれいな宝石」 少女は少しだけ頬を染めて、その石を空にかざした。「すごいわ。私の大好きなこの浜辺の青空と同じ色をしている!これでいつでもここに帰ってこれるわ!!」 その表情を見ていると、胸のすくような、抉り取られるような。不思議な感覚がした。魔法使いは彼女が好きだと言ったその青空を見る前に。その街から立ち去って行った。 数日後、少女は借金のカタに都会に売られていくことになる。 それからの運命はもう手繰り寄せることができなかった。Tap to full screen .Repost is prohibited Let's send reactions! freqpopularsnackothersPayment processing Replies from the creator Follow creator you care about!☆quiet follow Oa1n08re1A0hjSpDONE例のホラー映画美少女フィギュアのコスをしているミスオエ(女体化)オエちゃフレディ。ミミちゃレザフェだよ。 Oa1n08re1A0hjSpDONEパラロイ時空のミスオエ。本編の1000年後に過去の世界に旅行に行くお話。背景がウザくて読めない人向け。『二十億光年の孤独』 そのツアーとやらは、100年先まで予約で埋まる程の人気プログラムなのだという。「チケットを取るのにものすごく苦労した」 というオーエンの半ば呆れたような、それでもどこか誇らしげな様子を横目で見ながら。 ミスラ自身はこのバケーション・パッケージツアーの良さを全く理解できなかった。 アシストロイドに“人権”が認められて久しく1000年は軽く過ぎた現代。 人間達の寿命もその肉体年齢に縛られなくなった、それでも。「死」そのものまでは克服に至らない今。人類は新しい病理に悩まされるようになっていた。「もう二度と会えないあの人にもう一度」 素朴ながら切実な願いはありとあらゆる“サービス”として商品化されている。このパッケージもその一つだ。「数千年前の地球を眺める事で、その時代に居たもの達を観測する。そんなのスクリーンで過去の映像を映し出すのと何が変わらないっていうんですかね」 気怠げにそう吐き捨てるミスラに、少しばかりオーエンはムッとする。「なんだよせっかくペアでとっておいたのに」「別に俺は頼んでませんけど」「このポンコツ。せっかくのカルディアシス 4632 Oa1n08re1A0hjSpDONEファウスト先生が呪屋の仕事をするお話。モブがいっぱい出てくるし胸糞の悪い話なのでご注意。私だって先生がお仕事してる姿を書いてみたかったんです。『真夏の夜の夢』 あれから、どのくらいの間彷徨い続けて来たかわからない。 ただ昔馴染みから「嵐の谷に行くといい。あそこには腕のいい呪屋がいるから」と声を掛けられたのだけを覚えている。 男はその言葉だけを頼りに自我を保っていた。その一筋の希望がなければ、とっくの昔に彼は憎しみに我を忘れ。怪物にでも成り果てて居ただろう。 呪屋が住むと言うその場所は。 その名に反してひどく穏やかで、暖かかった。「とにかく何か口にしなさい」 全身黒ずくめの呪屋は、まるで客が来るのがわかって居たかのようだった。 待ち兼ねるように小屋の扉の前で自分を迎え、招かれるまま椅子に付くと。爽やかな琥珀色の飲み物をすすめられた。机の上にはオートミールのクッキーまで置いてある。 久しく嗅いでいなかった日常の匂いに、少しばかり心が凪いでいく。「そういえば暫く何も口にして居ませんでした」「魔法使いとはいえ絶食は良くないな。粥でも拵えてやろうか?」「…、いえ。結構です」 クッキーを口に含み水分で唇を潤すと、ようやっと自分が何をしにここにやって来たのか分かってきた。 そうだった、自分は誰かを呪いたくて 3231 recommended works ローズベルDOODLEミスオエ ego.DOODLEミスオエワンドロお題:共犯、共謀 ego.INFO原稿ばっかでなんも上げてなかったけどいま上げれるのサクカしかない!!組み立てオンリーでミスオエの漫画なんかweb展示します〜〜〜 水野しぶきMOURNING【ミスオエ】学パロ先走り晶視点(ガチャ/スト前のため設定に齟齬があります) 12 水野しぶきMOURNING【ミスオエ】眼球・瞳 ※ワンライ 8 水野しぶきMOURNING【ミスオエ♀】春の嵐をまとった乙女※学パロ/オーエン先天性女体化 15 水野しぶきMOURNING【ミスオエ】憂鬱な空を切り裂いてワンライ「雨のち晴れ」 11 水野しぶきMOURNING【ミスオエ】停止線教師×生徒パロディ 14 水野しぶきREHABILI【ミスオエ】毒を喰らわばミスラの血で酔っちゃうオーエンの話 13