果実が甘く熟すまで、「…な…べく、ーー……から……」
頭上から降る優しい声音に、炭治郎はゆっくりと目を開けた。
こわい。じりじりと焼けつくような欲が身体の奥底でずっと燻っている。自分が自分じゃなくなりそうだ。身を焦がす程の熱が噴き出しそうなのに、目に膜が張っているせいか、視界がぼやけてよく見えない。真っ暗闇の空間にひとりぼっち、放り出されてしまったようで炭治郎の目には益々涙がたまってゆく。
「…うっ、うー……」
「大丈夫だ炭治郎。ここにいる」
ぽろぽろと頬を伝う涙を指先で拭われた。視線をさ迷わせ手を伸ばすと、人影がゆらりと動いて炭治郎の手を取る。覚えのある温もりと香りに息をつくと、正面の彼もほっと表情を緩めた。
「……ぎゆ、うしゃ」
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