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    L_Branseven_K

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    L_Branseven_K

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    キウイ味クッキーとロールケーキ味クッキーのお話です。捏造過多・特殊設定等ありますが、ごゆっくり閲覧していってください。

    Rider's-LINE-サンプル②二、届かない手


     一瞬の出来事だった。
     今でも夢であるかのような感覚が俺らだけじゃなく周囲のクッキー達からも聞こえる。
     だが俺は視界が暗くなっていく錯覚に陥っていた。
     だって。
     だって、アイツが。
     ロールが、ロールケーキ味クッキーが。

     俺を突き飛ばして、裂け目の向こう側へ落ちていったのだから。

     なんで俺を庇ったんだ……?
     俺たちはくっだらない理由で喧嘩したまま、一週間が過ぎていて。
     仲直りがまだできていなかったんだ。
     それが、こんなことが起きるだなんて。
     アイツが……ロールが俺を庇う理由なんて一切無かった筈だ。
     …もしも俺が立っている場所が違かったら、ロールは助かっていたのだろうか。
     もしも俺がもっと早く裂け目の存在に気づけば、ロールは俺を突き飛ばさずに済んだのだろうか。
     もしも俺がロールを突き放していれば………俺が落ちて…………。
    「ママ、ママ」
    「あっ……。」
    ハッと我に返って瞬きをする。
     同時にピィピィと、キウイ鳥の鳴き声が聞こえる。
     ママ大丈夫、みたいなことを言っているのだろうか。
     ………でも、今俺は声をかけることすらできないくらい酷い絶望に打ちひしがれていた。
    「………キウイ!大丈夫かキウイ!!」
    「此処じゃ埒が開かないよ!危ないだろうし、一旦避難しよう!」
     ダイナサワーとバブルガムが声をかけてくれる。
     ………今、俺はどんな顔をしているんだ。
     身体の芯から冷えていく様で。
     手にした蝋燭の炎が急に消えていく様な。
     どんな顔を、しているんだ。
    「あーーっもう!なんか衝撃与えればいいんじゃねえか?!俺がやるよ!」
    「此処でやるのか?!」
    「だって、やってみなくちゃわからなっ、」

     ガシャンと、乾いた音が響く。
     誰かが割れた?何かが割れた?
     ………いいや。

    「はっ…………、え……………?」
     ………気がついたら。
     俺の手にはバブルからぶん取ったバブルガンがあった。
     武器なんて扱ったこと無い。増してやバブルの弾は、攻撃では無く世界を彩る為の物。
     嗚呼、そんなことだって今はどうでもいい。
     蝕む罪悪感を振り払い、慣れない武器を、真っ直ぐ構えて。
     ーーー撃ち放った。


     辺りにガム風船が弾ける音が響き渡る。
     バブルが何か言っている。ダイナが俺を引き止めようとしたけど、俺はその腕を振り払う。無我夢中にバブルガンを裂け目があった場所に撃った。
     一発。
     二発。
     三発。
     四発。
     五発。
     六発。
     七発。
     当然それで、あの裂け目が開くことはない。
     自分で自分の呼吸が乱れている感じた。焦りで正しく息を吸い込めない。
     周りのクッキー達も、俺の行動に動揺しているのだろうと、周囲の喧騒が大きくなることで理解した。
     だけど。
     でも。
     だからと言って……っ。
    「ひらけ!ひらけよ!さっきみたいに開いてくれよ、開けろよ!!」
    「キウイ味クッキー!!」
     どっちの声かも、わからない。
     その内、カチリと機械音がして、弾切れだというのを悟る。
     開かない。開いて、くれない。
     バブルガンを地面に置き、アイツが落ちた場所を思い切り叩いた。
     皮肉にも撃ちすぎたガムの残骸に覆われたその場所を叩いたせいで、衝撃は殆どガムに吸収される。
     それすらも、どうだっていいんだ。
     俺が今願うのは。
     望むのは。
    「返せよ!頼むから、返せよ………っ、ロールを返してくれよっ!!俺の親友を返してくれよ!!!奪わないでくれ!!大事な……大事な……っ、」
     手が痛い、割れそうだ。勿論本当に割れてはいない。
     ガムが手に塗れて、何もかも分からなくなってくる。
     いや、本当は生地の痛みなんてどうでも良い。
     俺たちは喧嘩したその日からあまり口を聞かないでいた。
     さっさと仲直りしておけば良かったかもしれないけど。
     俺もアイツも変に頑固で………お互いタイミングを掴めずにいた。
     ちゃんと謝らないと一生仲違いする可能性だってあったのはわかっていたんだ。
     それはきっと………アイツも思っていた、筈。
     …最後のは、俺が望んでいるだけだけど………。
     だからって………だからって!
     俺の親友を奪うなんて道理、存在してたまるか!!
     取り戻させろ。返せ返せ返せ!!
     ここを叩けば、きっと、かえってくるって……。
    「かえしてっ………!!?」
     急に地面が遠く離れる。引っ張られた衝撃で一気に頭が冷えた……ような気がする。
     漸く自分の手がジクジクと痛んでいることにも気づいた……割れるほどじゃないけど、酷く痛い。
    「……………あ」
     荒治療だが、少しばかり落ち着いたかもしれない。見れば、ダイナの相棒であるゼリー恐竜が大きな姿になって俺の服を咥えて持ち上げていた。
    「…………気持ちは、痛ぇ程判るけどな。落ち着かなきゃ、何も解決しないよ。」
    「………う」
     その言葉に何も言い返せず、ガムがベタついた手を見る。
     ………ああ、俺はこんなに非力なのだと思い知った。
     そばでバブルが無言でバブルガンを拾う。何も言わないのは、優しさだろうか。
    「…………落ち着いたか。」
    「……嗚呼。」
     辺りは喧騒で更に煩くなっていた。
     クッキーが一枚消えたと思えば、別のクッキーが無我夢中で道のド真ん中をガムでベチャベチャにしたんだ。
     ………警察味クッキーが来るのも、時間の問題か。
     不意にゼリー恐竜の背に放り投げられる。一番前にダイナ、真ん中にバブルが既に乗っていた。
    「…………あんまりやりたくねえけど………こっから強行突破で逃げていくぞ。」
    「悪い、ダイナ、バブル……俺のせいで。」
    「ったく、お前のせいでも、況してやロールのせいでもねえよ!急に現れた変なぐるぐるが悪いんだ!無関係のクッキー達を怪我させねえようにするぞオラァ!」
    ………最後のバブルの言葉に、少しだけ救われる。
    「……ん?」
    「ほい、手は取り敢えずベタつかないようにしといた。バイク、ちゃんと回収しろよ。」
    「………嗚呼、判ったさ。」
     既に警察味クッキーを筆頭に警察が現れる。迷ってる暇は無い。
    「さぁ行けっ!」
     ダイナの合図で、ゼリー恐竜が雄叫びを上げた。それに驚いたクッキー達の間を迷わず駆け抜ける。
     ……嗚呼、スリル満点だ、不謹慎だけどな!
     ダイナと会った店の前に停めてある、俺のバイクに飛び乗る。
    「ママ!」
    「おまっ、危ねえだろ?!」
     いつの間にかに頭にキウイ鳥が引っ付いていることに気づいた頃には既にバイクの鍵をエンジンに差し込んでいた。
     ………しゃーねえなあ、全く!
    「…………行くぜ。」

     商店街のクッキー達の間を、竜とバイクが、駆け抜けた。
    怪我したクッキーは、奇跡的なくらい居なかった。


    ***


    表はまだ騒ついている。
    それでも、俺たちはどうやら上手く撒いたようだ。
    裏路地を出来る限り音を立てないで移動する。
    「…………こっからどうする?」
    「何も考えてねえ!取り敢えずガムボール補充して良い?」
    「捕まったところで補導されるだけだが、そもそも職質されてもなんて答えれば良いか分かんなかったからな!」
    ………二枚の言葉を聞きながら、空を見る。
    朝は少しだけしか出なかった雲が、今は空全体を覆っている。
    「…………図書館、近くにあるか………いや、変な渦の情報なんて普通の図書館に…」
    そこにあっ、とバブルが大きな声を出した。
    すぐに口を自分で塞いだ後、小さい声で話し始める。
    「普通の図書館にないなら、特別な図書館に行けばいい。魔導士の街には、膨大な量の本があるってこないだシナモン味クッキーに聞いたんだ。もしかしたら、そこにはあの変な渦について書かれている本があるかもしれない!」
    「じゃあそこに行ってみようぜ!」
    ………そこに向かえば、この事態が進展するのだろうか。
    いや、悩む暇は無い。それしか方法がないなら、藁だって握り締めてやる。
    「……決まりだな。」
    「よし、そろそろ裏路地から出るぞ。ここら辺は、クッキーがいない筈………だから…………」

     ………出た場所に、クッキーは俺たち以外居ない筈だった。
    確かにクッキーは存在していなかったのだろう。
     気が付いた時には目の前にいた、たった一枚を除いて。

     頭にベーコン色の時計の針のような髪飾りをつけている明るい髪色のクッキー。焦茶色の指揮者のような服を着ていて、その目付きは決して剣呑な物ではないが、鋭かった。
     まるで、俺たちを待っていたかのような………。
    「…………だ、誰だ……?!警察は撒いた筈なのに………!」
     バブルの声で現実に引き戻される。
     そうだ、警察は撒いた筈。(悪いことちょっとしただけだけど!)
     目の前のクッキーは、警察に所属している訳でも、この街の探偵と知り合いでも無い筈だ。第一見たこと無いのだから。
    「ええ、私は警察に所属しているクッキーではありません。」
     そのクッキーは首から下げていた身分証明書の様なものを俺たちに見せる。
     気がつけば周りに、出てきた裏路地からも見たことのない制服を着ているクッキー達が現れた。
     逃げる隙も、与えられない。
    「私は時の管理局に所属している、クロックムッシュ味クッキーです。先程発生した『時の隙間』の裂け目の側にいたクッキー達は………あなた達ですね。」
    クロックムッシュ味クッキーと名乗ったクッキーは俺たちを見て、何の感情も乗せず、淡々と言葉を紡いだ。


    「少々…いえ、長時間こちらで取り調べを受けてもらう為に拘束させてもらいます。拒否権はありません、御容赦を。」

     それはトドメの一言か、親友を助ける為の近道か。
     ……………何にせよ、親友が消えたと思えば、今度は時の管理局と来た。
    情報の波に押しつぶされてしまう。なんにせよ、だ。

    「………今日は、きっと。」
    今までで、一番ツイてない日だ。
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