Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    L_Branseven_K

    @L_Branseven_K

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 4

    L_Branseven_K

    ☆quiet follow

    ライ麦味クッキー中心のSSです。捏造妄想過多・出しゃばるオリキャラ等ございますが、ゆっくり閲覧していってください。

    SunnyStoneSunnyStone



    (相変わらず捏造過多)(ライ麦味クッキー中心)
    (CP要素無し)(マドライエストリオが同棲している設定です)(オブレ・キングダムストーリーとは全く関係無いものとして読んでください)
    (オリジナルクッキーが出しゃばります)(めちゃくちゃでしゃばってます、御注意を)



    ***


    次の撮影まであと二時間。
    それまでに代わりのモデルを見つけなきゃいけない。
    輝けるモデルを。宝石の原石のようなモデルを。
    けれど全然見つからない。
    今日は全くツイテない。
    「まに、まにあわない……!」
    よりによって一番のモデルが、止まってたホテルで事件に巻き込まれて事情聴取とは。おかげでしばらく出れないとか!
    こんなの涙も汁も垂れるってんだよ!!
    兎に角、今日撮影しなきゃ間に合わない!
    とびきり綺麗な宝石が……見つからない……!


    「………あっ!?」
    否。
    見つけた。
    太陽の輝き、それも夕焼け色の鮮やかな輝きを見つけた。
    今は昼なのに何言ってんだって?
    そんなのどうでも良いんだもん!
    あんなに綺麗なサニーストーン……!
    輝かせなきゃ、プロデューサーの名が廃るってもんよぉ!!!
    走って、走って、走って。
    届け、届け、届け!

    「そこのお姉さん!!!!」
    ガシッと片腕を掴む。
    「なっ、誰……!?」
    あとはもうただ願いながら泣き落とす!!!
    「お願いします!!!!!!どうか一日だけでいいから、モデルをやってください!!!!!!」
    「えっ、なんで」
    「お願い!!!!!!」
    「ちょっと、」
    「一回だけ!!!!」
    「いやあのな」
    「頼む!!!!!!!!!!!!!!!」
    「顔が汁まみれ!!」
    「イッカイダケェ!!!!」
    「わっ、わかった、わかったよ!アタイがモデルって奴やりゃいいんだろ!?!?」
    「ありがとうございます女神様!!!!!!」
    「仰々しいわ!!!」
    勢いと勢いと勢いでゴリ押すのは正義だよ。



    ******


    ……なーんでこんなことになったかねえ。
    えーと?賞金稼ぎの為に街の外の指名手配所に行こうとして?街を出る瞬間にレッドチリ味クッキーを見つけ出して?
    そのまま街中を駆けて追いかけっこになり、人混みに塗れて見えなくなりそうになったところで尚走ろうとした時に………。
    視界が歪んで、蹲ることしかできなくなった。
    気持ち悪い。頭が痛い。息をするのもやっとのことだ。
    伸ばした手は引っ込み、被っていたテンガロンハット越しに頭を抑えることしかできなくなった。
    アレだ、あの野郎が人混みに紛れたもんだから人混みの中を見る他に方法は無くて、アタイ自身が基本的にそういうのは無意識に避けていたからか気づいていなかっただけかもしれないが。
    まぁ兎にも角にも気分が悪くなって思わずしゃがみ込んでしまったことに変わりはないんだよ。
    周りで大丈夫かと心優しいクッキーの声も幾つか聞いた。でもそれに返事をすることができず、ただ今まで起こしたことのない感覚に気分が酷くなるばかりだった。ようやくマシになったところで肩で息をし、心配してくれたクッキー達にありがとうの言葉や、大丈夫だと伝え顔を隠す。
    どれぐらい時間が経ったかは分からない。ただあの赤いクッキーを逃したことが酷く心を蝕んだ。
    畜生と思いながら、帽子を元の位置に戻し、視界を開さす。
    嗚呼、どうしたものか。もう自棄になって何処かで酒でも飲むかと思い歩き出したところで。
    腕を後ろに引っ張られた。
    掴まれてない腕で反射的に銃を掴んで引き抜きながら背後を向けば、腕を掴んでいるものの正体を見て目を白黒させてしまう。
    そこにいたのはただのガキ。小綺麗で目に優しい色合いの小さなクッキー。
    緑色のゆったりしたフード付きパーカーを着て、長めのスカートを履いている。髪は短めだ。ちょっと癖毛がある。
    以前知り合ったバイク乗りの坊主のことを思い出したが、コイツは坊主より小さいし幼いように見える。
    誰、と言う前にその小さな体から大きな声が飛び出した。
    「お願いします!!!!!!どうか一日だけでいいから、モデルをやってください!!!!!!」
    そうして早口で言葉を捲し立てられた。
    断る隙は無く、その上顔面ぐずぐずでアイシング歪むんじゃねえかってくらい泣きまくるから、すっかり気圧されてアタイはソイツの言葉に頷くしか無かった。
    そうして連れられてあれよあれよと小綺麗なビルの中に………。
    …………モデル………って………?
    アタイはライ麦味クッキーである。名前は前述の通りだ。元は農家だけど、真っ赤な盗人に宝物全部盗まれてから賞金稼ぎへと転職。村のみんな元気かな。
    脱線しかけた。
    まあつまりだな?
    アタイにとっては都会の娯楽なんて、最近学び始めたことなんだよなぁ〜〜〜?
    此処に来るまでに出逢ったバイク乗りの坊主も、此処でいざこざの果てに一緒に住むことになった剣士の甘い坊ちゃんと魔法使いの珈琲野郎も、世間に対してそこまで関心がないタイプだ。
    なので本当に分からない。……いやコレは嘘だな。
    さして興味は無い、そういった方が正しい。
    賞金稼ぎが楽しいもんだから、他の欲求は全捨てだ。
    ………まぁ、気にならないわけじゃない。
    以前見かけた。真夜中に、ビルのデカいテレビ画面みたいなところに映ったピンク色のクッキー。
    その姿は、確かに誰もが憧れる都会の可愛いクッキーなんだろう。
    ああ言うのが、此処では流行っているのだろうか?
    ………ダメだ、結局は現実逃避しかしてない。
    でも今更断ることなんてできないし…。
    「お姉さん気分悪い?大丈夫?」
    「あっ?!えっ!?」
    我に戻って声の方向を見ればガキが不安そうな顔でこっち見てやがる。
    ……はぁ、さっさと終わるといいな……。
    「なんでもないよ。それより、いつまで歩けば良いんだ?」
    「まぁまぁ姉さん、ゆっくり歩いて行った方が姉さん的にも楽でしょう?もうすぐスタジオなんでまったり行きましょうや…。」
    「誰が姉さんだ。野菜系クッキーの妹なんて居ないよ。……ああ、名乗って無かったな、アタイはライ麦味クッキーだ。」
    「えへへ、すみません。私リーフレタス味クッキーって言います。こう見えて読者モデルプロデューサーをやっているんです。あ、着きました!ここが第一スタジオですよ!」
    そう言ってスタジオの扉を開けるガキ……今だけはリーフレタスって呼んでやるか……が、スタジオの扉を開ける。
    ……クッキーが疎らにいて、何やらそれぞれグループになっているようだ。
    「クッキー、少ないんだな?」
    「別室にスタイリストさんがいたりするんですよ。他のスタジオにも何人かいますし。」
    「……ビルのデカさから、本当はもっといるんだろ?」
    そう問えば、リーフレタスは俯く。やべ、地雷踏んだか?
    「度重なるトラブルで締め切りが近くなっている状態での撮影になってしまったんです……無論何時もより激務になってしまって……。そんな時に限ってトップモデルが泊まってたホテルで怪盗騒ぎに巻き込まれちゃったらしくて……。」
    「……ツイテないな。アタイみたいなクッキーの手も借りたいってことか?」
    「え?ライ麦姉さんはそんな私の前に現れてくれたキラッキラの女神ですけど?」
    くもりなきまなこでそんなこと言うなあ……。
    こんなガサツなクッキー、女神呼ばわりする奴いるかね?
    「リーフちゃんリーフちゃん!!代わりのモデル見つけたんだね!!」
    「わぁ、スノウシュガーチョコクッキーとおんなじぐらいの背だし、美人さんだぁ!」
    「だ、誰だお前ら!!?」
    「私の友達兼読者モデルのクッキー達だよ!豆大福味クッキーと胡麻プリン味クッキー!!」
    紹介されると同時にこんにちわー!と返事をする二種のクッキー……。豆大福とか胡麻プリンとか……初めて聞いた名前だ。
    ……にしても。
    「……あんまり身長について問いたくないんだけどよ、全体的にちんちくりんが多くないか?」
    「らっ、ライン越え発言だよ!」
    「事実だよふたりとも……。おかげで私がライ麦さんを探し出せたんだけどね。」
    ……もしかして、このスタジオとやらには、アタイと同じ身長のモデルがいないのか?
    …リーフレタスが酷く真面目な顔になった。
    「モデル一種一種が、一つの場所だけで撮影するわけじゃない。ここの他にも大手の場所がある。時間の問題でそっちを優先せざるを得ない事情があるんだよ。………着てもらうドレスは、背の高いクッキー向けに発売するものだから、身長の足りない豆ちゃんや胡麻っ子には着れない。」
    ど、ドレス……。そんなん着たことない……。
    幼い頃から、お洒落より土弄りする方が好きだった。早く寝て、早く起きて。そうして毎日畑に向かった。
    ……やったことないことに、初めて挑戦するのがこの場所だなんて。
    今更引き下がれないけど、どうなるんだろうか。
    「だからお願い!!」
    「っ!?」
    「ライ麦さんのこと見た時、すっごい嬉しかったの!もうこっちのエゴで申し訳なさもあるけど……それでも!!一眼見た姿がとっても美しくて!昼間なのに夕暮れ時の様なきらめきを錯覚する様な心の輝きに、このクッキーしかいないって思ったの!」
    「……アタイのこと、そんなに評価できるのかい?」
    「できる!!だって、ライ麦味クッキーさんは……キラッキラの宝石だよ!!サニーストーンって奴だよ!!」
    ………あまりにも。
    あまりにも、真っ直ぐな目でそれが真実として疑わない。
    それを今まで何種のクッキーに言ってきたのだろう。
    そして何種のクッキーの輝きを信じているのだろう。
    並大抵の精神じゃできないーーー信じることを是とする在り方だ。
    ………応えよう、その在り方に。
    そうして今まで何種のクッキーの同意を得て、何種のクッキーの輝きをみてきたんだ、このクッキーは。
    せめて、それに恥じない心で臨もうか。
    「あっじゃあ、スタイリストさん来たんで一旦着替えてもらって良いです?」
    「え"っ?」
    「髪のセットは後々スタジオでやりますけど、お化粧とかはあちらでお願いしま〜す!」
    「オイオイオイオイ、ちょっと待てアタイまだ着替えるドレス見てなっ、スタイリストの力が強過ぎる!砕かないけどクッキーを引きずる力がありっ、あ"あ"あ"あ"あ"あ"!?!?」



    ***


    「可愛い!!」
    「超美人!!」
    「もうこの時点で宝石!!」
    「褒めるな!褒めるなぁ!」
    あの後、あれよあれよと着替えさせられ化粧……はそこまで無かった気もするけど一応……させられて、スタジオに来ればガキが三種揃ってわーきゃーわーきゃー騒いでやがる。
    恥ずかしいったらありゃしねえ……。
    夜の暗さを煮詰めて丁寧に形を整えた様なドレス。スカートの部分は膝下まで伸びていて、地面には届かないけどそれ程までに長いと感じる。靴はヒールって靴だけど(これ履いて走れる奴いるの?マジで?)、アタイに合わせてくれたのか歩く分には不自由の無い物を選んでくれた。これは黒色に紫色が染み込んだ様な色彩をしている。
    ……そんで……アタイの両腕にある点々とした傷(普段の賞金稼ぎで付いたものや子供の頃に付いた傷)を見かねたのか、長い手袋を渡してくれた。名前何?何だろう。
    「あ〜Aラインシルエットのイブニングドレス似合いすぎでしょ!やっぱブラックシュガーを溶かしてドレスの形に作り上げたオランジェちゃんは大天才!!ライ麦姐さんの姿が本当に女神様に見えるよ!!」
    「リーフレタス限界キラキラ大好き味クッキーになってる。」
    「味の体裁を為してないだろ。」
    「あとドレスグローブ!!!天才すぎる!!!!もうコレもうカッコ良過ぎて………幸せものだぁ……。」
    感極まって泣いてる。そんなに似合うかぁ?
    「似合ってます!」
    「うわっ心読まれたかと思った。」
    結構限界極まってんな…。じゃあ一応素直に受け取っておくかね。
    「でも、確かにそのドレスグローブ似合いますね、ライ麦さん!」
    「ん?嗚呼、アタイって腕に傷があるから、あのクッキーがそれを隠す為に渡してくれたんじゃないの?」
    言えば胡麻プリンは眼を丸くする。
    「……腕に傷って……大丈夫なんです?」
    「大丈夫だよ、アタイ普段は賞金稼ぎ……バウンティハンターやってるもんでね。」
    「バウンティハンター!?」
    「賞金稼ぎ!?」
    「だから手持ちに銃が有ったんだ!!」
    結構驚かれるもんだな?まぁ今は没収されてるんだけど。
    しかし……眼差しが余計キラキラしてきた様な……尊敬の眼差し混ざってない?悪い気はしないけどちょっとこそばゆいというかなんというか…!
    「イブニングドレスで戦ってたらカッコよくない?」
    「それはもはやドラマじゃん!!カッコいいクッキーって素敵〜!」
    「カッコいいとカワイイと美しいが同居してるとか……本当に宝石のようなクッキーだぁ…!」
    誉め殺しをやめろ!!!恥ずかしいだろ!!!あーもー、早く撮影しなきゃいけないだろ、さっさとやるぞ!
    「髪のセットが終わってないですよ、ライ麦さぁん。」
    「あ、そうだけど……充分だと思うけどな…?」
    「こういう時だからこそのヘアスタイルってもんがあるんです!」
    「ライ麦さん、髪綺麗だから色んな髪型似合うよ!」
    「どんなヘアスタイルが似合うかな!楽しみだよ!」
    そこまで言うかね……?ガキどもが純粋すぎる……。
    「つーかヘアスタイリストとやら誰だよ。」
    「はいっ」
    そう言ってリーフレタスが手を上げ……え?
    「お前かいヘアスタイリスト!!」
    「任せてください!!!夜に咲く一輪の花作ってやりますよ!!!!」
    ライ麦だったってんだろ!!花じゃないんだよ穀物なんだよ!!!?
    ………そういう問題じゃないけど、ドレス着たからもう本当に退路が無い。というか他のクッキーに髪の毛触らせるだなんていつ振りだ…?
    「………本当に、任せて良いのか?」
    アタイが、助ける立場にいるからってのもあるけど。
    「勿論!女神様を綺麗に保つのは!下々の役目ですともー!」
    その女神様っての名に着られてる感半端ねえからやめてくんねえかな。

    「………髪の毛、黄金の川みたいにキラキラしてるねえ〜。」
    「お前詩的だな。恥ずかしく無いのか?」
    「詩的じゃなきゃ、見出し文とか書けませんよ〜。」
    ………コイツ一種でいくつ仕事をやってるんだ……?ワーカーホリックか?それともエスプレッソみたいに時間を無駄にしないタイプだろうか。
    俗っぽいから違うか、流石に。エスプレッソレベルのはイカれてる。アイツはそれだからこそ良いんだけどな。
    「それにしても、賞金稼ぎですか。凄いですねえ〜。何がきっかけで?」
    …………嗚呼、やっぱりこの質問来たか。仕方ないけど。
    「言わない。話したく無いから。」
    「………ごめんなさい。」
    ……しまった、少し語気が強くなってしまった。
    「………気にしないで良いよ、ガキに向かって悪かった。」
    「でも、やっぱり申し訳ないんです。私にとって、今日出会ったアナタは救いのような存在だったので………。このドレス、友達が一生懸命考えたドレスだったんですよ。だから、この服を着てくれるクッキーがいてくれて…有り難くおもっています。」
    思い入れが強いのか?だから最初に会ったときにあんなに必死こいてお願いしたんだろうか。
    ………んーでもなぁ。
    「………やっぱり、元のモデルさんの方が似合ってんだろ。」
    「も〜解ってないですねえ。これは確かに販売されてはいないけど、後々販売されるものですよ!」
    んん〜?………つまり?
    「綺麗なクッキーが着ている服を見て、私も着てみたい!って思うクッキーがいるのです!モデル雑誌は、モデルさんの姿を見るためでもありますが、洋服店にとっても大事なことなんですよ!憧れって大事ですからね!」
    へぇ、なるほど。
    アタイにそれほどの力があるかは分からないけど、ぼちぼち貢献できたら良いな。そうでなくても他のモデルやあのガキ達とかのお陰で注目されるだろ。
    「……にしても、服装にそう頓着しないタイプなんです?」
    「………興味はあるけど、そこまで優先しないな。」
    「そうなんです?さっき着てた服装カッコいいから、気にするタイプかと。」
    「普段着は気にするさ?賞金稼ぎとして舐められるんけにはいかないんでね。」
    「自分の仕事にプライドを持ってるの、いいなぁ〜!」
    ………お前も、結構プライド持ってるとは思うけどな。
    「……服とかさ、別に嫌いじゃないんだよ。ただ、賞金稼ぎする方が楽しいだけ。他の欲求は後回しだ。どれだけ興味を持っても、一番やりたいことばかり優先する。そういう性質だ、アタイは。」
    「別に一番好きな欲求をやって、他の些細な欲求を後回しにするのは結構当たり前ですよぅ。」
    「だよなぁ?」
    「でもねぇ、やってみたいのならやってみるのもアリですし。」
    「……そうか。」
    ………これはあんまり意味の無い会話だな………。
    「だからこの経験がアナタにとって、些細なものだとしても、少しでも彩りを添えられたら嬉しいなって。」
    「……ふぅん。」
    特に反論をするのはやめておこうか。
    そんなに良い笑顔をしているし。
    「だからやっぱりコレは私のエゴなんですけども……今だけは、モデルでありつつ、ライ麦姉さんらしくもあって欲しいですね。」
    「………アタイらしく、ね。」
    今でも自分らしいけどね。……あ、髪を触れていた手が離れたな。
    「元々手入れされてたから、凄い丁寧に髪を結ったよ!姉さん、どうです?」
    「……姉じゃねえよ、ったく。」
    結んで貰った場所に優しく触れる。
    成る程、コイツは悪くない。
    「それじゃ、撮影始めるよっ!結構細かい指定が多かったり厳しいかもしれないけど、お願い!」
    「解った。」
    立ち上がって、真っ直ぐと歩く。
    求められたから、応えるだけじゃない。
    アタイは、アタイらしく。
    今だけは。
    ただのライ麦味クッキーとして、在ろう。
    指定された場所に立ち、カメラを見つめる。
    カメラの隣に、ガキどもが三種揃ってこっちを見る。
    その中でパーカーを着たリーフレタスがキラキラとした眼差しを向けていて。
    ……そうだな。
    キュッと口角を上げ、眉間にシワを寄せないで眼を少しばかり細めて微笑う。
    「………せめて、綺麗に撮ってくれよ。」
    アタイを見出した、酔狂な天才の為にもな。


    ***


    撮影はかなり長くなったような気がする。
    撮っている間もドタバタしていたからな。
    何にせよ、撮影を終えてビルから出ればすっかり空には夕焼けが広がっていた。
    「今日は本当にありがとうライ麦さん!」
    「んー、まぁまぁ悪く無い体験だったな。」
    そう口にしてみれば、リーフレタスはガキみたいにわぁいわぁいと飛び跳ねる。実際ガキか、ちょびっと天才的なだけで。
    「でも一回切りって最初に約束したから今後は…。」
    「ま、確かにそうだけどな。」
    そういえば目を白黒させるガキの頭を小突く。
    「いたたた……え、何ですかね?」
    「………気まぐれになら付き合ってやるって話だ。アタイからは動かない。もしまたアタイをモデルで撮りたいだなんて気まぐれ起こしたんならそん時は答える。それぐらいでいいだろ。」
    そんな答えが返ってくること自体が驚きだったのか口を開けたままのリーフレタスはやがて小刻みに震えて、いやなんか凄い振動してる、マナーモードってぐらい振動してる。
    「……なんか言えよ、」
    「ライ麦さん!!!!」
    おい急に大声出すな……って、何、なんか封筒と紙切れ渡された。
    「今度はもっと素敵な舞台を用意します!!!!これ!!!アタシの連絡先と今日のお給料です!!!」
    ……キラキラしていた。
    憧れを見るような。
    素敵なものを見るような。
    やりたいことを見つけたような。
    ………宝物を、見つめたような。
    そんな瞳だ。
    「それじゃあ、今日はここら辺で!また会いたいです!!では!!」
    「……おう、そうだな。」
    建物内に戻っていくリーフレタス味クッキーを見送ってから、手元の封筒を改めて見つめる。
    「……………チョロいんじゃねえの、お前。」
    そんなに呼ばれることは無いだろう。
    ただ、一つのことに真っ直ぐ走る姿が。
    いつかの誰かに似ていた。
    それだけだ。
    じゃ、帰りますかね。

    「………給料、賞金稼ぎするよりは少ねえな。」
    充分ではあるけど、な。




    ***

    『数日後。』



    「ねぇ、エスプレッソ!これ見てみない?」
    「時間がねえので帰りやがれですねラテ味クッキー。」
    「ちょっとだけ!ちょっとだけでいいから!このページだけでも!」
    「だから見ませ……………ん?」
    「エスプレッソ!ラテ!何しているんだい?」
    「うわ帰ってきやがった部屋に戻れ。」
    「ここ私が最初に借りた部屋なのだが?!」
    「マドレーヌも見てみない?」
    「ん、ラテが手に持ってるのは雑誌か?しかしどんな………って!?」
    「ふふっ、驚いたでしょ?私も見つけてビックリしちゃった!とっても素敵よね♪」
    「凄いなコレは!しかし副業をやっているとは…?」
    「恐らく副業ではありませんよ、しかし……本人に聞く必要がありますね。」
    「尋問はやめてあげてよね?」
    「誰がするんですか?!」
    「(やらないのは知ってるけど)君だな。」
    「(やらないのは解ってるけど)あなたよね。」
    「アナタ達!!!!!!!!」



    ***

    今日の賞金稼ぎも結構稼げたっと。
    んーしかし、帰り道は遠回りで帰って正解だったな………最初普通に帰ろうとしたら街中でアタイよりちっせえガキどもが顔を視認するやつ否やキャッキャして話しかけてきたんだもの。
    なぁなぁでいなしてから帰り道を迂回する選択肢を取ったのは正解だったな……。
    本屋寄れば原因が分かるかもしれねえけど……この街の本屋割と街の真ん中あたりだもんな……最初より大変な目に遭いそうだ。
    つーかアイツいつ発売するかは言っていなかったな……言おうとしてたかもしれんし、最後にからかうんじゃなかったか。
    …………電話すれば出てくるか?リーフレタスに後で聞いてみっか…。嗚呼、ようやく着いた着いた。
    「たでえま〜。」
    「ライ麦さん、おかえりなさい。」
    「……なんで二種して玄関で待ってんだよ。」
    「ちょっと聞きたいことが、あってだな?」
    「ゲッ。」
    思わず顔を顰めたけど、エスプレッソがすかさず言葉を飛ばしてくる。
    その手に持っている雑誌をアタイに見せながら。
    「言っておきますが、アナタが何故かモデルとして載っているこのファッション雑誌……著名なクッキーも手に取るぐらいの大手ですよ。」
    それ本気で言ってる?いや、そうでもなきゃ撮影とか初めてのアタイが何ら不自由無いのも納得できるけどさぁ……。
    「………いや、何も知らんけど。」
    「流石に嘘だな。」
    「バレたか。」
    「バレいでか。」
    何だよ、別に悪いことじゃねーだろ。
    「というか何?言いたいことでもあんの?似合わないとか?」
    「そんなわけないだろう!君にはこんな服も似合うのだと知って、僕が勝手に気分が良くなっているだけだ。」
    「洋服の贈り物とか要らないってそれ一番言ってるから…。」
    「まぁ君のことだからそうだろうな。」
    で、実際は何?
    「この撮影をしたのは、君と出逢って数時間も満たないクッキーだっただろう。それでも、短時間で君という宝石を、君のまま引き立たせようと極限まで頑張ったのだろうな。」
    「………そりゃどーも。ソイツ本人に言ったら飛び上がって喜ぶだろう。」
    天才とはいえ、ガキらしく元気にな。
    「しかしブラックシュガーカラーのイブニングドレスとは、洒落ているな。」
    「馬子にも衣装ってか?」
    「自分の容姿に自信が無い味クッキーやめません?」
    そうじゃねえけど。モデルやれる程度にはまぁまぁ良いくらいなんじゃねえの?
    「………誉め殺しするか。」
    「奇遇ですね、賛成です。」
    「え。」
    は?何?誉め殺し?なんで?
    そんなことを言う前にアタイは押し黙ることしかできなくなった。
    「普段の君は夕暮れ時に居るからこそ君の姿が美しく映るのだと私は思っているぞ!」
    「ですが、こちらのモデル写真は別側面の美しさがあります。月の光に当てられてより綺麗になると言うんでしょうかね。」
    「それも良いがな、夕暮れが終わり、夜のとばりが訪れる。一時の間だけ、世界は微睡の様なグラデーション色の空に染まる。そういう日に、この姿の彼女は一番似合うと思うんだが?」
    ちょっ、ちょっち、ちょっと待て!!!!褒めるのをやめろ!!顔から火が出そうなぐらいはずかしくなってくるから!!!頼む黙ってくれテメェら!!!!このままじゃ恥ずかしくて燃えるが!!!?
    耳を塞いだら負けだ……、ちくしょう言われっぱなしも腹が立つ。
    ………よし、こうしよう。ヤケクソだけども!
    「………じゃあ、アタイからも。」
    「む?」
    「何故?」
    黙ってくれた。んで、これであとは頑張って褒めてやるだけだ!
    「……マドレーヌは剣士としての活躍だけじゃなく意外と細かい書類とか自分で片付けることのできる力があるし、エスプレッソは自分の規律でしっかりと時間を管理する他にも案外他人のことを考えてくれるところがあると……思ってるよ。」
    「!」
    「……。」
    「誉め殺しできるほどじゃないけど、アタイはアンタらの良いとこも知ってるさ。」
    そう言った途端笑顔のままマドレーヌが肩を組んできやがる。
    「明日ご飯一緒に食べよう!それが良い!僕らの親睦を深めるにはちょうど良い機会だ!」
    「おうおう、じゃあ騎士様の奢りでな?」
    「とびきり美味しい店に行きましょう。」
    「明日休みだから混んでるぞ!?……まぁ、僕は構わないがな!」
    騎士様が笑い、魔法使いも優しく微笑し、つられてアタイも豪快に笑った。
    さて、何頼んでやりましょうかね。



    ***


    「普通に並んでるわ。」
    「そうだな。」
    「一時間並ぶとは、店の選択ミスりましたかね。」
    そう言うなよ、楽しみにしてたくせに。
    んー、マドレーヌとエスプレッソが牽制してくれるおかげで話しかけてくるクッキーはいないな。それでもちょいちょい黄色い声が聞こえるのがむず痒い…。
    「……相当、人気みたいだな?」
    「モデル向いてるんですかね。」
    「見目麗しさを含めればあんたらもどっこいどっこいだよ。」
    「おや昨日よりは自分を卑下しないようで。」
    「当たり前だろ!卑下したらまた誉め殺しされる!」
    「あはは、そうかもな。」
    全く……あとはゆっくり待ちますか……。そういやあの後結局リーフレタスに電話するの忘れてたんだよなぁ。
    「あ!ライ麦姉さん!」
    「リーフレタス味クッキー!?」
    なんでここに!?思わず考えてたこと全部飛んだけど!?
    あの日見た時と相変わらず年相応に飛び上がる天才プロデューサーが、アタイを見るや否や近づいてくる。
    そんでアタイ達の前でピタリと止まったと思えば、懐から少しばかり厚い封筒を取り出してアタイに押し付けた。
    …………んっ!?なんで現マネ!?
    「お、おい、もう給料もらっ、」
    「昨日発売した雑誌が大好評で!姉さんの写真が特に注目されていたんですよ!!だからコレは本当に御礼です!色付けただけですよ!!やっぱり姉さんは女神様だった!!」
    「おいおい冗談……。」
    「受け取っておけ、ライ麦味クッキー!!君はどのような形であれ、この小さなクッキーにとっての救世主なのだろう!」
    「お前〜〜〜!?!?」
    マドレーヌ何言いやがる〜!恥ずかしいっての!でもリーフの手前否定できねえ!
    「それでは!アタシは友達待ってるので!!またいつか!!!」
    「ちょっと!!?」
    言うだけ言ってリーフレタスは去っていった。嗚呼もう!この情緒どうしてくれる!
    「………嵐のようなクッキーでしたね。」
    「うるせぇな!別にアタイが何したって良いだろ!」
    「まぁまぁ、賞金稼ぎも誰かの手伝いをするのも、巡り巡って君の助けになるんだ!!」
    マドレーヌもエスプレッソもめちゃくちゃ恥ずかしいこと言ってきやがる…!悪気無いのが腹立つな…!
    ったく!クッキー助けも悪くないが、恥ずかしくなるから暫く賞金稼ぎだけだな!
    ……御人好しの真似事も、楽じゃないってな!




    終わり




    【おまけ】

    「ところで、誰を待ってたんでしょうね。」
    「さぁ?友達って言ったら同い年のガキだろ。横断歩道の向こう側で待ち合わせしてら。」
    「案外お忍び中の著名クッキーかもしれないな?」
    「少しだけ眺めてみるか?まだ並ぶし。」
    唐突に一般ちびクッキーの観察もどきが始まった。その間に動いたらそっち優先だけど。
    時計見てるな、待ち合わせてるクッキーって時間にルーズなのか?
    ………あ、何処かで声が。
    「…………ん?」
    「どうしたマドレーヌ?」
    「この声何処かで聞いたような……。」
    「知り合いですか?容姿を見ればわかるかもしれま………あっ!?!?」
    「どうしたんだよ、エスプレッソ?急に変な声だし………はっ?!?!」
    「に、二種ともどうしたんだ!?急に大声を上げて?!ぼ、私にも判るように……。」
    「…………あれ。」
    「あれとは?…………えっ!?!?」
    アタイら三種、揃いも揃って大声出してフリーズ。
    思考停止していたおかげで声がよく聞こえた。

    「ごめん!待たせたねえ!」
    「………後ろのクッキーは?」
    「………お店からお金盗んだから大急ぎで捕まえたの。おかげで遠回りしちゃった。」
    「じゃあまたブティックで商品研究かあ……。」
    「ごめんね…!」
    「大丈夫大丈夫〜行こう行こう〜、しかし災難だよね……この間はネギの匂いの剣士だっけ?」
    「ドアガラス惨殺事件だね………今回はそれよりひどくないからまだ良いかな……洋服とか無事だし。」
    「判断基準が商品が無事かどうかなのか〜〜。」


    ……二種。………と、オレンジ色のクッキーが引っ張っていたアタイが数日前取り逃した誰かが去っていった。
    三種揃って暫くフリーズ、そしてそれを打ち破ったのはエスプレッソだった。
    「………今の見ました?」
    「いや見てないなァ。」
    「私もだ。」
    「………気が抜けてる顔ですよ、ライ麦さん。」
    「まさか。」
    いや正直気は抜けているだろうよ。
    因縁の盗人が、ただのガキに為す術もなくぐるぐる巻きにされて引き摺られるとか。(しかも顔や体を傷つけないように変に丁寧にぐるぐる巻きにされてるし余計に虚無になるわ。)
    それより、何よりも。
    「………あのオレンジのガキ、リーフレタスの知り合いか?」
    「………オランジェット味クッキーは、豪快だなぁ。」
    「あのガキがオランジェット味クッキー!?」
    「世界狭いし、マドレーヌの知り合いには割と脳筋が居ますね。」
    「エスプレッソの言葉が心外過ぎる!」
    「あのすいません、前進んでますよ?」
    「「「すいませんでした!!!!」」」



    ほんとにおーわり!
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works