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    83_grmrs

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    83_grmrs

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    個室での会話を元にしました。
    その後のJ
    ケアンさんとエンドさんお借り

    優しい魔法──────────


     『────また会おう!
           その時は…………』


    その声で、起きた気がした。
    見慣れた天井。カーテンの隙間から差し込む日差し。それはいつもより早い朝だった。鳥も囀りだし、廊下を跨いで心地良い包丁の音が聞こえている。既に空の隣にはまだ温もりが残っていた。
    上体を起こせば朝の冷気が体を抜ける。染み込んでくるそれが徐々に意識をクリアにしていけば、己を起こした何かについて考え出した。睡眠時の記憶整理として脳に残る言葉ではない、本当に聞いたからこそ耳に残る声……。だが聞いた覚えのない声は果たしてどこで頭に刻まれたのか。己の右手を見ながら聞いたことのありそうな場所や似通った人物を思い出している、と。

    「あっ」

    落ちた、と思った。
    視界の端を横切る光のことを。
    きっとそれは飛び立った鳥がカーテンの隙間から差し込む一筋の光を一瞬だけ遮り生まれた瞬きで、横切ったのは陰のはずなのに。
    咄嗟に、星が落ちた、と思ったのだ。
    その瞬間、寝ていたはずの出来事が思い出され、ぶわりと肌が逆立った。跳ねるように振り返り枕元を漁り、次いでベッドの縁と下を覗き込む。

    「…………あった」

    差し込む朝日を取り込むように、淡く光る小さな小瓶。細やかな装飾と付けられたタグ、シンボルとしてよく見る形のコルク栓に閉じ込められた“星”たちが、転がる床を照らしていた。
    あの時、あいつが自分の願いを聴いて叶えてくれた小瓶。
    拾い上げ手のひらで転がせば、視界を縁取るシーツに小さく光る花を視て、翳る天井に星降る夜空を垣間見る。似つかないそれらを回想させる小瓶は、それだけであの“夢”が“そこにあった”と確信の判を押す。あいつは確かにあそこにいて、確かに話したのだ。

    「〜〜…………、そうか、そうか。 ……そうか」

    じわりじわりと込み上げる、羞恥。曰く創り出した空間は、その構成を全て魔力で行ったのだろう。持ちはしても未だに上手く使用できない自分は耐性が無く、もろに当てられ酩酊したような状態だった。と思いたい。だが朦朧としながらも思考は止まらなかった自分の発言が思い出されるたびに、込み上げるものは喉を競り上がり耳を温め脳みそを締め上げる。

    「う〜〜〜〜〜〜〜〜〜…………」

    小瓶を強く握りしめ額に押し当てながら、昂る気持ちを声に出して逃す。
    今の自分にはそれしか出来ない。なぜなら嘘は言っていないから。本音を語り、本音を晒し、本音で望んだのだから。
    花の採取に始まり、あの味が選ばれたのも、アイツに伝えたいのも、良いと思ったことも、名残惜しく思ったのも。全て疑うことなく自分の感情なのだ。だからこそ責任転嫁のような逆ギレも出来ず、恥ずかしさだけが身体中を駆け巡る。

    空っぽの肺にめいっぱい空気を送り込み、そして呻きと共にまた空っぽにすること数回。ようやく小瓶と向き合えば、今度は最後の未練が残る。
    いろいろ聞きたいことがあるのだ。いろいろと。だがその前にしておかなければいけないことがある。それがこの小瓶の意味なのだから。



    ぱたぱたと廊下を歩く音。いつの間にか扉の隙間から美味そうな朝餉の匂いが入り込んでいた。きっと今日も美味いんだ。胃を起こし体を起こし、食後の睡魔が来ないよう調整した量で、一日の始まりを活力的に過ごさせてくれる朝飯。それならこの小瓶は朝食の後のほうが良いだろうか。だがしかし、“夢”の話をするならこれを食べた後の方が信じてくれるだろう。いや、アイツはオレの話ならなんだって信じてくれる。だからきっといつだって良いんだ。でも……。
    軽いノックは返事を待たず、扉を開ける。

    「おや、もう起きてたんですね。朝ごはん出来ましたよ。
     …? ジェンディ、それは?」

    かろかろと、栓を抜いた口から一粒二粒溢れでる。掌に収めた二粒を軽く握り思い描く。たぶんきっと、これで良い。両手で指を組んでいないし星に詠唱を捧げていないが、願いを込めればあいつの“魔法”は叶えてくれる。そういうものだから。
    ゆっくりと指を開く間、掌の陰りの中でほんの少しだけ瞬いた“星”は、変わらず輝いている。たぶん、大丈夫。それとオレを交互に見つめるエンドの手を取り、二粒とも置いた。

    「コレな、オレが好きなやつ」

    食べて、と言えば不思議そうな顔をして、それでも躊躇いなく片方を口に入れた。果たして判ってくれるだろうか。そっちはいつも好物だと言ってるプリンの味。そしてもう一つは適当に決めた日なのに祝わってくれて、初めて食べたケーキの味。まぁ判らなくても別に良い。あの“夢”のことは、全部話すのだから。夜闇に淡く輝く花々も、紺と紫が混じる空から降り注ぐ星も、その味が意味することも、それらを創り出したあいつのことも。それがあいつとの別れの言葉で、そして次に会う時に伝えなければいけないことだから。
    その時はコイツも一緒に。

    「なんの味か分かるか?」
    「ふふ、貴方が好きなプリンの味ですね」
    「正解。もう一つも食べてくれ。味違うから」
    「違う味?面白いですね。いつの間に作ったんですか?」
    「ッハハ、ちげーよ。これはな───」




    ─────────────────────
    ケアンさん、エンドさんお借りしました
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    😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭😭💴💴💴
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