主シル♀のお話(主シルでも可)主シル♀のお話
主シルでも可(その際は彼女表記を彼に脳内変化とかでお願いします)
直接じゃないけどふんわりと◯◯シル♀もあります
降り注ぐ灼熱。縦横無尽に舞う砂塵。多種多様な魔物との交戦。
最悪と喩えても問題ない環境下において、勇者一行は色々と踏ん張りながら次の町を目指して歩みを進めていた。
先陣を切る勇者の一撃に継ぎ、青髪の青年が死角から追撃の一手をかける。
そんな彼らを手助けする魔法を唱え、ひたすら援護に徹する煌びやかな佳人。
猛攻を続ける赤い少女、そして彼女を守るかのように槍を手に魔物へ対峙する緑を基調とした少女。
五人の戦いは、女神像が鎮座する守護の地手前まで続いたらしい。余談だが、最後の魔物を倒す際に「二度と現れんなバーーーーカ!!!!」と言う罵声が砂漠中に響いたようだ。誰が叫んだのかとかそういうのは気にしてはいけない。
そして物語は守護地……すなわちキャンプ地から始まるのであった。
「少し遅れちゃったけど……はい♡イレブンちゃん♡」
「え……」
麗しの佳人から小さな包みが青年へと差し出される。
驚きに満ちた青い瞳に映るのは、花のような笑みを携えた人々を魅了し続ける彼女の姿。
「町を出る前に調達しておいたの♡」
背景に花だけではなく光まで追加されたらしい、溢れんばかりの輝きを直に受けた青年は数秒ほど瞼を閉じてしまった。その際にこれ以上見たら目が終わる!と思ったとか思ってないとか。
突然の奇行に彼女は驚くが、突っ込むなどという行動は取らなかった。多分、面倒なことになるからやめとけ、と言う第六感とかお告げとかそう言うのが働いて止めたんじゃないですかね(適当)
「これ……手作り!?」
「……それは時間的に難しかったから出来なかったわ」
「で、でも嬉しい!ありがとう!」
手作りではなかったことに残念な気持ちがほんの少しだけ生まれたらしいが、青年はすぐに振り払った。
今彼にとって重要なのは、そんなどうでもいい己の負の感情ではなく、彼女から【直接】貰った物なのだから。
「どういたしまして♡」
「ねぇ、チョコは僕だけだよね!?」
気分は最高潮、テンション超絶爆上がり、ゾーンの天元突破も夢ではない!……というだいぶハイな状態になってしまっている勇者は、自分だけの特権だよね!?とすかさず確認を始める。
彼らを面白そうに眺めていた青い髪の青年が、彼の言葉に嫌な予感を感じたらしい。
魚でも取りに行ってくる、と双子の姉妹に告げ返事も聞かずに早足去っていった。
「その通り♡…って言いたい所だけど、皆に渡したわん♡」
「えーーーー!?何で!?」
普段の冷静沈着無表情は何処へやら……。感情をハッキリと表に出す青年に佳人は苦笑を漏らさずにはいられなかった。
「だぁって!アタシは皆のことが大好きだからよ♡」
「でもでも!!本命は僕だよね!?そうだよね!?」
独占欲が表に出過ぎているが、勇者に隠す余裕は無く。彼女の口から自分が優位である言葉を引き出すことに必死になっていた。
いやお前必死過ぎるだろと言った突っ込みが遠くの方から聞こえたような気がするが、気のせいだろう。多分。
「うふふ♡ヒ・ミ・ツよん♡」
「なななななな何で教えてくれないのさああああああ!!!!ハッ…!?まさかカミュとかまだ見ぬモブとかじゃないだろうな!?」
青年が望む言葉はではなく、笑顔にウィンクといった可愛らしい行動でうやむやに濁されてしまった。
そこからの勇者の動きは驚くほど早いもので。
自分ではない=この場にいる自分以外の男はカミュ=じゃあカミュか!?=もしかして町を出る前に渡した可能性もあるのでは!?=知らんモブ!?……という連想ゲームを数秒で行ったそうな。そう言う時だけ脳がフル回転するのかと言う言葉は、どうか胸にしまっておいてください……。
で、その結果、
「カミュウウウウウウ!!!!何処にいる!?」
相棒の青年に狙いを定め、真意(※カミュは当然知りません)を確かめると言った行動に出るのであった。
「あらあら……可愛い坊やねぇ本当♡」
あっという間に過ぎ去ったどデカい嵐。彼が向かった先を見つめながら彼女の唇からクスッと声が溢れる。
「あの人達にも皆と同じチョコを贈ったけど、ちゃんと届いているかしら?……あ、知られたら大変なことになっちゃうし……ヒミツにしておきましょ♡」
少女達から離れ、佳人は一人空を見つめる。その脳裏に浮かぶのは、一体誰なのか。
「フフ……あのコのだけは少し違うのだけれど……気付くかしら?」
とある人物?人物達?の姿が消え、代わりに浮かび上がったのは凛々しい表情の勇者だった。
まぁ実際のところ、探しに探し回って見つけた青髪の相手に詰めまくった挙句、周りにいた好戦的な魔物も加わった何とも言えない争いになっているそうだが、彼女……シルビアの脳裏にそんなバカ過ぎる光景が浮かぶわけなかった。そりゃそうだ。
「帰ってきたらさりげなく聞いてみましょ♡」
それまでは笛のお手入れね♡……と勇者達が戻るまでの間の過ごし方を決め、少女達が待つキャンプ地へと戻っていくのであった。
終
おまけ 〜争ってる最中の勇者と相棒〜
「本当に知らないんだな!?」
「知らねーよ!!何回言わせんだテメーは!!」
「本当に本当だろうな!?」
「しつけぇんだよ!!」
「本当に本当に本当に「だあああああ!!!!うるせえええええ!!!!」
おまけ2 〜キャンプ地に戻った後〜
「ね、イレブンちゃん♡チョコ美味しかった?」
「勿体無いから食べられないよ!!」
「え、そ、そうなのね」
「……そうか!カミュから奪えば良いのか!そしたら僕のチョコは二つになるから一個は保管出来る!!何でさっき気付かなかったんだ!!僕のバカバカバカバカ!!」
「(これは……気付かないパターンね……)」
「カミュ!!君のチョコ寄越せ!!」
「また何言ってんだテメーは!?」
「ちょっ……!イレブンちゃん!?」
「止めないでくれシルビア!!僕は本気だよ!!」
「予備に幾つかあるから……」
「え!?それは僕にだけだよね!?ね!?!?」
「そ、そうね……」
「カミュごめん今のナシ!!君も味わって食べなよ!!」
「……………………ハァ」
おまけ終