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    monoichion

    @monoichion

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    monoichion

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    ①最低→元最低な先輩の話
    ②で終わりの完結済。

    「五条先輩、俺と付き合ってクダサイ!」
    高校の先輩である五条に告白し、アッサリいいよと返事を貰い悠仁は舞い上がった。
    舞い上がったまま一週間もしないうちに美味しく頂かれ、デートもまだしてないのにな、でも俺先輩と付き合ってるんだな、嬉しいな、なんて更に上りに上り、降りる間も無くそのまま雲の上をふわふわ歩くように五条と過ごした。悠仁はふわふわ笑っていた。五条も笑っていた。
    しかし、雲には穴が開いていた。

    「え……?」
    付き合って2週間、来いよと呼ばれドキドキしながら向かったホテルには、同じ学校の先輩だろう女子が裸でベッドに2人いた。その片方を上に乗せた五条が「あれ早いじゃん」と言った。
    悠仁は目の前の光景が信じられなかった。頭をがつんと殴られたような衝撃だった。
    震えながら「何で?」と聞くと、五条はきょとんとして「何が?」と聞き返してきた。
    ーーああ、自分は大きな勘違いをしてしいたんだ。そう理解し、悠仁はそこから逃げ出した。
    悪い夢かなと家で何度も何度も考えたが、ホテルでの光景は確かな現実として脳にこびりついて離れてはくれなかった。悠仁は涙が止まらなかった。



    翌日、赤く腫らした目に驚いた友人たちをなんとかごまかし、悠仁は昼休みに五条を呼び出した。昨日のことを聞くと、
    「1人だけとか、そういうルールあったっけ?」と五条は答えた。
     悠仁は絶望した。やはり昨日の光景は現実だったのだ。
     泣きそうになるのを必死に堪え、悠仁は絞り出すように「別れる」と呟いた。すると五条はまたホテルで会った時のようにきょとんとし「何で?」と聞いてきた。言い返す言葉も思い付かず、もう一度別れるから、と力なく言い悠仁はとぼとぼと教室へ帰った。五条は追っては来るどころか、声すらかけてこなかった。


     その後、悠仁のあまりの落ち込みように驚いた伏黒と釘崎は悠仁をファミリーレストランへ連行した。
    「あの、何でもないから」
    「あるだろ」
    「吐け」
    「ハ、ハイ」
    二人の圧に早々に屈した悠仁は全てを話した。話しているうちにじわじわと涙を溜め、号泣した。まばらにいた客たちが何事かと注目する中、暇だったのか悠仁の話を聞いていた猪野というバイト店員が元気出せよとパンケーキをサービスしてくれた。
    「五条、クソね」
    「ああ」
    3人でパンケーキを食べながら、どうやり返すか作戦会議が始まった。いいんだもう、と言う悠仁の話は全く聞かずに殴る蹴る、犬、トンカチなど危険な単語が飛び交った。悠仁はそんな二人をオロオロと宥めていたら、いつの間にか少し元気になっていた。




    これまで数え切れない数の告白を受けてきた五条は、小学生の時こそ、この子真剣なんだなと考えもしたけれど、毎日のように次々と新しい「真剣」の圧に晒されて、それに真剣で返すのに疲れてしまった。
    しかも自分の容姿だけに惹かれて寄ってくる人間もいると分かってきて、恋愛を薄っぺらいものに感じ、真剣とか馬鹿馬鹿しいと思うようになっていった。

    真面目に付き合うのをやめてしまうと、一人一人への興味は薄れ、付き合う期間も狭くなり、付き合って別れてという工程すら面倒になり、でも発散はしたいから、じゃあもう何人とでも付き合っとけば楽でいいか、という現在の最低スタイルが完成した。
    それを知らず告白してきて後で泣いて怒る女の子もいたがあっそう、とそれで終了。分かっていて付き合っている子も、途中で五条が必ず飽きて捨ててしまうので、今まで誰かと長く続いたことは一度もなかった。
    振る、捨てるで誰かを傷付けてしまう恐れや罪悪感のような感覚は、彼の中でほぼ麻痺して無くなっていた。


    悠仁は五条のゲーセン仲間であり、お互い暇な時に遊んでいただけなので五条のそんな事情を悠仁は知らなかった。五条に振られた子がいる、なんて噂は聞こえてくるけどモテる人間に振られるのは特におかしな話ではないし、そしてたまたま誰かと別れたと聞いた悠仁は「じゃあ今はフリーなんだ」と勘違いして告白してしまった。


    ‪(結構可愛かったのにな)‬と五条は思っていた。今まで男に告白されてもスルーしていたのにちょっと興味が沸いて「いいよ」と言ってしまった。
    想像以上に悠仁は可愛かったし、気も体も合っていたからしばらく遊べるなと思っていたのに‬ホテルでの現場を見られ別れると言われてしまい残念に思っていた。男なんだし、他に女がいるくらいいいだろと思ったが、悠仁はそうではない部類だったらしい。

    つまんねえな、悠仁とゲーセンでも行くかと思い、いやだから悠仁はもう無理かと思い、またつまんねえなと五条は思った。遊び相手の女の子はいても、ゲーセン仲間は悠仁しかいなかったので、それも残念に思った。
    ‪さすがの五条にも、謝れば友人に元通り、という発想はなかった。

    🏫

    「虎杖が夏油と付き合い始めた」と聞いて五条は耳を疑った。悠仁が五条に別れると言ってきた翌日の話だった。
    夏油って誰だ、とクラスメイトの家入に聞けば「品行方正でみんなに優しい秀才」という五条とは真逆のタイプで、悠仁とはどこで出会ったのか、勉強を教える間柄だったらしい。
    悠仁からそんな奴の話は聞いたことがないと首を傾げる五条に「そりゃ、自分に言い寄る男の話を好きな男にしないよね」と家入は笑った。夏油は悠仁に何度も振られているらしい。
    ではなんだ、五条に振られたからすぐ夏油に乗り換えたのか、夏油がチャンスとばかりに上手いことやったのか。
    「どちらにしろ良かったよね」と家入は言った。どう言う意味で言ったのだろうか。

    五条は他人に執着しない。今まで付き合った彼女たちが他の誰と付き合おうが関係ないし、むしろ顔も名前も忘れている。だからやり直したいと言われても誰だっけと返していた。
    しかし悠仁は五条と友人としての付き合いがあったので、少々事情が異なった。五条は少し、ほんの少しだけ悠仁のことが気になった。

    🖼

    それから夏油と悠仁のセットを五条はよく目撃するようになった。二人はよくベタベタとひっついていて、夏油が上背もあり目立つタイプなせいもあるのかそんな姿を週ニ、三度は必ず見た。わざとかと疑うレベルだった。
    釘崎や伏黒と一緒にいることもあり、その時は伏黒には冷たく睨まれ、釘崎には勝ち誇ったような顔で中指を立てられて、そのたび五条は頬をひきつらせた。夏油も、にこにことして五条を見ることがあった。それも、というよりそれが一番五条の気に障った。
    悠仁はこちらを見ようともしなくて、五条はまる一か月は悠仁の顔を見ていない。

    🏫

    二ヶ月が経っても、まだ悠仁と夏油の仲は続いていた。男同士でよくもつな、と誰とも二週間ともたない自分を棚に上げて五条は今週三度目、またしても遭遇した夏油を睨み付けた。夏油はにこにことして、腕の中にいる悠仁の頭を撫でていた。
    二ヶ月も経てば夏油の挑発に慣れても良さそうなのに、五条はその逆だった。夏油が悠仁に触れるたびに激しい苛立ちに襲われた。どうしてなのかは分からなかった。


    🌇


    その日の帰り、最近付き合い始めた女の子の誘いに乗ったが気は晴れず、ホテルを出た五条は久々にゲームセンターに向かった。
    いつも悠仁と通っていた店舗につくと、入口の自動ドア越しに、悠仁がひとりでいるのが見えた。クレーンゲームの前にいるようだが、遊んでいるようには見えない。
    五条はどこか違和感を覚えた。彼が一人だからか、遊ばずにただ突っ立っているからか。五条はなんだか不安になった。
    自動ドアをくぐり、大股で悠仁に近付いて悠仁、と呼ぼうとして、その横顔を見てゾッとした。
    暗かった。
    五条の存在に気が付いて顔を曇らせるならまだしも、彼はまだ五条に気が付いていない。店内のきつい照明に晒されているにもかかわらず、久々に見た悠仁は以前とは別人のように暗かった。
    「悠仁」と呼ぶと、彼ははっとして五条を見た。そしてすぐ、悲しそうに顔を歪めた。五条は話しかけたことを後悔した。顔を曇らせるどころか泣かせてしまった。
    泣き腫らした目で悠仁に別れると言われた時は他の彼女たち同様なんとも思わなかったのに、どういうわけか今の五条は悠仁が泣くのが恐ろしかった。
    「………」
    残念なことに、今までなんとも思わなかった五条は、泣いた相手への対処法を知らなかった。冷や汗を流しあ、とかう、とか何か言いかけてはやめてしまう。何を言えばいいのか分からない。
    その間についに悠仁は震えて涙をこぼし始めてしまった。それを見て五条は胃のあたりに激痛を覚えた。慌てて「わ、悪かったな!声なんてかけて」と早口に言って、悠仁に背を向け逃げの姿勢に入った。一刻も早くここから立ち去りたかった。
    すると、背後で本格的に悠仁が泣き出した。五条は振り返り「おいおいおいマジかよ」と悠仁の肩を掴むがそれがさらに悠仁の涙腺を何本か切ったようだった。

    店内は大音量でBGMが流れているが、さすがに大声で泣けば周囲の客には聞こえるようで、何人かがチラチラとこちらを見ている。このままだと店員か警察を呼ばれてしまうかもしれない。悠仁はまだ泣いている。泣き声に、泣き顔に胃が痛む。とにかく痛む。五条は自分の髪をガシガシとかき回して「ああもう、行くぞ」と悠仁の手を取って店から出た。



    泣きやまない悠仁を引きずるように、胃と頭を痛めながら五条は繁華街を抜けた。異様な様子の二人組にあちこちから好奇の視線が刺さる。「イジメか?」と誰かの声が聞こえたが、断じて違うと五条は心の中で叫んだ。だが泣かせたのは五条なので、あながち間違ってもいないかとも思った。 続→
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