Dust To Dust『もしもし、村雨先生の携帯番号で間違い無いでしょうか。……はい、園田です。実は、獅子神さんの事で緊急のご連絡が……』
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しとしとと雨が降る暗闇の中、高級住宅街の一角を車が疾走していた。時刻は既に深夜に差し掛かっている。
恨みがましい同僚達の視線を振り切って退勤しハンドルを握った村雨は、ガレージに愛車を止めて運転席から乱雑な動作で降り立った。
不機嫌に細めた目で見つめる先はこのガレージの所有者である獅子神の家。窓二つから光が漏れている。
今日も今日とて日勤からの残業に入っていた村雨の元に来た一本の電話。
ギャンブラー仲間であり、恋人でもある獅子神が雇用する従業員からのそれは、村雨を絶句させるに相応しい内容だった。
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