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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    異世界パロアンぐだ♀、童話作家(神)と生贄ぐだちの生活

    2021.10

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##異世界パロ

    神のまします社にて ――農作物が不作の年、雨乞いの儀式も豊作の儀式も効果が出ない年。
     そんな時、周囲の村の中から若い娘が神様の生贄に捧げられる。生贄が神様に気に入られれば来年は豊かな暮らしが約束されるのだ。
     辺境の村にはよくある習慣。今回はついにこの村から生贄を出すことになったらしい。
     この村の子どもはわたしと、もう一人しかいないのだ。今回白羽の矢が立ったのは友達の方だった。……けれどわたしは大事な友達が神様のところに連れて行かれるのが嫌で、生贄に志願した。
    「私の代わりに行くだなんて先輩、そんな……!」
    「大丈夫だよ、きっと神様を説得して帰ってくるからね。豊作になるようにちゃんとお願いもするし」
     彼女を安心させるのが半分、残りの半分は何とかやらなければ、という気持ちだった。
     この村から生贄になった人はまだ見たことがないから、神様に捧げられた後にどうなるのか分からない。周囲の村でも、生贄が戻ってきたなんて話は聞かない。……でも亡骸が見つかったなんて話も聞いたことがないのだ。
     こうしてわたしは、生まれて初めての化粧を施され、肌襦袢姿のまま山奥へと運ばれた。
     神様への捧げ物を入れる箱に横たわりながら揺られて考えることは神様の説得方法だとか、そもそも会話ができるのだろうかという疑問ばかりだった。

     揺れがおさまり、どうやら目的地に着いたらしい。生贄に情が移ってしまうのを防ぐためだとかで、目的地に着いたら話しかけずに帰るのが習わしだ。
     黙って箱の中で神様が迎えにくるのを待てと言われていたけれど、好奇心が勝った。
     暗い箱の中じゃ何も見えない。ちょっとくらい辺りの様子を見たってバチは当たらないはずだ。
     内側から少し力を入れれば簡単に箱が空き、月明かりが差し込む。箱の蓋を開けて見る、外の景色。
     朽ちかけの鳥居がすぐそこにある。あの向こうは神様の住む世界だ。そうは言っても暗くてよく分からないし、ただただ草木が生い茂っているだけに見える。
    「よく見えないな……こんなところに本当に神様なんて住んでるの?」
    「こんなところで悪かったな。それにしても何度も生贄など無意味だと言っているのにお前達の集落は考える頭がないのか? 毎度のことながらしつこいぞ」
     ついさっきまで、誰かがいる気配なんてこれっぽっちもなかったのに。
     ひとまず良かったと思えるのは、神様は言葉が通じるらしいこと。
     悪かったと思うのは……おそらくその神様の機嫌を損ねてしまったらしいことだった。


    「神様、ですか?」
    「不躾な小娘……いや、一応生贄だな。俺がお前と同じに見えるか?」
     月明かりを頼りに彼の様子を見る。顔はハッキリ見えないけれど背丈はそんなに高くない、むしろ私より歳下に見えるほどだ。その割に声は恐ろしいほど低い。
     子どもがこんな時間に一人で山奥になんてくるはずがない。それに月の灯りを反射するように青い眼が光って、この世のものとは思えない。
    「失礼いたしました。お許しください」
     気に入られなければ村に良くしてもらえない。それどころか自分の命すら危うい。
    「別に今更、人間に期待などしていない。それで、要件は何だ? 生贄の娘。まぁ分かりきったことだが一応聞いておく」
    「あの……村を救っていただきたくて、」
    「相も変わらず生贄というやつはそればかりだな。いいか、俺は豊穣の神でも何でもない!」
    「そ、そんなこと言われても……!」
     話が違う。神様に捧げられる代わりに豊かな暮らしを与えてくれるんじゃないのか。
    「若い娘をくれてやるから暮らしを豊かにしろ? 必要ない、俺は童貞だぞ。犠牲になりにくる女の顔など無用だ」
     ついにはとんでもないことを言い出す。
    「困ります! 村を救ってもらって私も帰るつもりなのに」
    「……生贄にしては生き汚いやつだ。神に献上されて帰るつもりでいるとはな」
    「あ…………」
     あまりの事態につい、口が滑った。
    「生贄、というのが何だかわかっていないのか? 神に献上されるとはつまるところ、人ならざる者の『花嫁』になるということだ」
    「は、花嫁……!? 私はてっきりその……食べられて死んじゃうのかと」
     生贄について詳しい説明はなかったのだ。まさか花嫁、だなんて。
    「食べられて死ぬ? 高度で下品な比喩表現か? ……ともかくだ。俺は人肉に興味はない」
     呆れた様子の彼を見るに、どうやらさっきの質問で機嫌を損ねたわけではないらしい、と察知する。多分この神様はそういう性格なのだ。
    「あ、あのでも、助けてもらえないと困ります!」
     まさか食べられて死ぬのではなく、花嫁候補だなんて。
    「――それじゃあ必要なら、私を、お嫁さんにしてください!」
    「おい待て、どうしてそんな話になる!」
    「その代わり、どうか村を助けてください!」
    「やれやれ、話を聞かないやつだな。……いつものように追い返すつもりでいたが、交渉に来たのであればそうもいかない。面倒だが立ち話も疲れる、上がっていけ」
     そう言うと返事も聞かずに歩き出す。
    「あっ、待ってください……!」
    「それから」
    「わっ……!」
     歩き出したかと思えば急に彼が歩みを止めるものだから、勢い余って彼にぶつかる。
    「俺の住処に入るのに、そんな変質者の格好をされては困る」
    「わ、わ……ちょっと!」
     布の擦れる音がして、彼が私に何かをなげつけた。月にかざせばそれはとても大きな紺色の半纏で、まるで大人の男性が着る物のようだった。
    「どうした、さっさと袖を通せ露出狂」
    「露出狂!?」
     神様にしたって、さっきからとても失礼だ……!
    「俺としては生贄は襦袢姿だ、など律儀に守らず真っ当な格好で訪ねてほしいものだが。あられもない格好の娘を娶る気などないぞ」
     そう言うと彼はこちらの様子も見ずにさっさと鳥居を潜っていく。――鳥居の中に入り込んだ瞬間、神様の姿がふっと消える。
    (ホントに、別の世界なんだ)
     無事に戻れるか分からない。
     けれど話を聞いてくれる気はあるみたいだ。それに、上着を貸してくれるくらいの優しさはある。私は大きな半纏を羽織りながら、少しだけこの事態に希望を見出している。

     こうしてチャンスを掴むため、私はその向こうへ足を一歩踏み出したのだった。
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