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    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

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    POIPOI 162

    現パロアンぐだ♀

    2021.3

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##現パロ
    ##夫婦
    ##モブ視点

    お弁当とお姉さん 昼休みの購買競争に負けて、大して美味くもないコッペパンにかじりつく。やる気も出ない、今日はこのまま帰ろうか……そう思いながら歩いていると来客用のカードを首からぶら下げた、綺麗なお姉さんが目に入った。

    (うわ、レベル高っ!)
     クラスで一番人気の女子を思い浮かべて、それでもそう思う。年上の方が好みだ。大学生くらいだろうか?
     明らかに道に迷っていますというようにキョロキョロしては案内板を確認しているのを見て、お近づきになるチャンスだと確信したのだ。

     近寄って話しかけるくらい簡単だ。
     何なら道案内のついでに連絡先なんか聞いちゃったりして?
     お姉さんの視界に入るように近づいていく。

     お姉さんが俺の足音に気がついてこちらを向く。よし、ここで優しく話しかければ好感度も高いはずだ! ……そう思っていたけれど、先に話しかけられたのは俺の方だった。

     俺を見つけた途端にふわりと笑って近寄ってくる。
    「すいません、職員室を探しているんですけど、場所を教えてもらえませんか?」
     それから、道に迷っちゃって、と言った彼女は黙っている時よりも幼く見えた。コミュ力が高いお姉さんだ。この警戒心のなさそうな感じは連絡先くらい余裕かも?
    「いいよ、案内してあげる!」
    「ありがとうございます」
     彼女の方が年上っぽいのに敬語を使ってるのは何だかおかしかった。
    「お姉さん、俺より年上でしょ? もっと楽に話せばいいのに」
    「うーん、それはそうなんだけど……」
     案内しながら雑談を開始した直後だった。

    「立香!」
     廊下の向こうからとんでもない大声が響いてくる。ずかずかと距離を詰めてくるのはこの学園の教師だ。
     悪いことなんてしてないはずのに、あんな人相悪い顔で近づいてくるからつい身構える。こちらを睨んでいるように見えるけど、違うよな? この間のテストはギリギリ赤点回避したし、目をつけられるようなことはないはず。……今だってほら、まだ、ただの道案内だし。フジュンイセイコーユーなんかでもない。

    「アンデルセン!」
    「えっ……?」
     お姉さんは突然目を輝かせて嬉しそうだ。さっきまでだってそりゃ、レベルが高いなとは思ったけど……さっきまでとは表情が全然違う。
    「お前はまたそうやって! どうせ道に迷ったんだろうが。来なくていいと言っただろう!」
    「もう、アンデルセンがお弁当忘れなきゃ来なかったよ!」

     えっ、お弁当? えっ……?

    「それは、そうだろうが……いや、だが、」
    「今日の卵焼きは美味しくできたよって説明したよね? なのに忘れていっちゃうんだもん……それに昨日のハンバーグも入ってるのに」
    「…………」
     完全に言い負かされている。この先生が誰かに言い合いで負けるのなんて、あり得ない。

     そもそも女の人にお弁当作ってもらってるなんて、そんなの絶対嘘だろ⁉︎ クラスの中には彼女がお弁当を作ってくれるなんて奴もいるけど、そんなのごく一部だ。そんなモテるやつみたいなのをよりによってこの先生が? ありえない、しかもこんな美人にとか!

    「俺が悪かった」
     あ、この先生でも謝ったりするんだ。
    「仕方ないなぁ。もう忘れていかないでね」
     お弁当らしき包みを差し出すお姉さんと、それを受け取る先生。急に仲良さげな二人の世界を作るのはやめてほしい。

    「……ああ、そういえば。そいつに世話になったんだろう、挨拶と礼の一つくらい言ったらどうだ?」
     いきなりこちらに向く先生は、どう考えても怒っている。『礼を言え』なんて態度じゃないだろそれ!
     だけどお姉さんは先生の態度なんか気にしてないみたいで、こちらに向き直ってくる。

    「道案内、ありがとうございました! それから、ええと……」
     少しだけためらうように言葉を止めると、お姉さんは先生の方をちらっと見上げた。それに応えるような変わった先生の表情があまりにいつもとかけ離れているものだから正直言って俺はゾワッとした。何でこんなのを見せつけられなきゃならないんだ!

    「あのっ! ……しゅ、主人がいつもお世話になってます!」
    「…………シュジン?」
     ぺこりと頭を下げた後、お姉さんは照れくさそうにこの挨拶緊張するな〜とか言って。何、シュジン、って、その挨拶、まるで。
    「俺からも一言言っておこう。『家内』が世話になったな」
     世話になった、とか言う態度じゃないし、それ。

    「ところで、どうして指輪をしてこなかったんだ」
    「洗い物した時に外して、そのまま来ちゃったの」
    「こんな機会はもうないだろうが、万が一ここに来るなら指輪は絶対身につけてこい。邪魔な虫に無駄骨を折らせたくないならな」
     俺を睨む先生はまるで鬼の顔。手を出したわけでもないし、ちょっとお近づきに、なんて思っただけだって!
    「失礼でしょ、わざわざ道案内してくれてたのに」
    「『わざわざ』道案内を買って出るようなやつだからだ。生徒とは必要以上に関わるな、馴れ馴れしくするなと前にも言っただろう? あぁ、それからお前、もう予鈴が鳴るぞ。さっさと教室に戻れ」

     それきり、俺にはもう用済みだと言わんばかりに去っていく先生と、こちらにおじぎしてからパタパタとついていくお姉さん。俺は見計ったように鳴り出す予鈴の中で立ち尽くす。
     休憩室でコーヒーの一杯くらい飲んでいけ、なんて甘やかすようにお姉さんに言っている普段とは比べ物にならない激甘な先生の様子を見て、教室に早足で戻る。

    「あーっ! 俺も彼女ほしいな!」
     こんなの誰かに話さないとやってられない! 

     この学園内で先生の美人な奥さんについての噂が広まったのは、それからすぐのことだった。
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