Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    たまごやき@推し活

    アンぐだ♀と童話作家アンデルセンのこと考える推し活アカウント

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 162

    カルデアアンぐだ♀

    2020.12

    ##FGO
    ##アンぐだ
    ##カルデア時空

    ポートワインにはまだ早い このカルデアには酒飲みのための簡易的なバーが備えられている。酒に強い集団に捕まったのなら健康体で明日の朝日を拝むことは叶わないだろう。ーーだからと言って。

    「今日はお酒飲むの、付き合ってほしいな!」
    大した酒豪でもない俺を晩酌に付き合わせるのは一体何のつもりなのか。


    「アンデルセンてば、思ったより渋るんだもん。あと十分粘ってダメだったら令呪使うとこだったよ」
    「強情なやつだな。俺と飲んで何か有意義なものを得られるとでも思っているのか?」
    「だってあんまり強い人に頼むと参考にならないでしょ。アンデルセンならお酒の種類に詳しくて、色々教えてくれそうだし!」

    マスターはこの間自国で酒を飲める年齢になったばかり。
    とはいえレイシフトなど日々忙しく、バーなんてもの入り浸る時間もない。明日が久々の休みとあって、日頃から興味を持っていたバースペースを見学しようと言うのだ。保護者付き付きで。

    「まったく、溺れるように喉を通すような液体を、何が悲しくて解説するんだか」
    「そこをなんとか! 明日はレイシフトもないし!」
    そういいながらもバースペースに並んで腰掛けている時点で、彼女の提案に折れたも同然だった。

    「はじめに警告しておく。自分の限界もわからずに外で飲むな。分かったか?」
    「や、よく酔っ払ってるアンデルセン に言われても説得力ないというか……」
    「黙れ。俺ではなくお前の今後の話をしている。それから、そうだな。ーー男の前でシェリー酒は頼むな」
    「シェリー酒?」
    「……例えば今後お前がこのカルデアの男達にバーで一杯どうかと聞かれる。断っても『前にあの作家と飲んでいるのを見たのに俺とは飲めないとは何事か!』などと言ってくる」
    「え、妙に具体的な……」
    「一杯だけなら付き合うと言ってやれ。その場でお前が飲んで良い酒はこれだけだ。ブルームーンを、一杯」
    彼女の前にカクテルグラスをひとつ。青一色に、飾りは真っ赤なチェリー。
    「綺麗な色だね。アンデルセンの髪の色みたい!」
    「……酒の感想は本題ではない。これを一杯飲んで、『もう先約が入っているからこれ以上はごめんなさい』とはっきり告げてすぐバーから離れろ。分かったな?」
    「え、それは分かったけど……どうして?」
    「そうだな。これを一杯飲みきって、それでもまともな思考を保っていたら教えてやる」
    「ちょっと!初心者なのに、強いお酒はやめてよね」
    彼女の前にグラスを差し出す。彼女の髪より淡いオレンジ色。
    「ーー口当たりはお前でも飲みやすいはずだがな。まずは1杯。話はそれからだ」

    あれから、三十分も経っただろうか。

    「ね〜あれやってよ、バーの横からシュってお酒が滑ってきてね、あちらのお客様からです……って!」
    「馬鹿め、それはバーテンの仕事だ。そもそもこんなもの程度で酔う小娘に贈ってやる酒など持ち合わせていない。お前にはこのオレンジジュースがお似合いだ」
    「もうっまた子供あつかい、するんだからぁ」
    「煩いぞ酔っ払い。酒が飲める年齢になったからと大人なんてものになれると思うな」
    「もう大人だもん、だって、きょうはあさまでかえらな、」
    話が途中でブツ切れになる。とうとう寝落ちしたらしい。

    一杯目からそれなりに様子のおかしかった彼女は、テンションに任せて次のおすすめを教えろとせがみ続けた。

    スクリュードライバー、カシスソーダ……アプリコットフィズ、ロブ・ロイ。

    渡されるがままに飲んでいた彼女は、もう飲んだ酒が何だったかすら記憶に残していないだろう。顔を真っ赤に染めている割にペースがはやいのなんの。始終美味しいと言っていた彼女は酒飲みの才能があるかもしれない。始終勝手に楽しそうにしていた。

    シェリー酒なんかの心配をする前に、飲むペースを抑えろと伝えるべきだったか。まぁ、限界もわからない彼女に散々飲ませた俺に落ち度があるのだが。

    「ふふ……あんでるせん……」
    「一体何の夢を見てるんだか」
    出演料でも請求してやろうか。

    シェリー酒も、自分の喉を通った酒の意味も、何も知らない小娘。伝わらないのならそれはただのアルコールで、それ以上の意味を持たない。

    「お前の国では男は狼だ、なんて習わないのか?」
    すぐ隣には目は閉じたまま、口は中途半端に開いたままの彼女。
    「間抜け面」
    そっと距離を取り直す。あまり近寄れば深みに落ちてしまいそうだ。もう、手遅れかもしれないが。

    自分ではとても彼女には勧められない甘口のワインを、彼女の隣で一人グラスに注ぐ。

    「このワインを男に勧められたらすぐ断れと、これも加えて教えておくべきだったか?」

    彼女を運べない自分では、目を覚ますまで隣で監視するくらいしかできない。
    ニ人分のグラスに甘いワインを少し注いで牽制しながら、朝までここで過ごしてやろう。
    今夜は、帰さない。

    時刻は午前三時。隣には勝手に帰れなくなった彼女。
    彼女が起きたなら昨日の醜態を、少しばかり誇張して語ってやるとしようか。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works